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34危険人物認定されている後輩

 翼君がおやつを出してくれたので、いったん話を中断して食べていたら、車坂が唐突に私に質問してきた。


「朔夜さんは、鬼崎という女性をどう思いますか?」


 先ほどの話と関係があるのだろうか。九尾たちの反応をうかがうと、彼らは難しい顔をしていた。私は私なりに感じた彼女の印象を話すことにした。


「私たちのような人間に興味を持っているみたいです。そして、私たちの存在にあこがれている。自分も能力者になりたいと思っている……」


 自分で話しながら、違和感を覚えた。能力を持った人間や神様などに興味は持っていて憧れているのは確かだ。しかし、自らが能力者になりたいと思っているのか。


「いや、自分も能力者になりたいとは必ずしも思っていない。非日常を味わいたいだけかもしれません」


 彼女と話していた夢を見た気がする。その時に彼女は何か重要なことを言っていた。そして、そして私は、大変な目に遭いそうになった。


「非日常ですか。それはある意味、正解かもしれませんね。あの部屋の狂気は入ってみないとわからないと思いますが、踏み込まない方がいい」


「無理だな。こやつはすでにその女の家に行く約束を取り付けている」


 九尾の言う通りである。私はすでに彼女の家にお邪魔することになっている。今更忠告されようと行くしかないのだ。


「そうですか。では、狂気にのまれないことを祈ります。では、おやつもいただきましたし、首輪も外してもらえたので、私はこれで失礼します」


 ぼんと音がして、車坂は黒猫に姿を変えた。黒猫姿の車坂は玄関まで歩きだしたので、私は慌てて後を追いかけ、玄関のドアを開けた。そのまま、車坂はどこかに行ってしまった。






「おはよう、蒼紗。GWの中の平日ってだるいわよねえ。でも、そのおかげで蒼紗に会えるんだから、平日もいいものだと思えるけど」


「おはようございます、私も同意見です。休みはうれしいですが」


「おはようございます。ジャスミンに綾崎さん」


 次の日も私は大学に来ていた。今年のGW中の平日は二日あり、私たちはどちらも授業が入っていた。


「それにしても、今日はずいぶん地味な格好になっているわね。頭から角みたいなのがはみ出ているけど、これは鬼をイメージしているっていることでいいのかしら?」


「鬼、ですかあ。ああ、それで服装が着物なのですね。和風な姿もお似合いですよ」


「ありがとうございます」


 なんとなく、鬼の恰好がしたくなった。ジャスミンと綾崎さんは私のように毎日コスプレしているわけではなかった。今日は二人ともコスプレをしていなかった。



 午前中の授業が終わり、その後食堂で昼食を食べ、私たちは解散した。せっかく大学に来ているのだ。私は二人と解散した後、鬼崎さんに会いに行くことにした。


「美瑠だったら、部室にいると思います。友達がなかなかできないみたいで、暇な時間は部室にいることが多いから、今日もきっと部室にいるはずですよ」


 綾崎さんに鬼崎さんの居場所を聞いたので、彼女がいるという、部室に向かう。ジャスミンもついていくと言って後を追ってきたが、丁重にお断りした。


「大丈夫です。少し、彼女について気になることを聞きまして、その真偽を確かめるために話をしに行くだけですから」


「ただ話を聞くというにしては、だいぶ緊張しているみたいよ。戦に行くって感じの表情だけど」


 私の表情が硬かったのを目ざとく気付いて指摘されたが、私は笑ってごまかすことにした。ジャスミンを連れていければ、心強いだろうが、ジャスミンを危険に晒すわけにはいかない。何せ、鬼崎さんは死人と会わせてあげると言って、犬史君をだましていたり、車坂を捕まえて自分の家に引き連れていったりするような危険人物だ。いくら、ジャスミンが能力者だからと言っても、油断できない。


「鬼崎さんは、相当な危険人物みたいね。だから、私に被害が及ばないように、一人で話をしに行くって言うことかしら。まったく」


 はあとため息をつくジャスミンに思わず反論してしまった。


「わ、私はジャスミンを信用していないとは言っていませんよ。もちろん、ジャスミンが一緒に来てくれるというのなら、とても心強いです。ですが、今回の相手は得たいが知れません。幸い、彼女は私に興味を持っているので、危害を加えられる心配は低いですが、ジャスミンは」


 ジャスミンに飽きられてしまうことを恐れて、口から本音がこぼれていく。ジャスミンには今まで、ずいぶんと迷惑をかけてしまっている。これ以上は、いくら同じ能力者だからと言って、付き合いきれないと離れてしまうかもしれない。


「ハハハハハ。蒼紗って、だいぶ人間らしくなってきたわね。私のことを案じてのことだったのね。いやあ、いいものを聞いたわ」


 ジャスミンは私の言葉を聞くと、目を大きく開いたかと思うと、大声で笑いだした。私の言葉のどこに笑う要素があったのだろうか。いたって真面目にジャスミンのことを案じての言葉だったはずだ。


「そうねえ。蒼紗にこれ以上わがまま言ったら、私の方が蒼紗に嫌われてしまうわね。わかった。蒼紗の心の内が聞けたから、今回は蒼紗の言うことに従うことにするわ。ただし、本当に危険になった場合は、私でもあいつらでもいいから、誰か助けを呼ぶこと。それは約束しなさい!」


 ジャスミンはどこか嬉しそうにしながら、私に忠告して、あっさりと私と反対方向に去っていく。





「お前も人のことだったということだろう」


「七尾!」


 七尾がいつの間にか私の前に立っていた。いつから私たちの会話を聞いていたのだろうか。


「別に話を聞いていたが、誰かに告げ口などしないよ。それで、あのクソガキのせいで、ぼくたちはあんな恥ずかしいことになったのかな?」


「あのクソガキとは、まあ、そこも含めて、いまから話を聞きに行くところです」


「気をつけろよ。あんな酒が普通のガキが手に入れられるわけがない。あいつの後ろに本当に黒幕がいる。黒幕まで突き止めてくれれば、僕が対処する」


「黒幕って、鬼崎さんは黒幕に操られているかもしれないってことですか?」


「さあ、それはわからないが」


 そう言って、謎の言葉を残した七尾は、素早く走り去ってしまった。


「おや、最近、よく会いますね」


「ええ、駒沢先生」


 そこにいたのは、私が苦手とする駒沢教授だった。


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