23SNSに投稿された写真
「こ、これは」
ジャスミンが見ていたのは、私もよく利用しているSNSだった。画面には、見覚えのある居酒屋に、ケモミミ美少年たちが映し出された写真が投稿されていた。
「どう見ても、昨日の居酒屋で撮られた写真でしょ。顔がばっちりとられているみたいだけど、投稿者は、プライバシーとか考えていないみたいね」
九尾や七尾、翼君や狼貴君のケモミミ姿の写真がSNSに投稿されていた。しかも、顔をぼやかしたり、モザイクを入れたりもしていない。たまたま、彼らが人間ではない存在だったからいいものの、もし、これが普通の人間だったりしたら、炎上ものだ。いや、すでにネット上では、この写真が本物か合成かの議論で盛り上がっている。
「これ、本物に見えるけど本当?」
「いやいや、合成に決まってるでしょ。そもそも、新歓コンパに参加するケモミミ美少年って(笑)」
「合成アプリも今時進んでるねえ。本物にしか見えない」
写真はリツイートされて、コメントには本物の写真という人もいれば、合成だと決めつける者もいた。
「彼らの写真を撮っていた人たちはいましたけど、まさかその写真をSNSに投稿する人がいるとは思いませんでした。そもそも、彼らが写真に写るとは……」
「幸い、私の写真は投稿されていなかったからよかったけど」
ジャスミンが安堵の声を上げている。彼女の写真が投稿されていないのは良かったが、九尾たちの写真を勝手に投稿していいわけではない。神様やその眷属は写真に写るというのは驚きだが、今は驚いている場合ではない。
写真の投稿とともに、「昨日の新歓コンパ、最高に楽しかった!こんなサプライズをくれたサークルのメンバーに感謝!」とコメントが添えられていた。
たくさんの人に見てもらって注目されたいのか、投稿者はハッシュタグをいくつもつけていた。
♯新歓コンパ
♯人外
♯ケモミミ美少年
♯ドッキリだと思ったらマジ
♯本物の写真
♯合成ではない
「投稿者は……。Ghost LoVEhunter」
「なんか、日本語に訳すと微妙な感じね。幽霊、愛の捕獲者。昨日の新歓コンパに参加した人にそんな変な人はいたかしら?」
「変な人がいたかはわかりませんが、この写真を撮れるのは、昨日の新歓コンパに参加した人しかありえません。だとしたら、誰が投稿したのか、調べればすぐにわかるはずです」
「じゃあ、面倒だけど、綾崎さんに連絡してみる?本当はあんな女に協力を仰ぐのは嫌だけど」
投稿者の名前を見ても、誰が投稿したのかわからない。とはいえ、写真の投稿者はどう考えても、新歓コンパに参加した誰かになる。綾崎さんに連絡を取ればすぐにでも
投稿者は見つかりそうだ。
「綾崎さんが犯人ってことはあり得るでしょうか?」
「いや、彼女はないわよ。だって、彼女のSNSのアカウントを私は知っているけど、こんなふざけた名前ではないもの」
ふと頭に浮かんだことを口に出すと、即座にジャスミンに否定された。いつの間にジャスミンは綾崎さんのSNSアカウントを教えてもらったのだろうか。口では嫌いと言いながら、案外気が合うのかもしれない。
「何を騒いでいるのだ?」
私たちが騒いでいるのを見て、気になった九尾が声をかけてきた。彼は写真に写っている当人であるので、スマホの画面を見せることにした。
「ふむ、昨日の我らの痴態がばっちり映っているな」
「どうしたんですか?」
「写真がどうした?」
九尾の言葉に興味を惹かれた翼君と狼貴君もスマホを覗き込んできた。見やすいように、ジャスミンのスマホを二人にも見えるように渡した。
「な、なんですか、これは。まずいですよ!いくら僕がケモミミを生やした少年姿だからといって、生前の僕に似ているなとか思われちゃいますよ。狼貴もやばいと思うよね。九尾、僕たちが写真に写るなら、写ると言ってください!」
「別に写真を撮られたところで問題はなかろう?それに、われらはその日、人間の格好で人間たちに見えるような格好でいたのだ。写真に写るのは当たり前だ」
「写真に写ってしまったんだから、そこを嘆いても仕方ない。それで、投稿したこいつの正体はわかっているのか?」
三人にSNSの写真を見せたが、反応は二つに分かれた。神様である九尾に慌てた様子は見られなかった。それに対して、翼君や狼貴君は自分の写真がSNSで拡散されてしまったことに不安そうにしていた。
「とりあえず、このアカウントの奴をとっちめればいいんでしょ」
ジャスミンは、彼らからスマホを回収して、綾崎さんに写真を投稿した相手の特定をお願いする旨を伝えるために、メッセージを送っていた。私は、SNSに投稿されている彼らの写真を自分のスマホでも確認することにした。写真とコメント、アカウントの名前を見ながら、投稿しそうな人物を考える。
「いったい、誰がこんなことをしたのでしょうか」
一人の女性の名前が頭に浮かんだが、彼女はSNSに許可も得ず他人の写真を投稿するような人物ではないなと思い、それ以上考えるのはやめた。
新歓コンパは金曜日に行われたため、今日は休日で大学は休みである。ジャスミンは土曜日の昼頃まで、私の家でゴロゴロしていた。
「なんかもう、蒼紗の子供にでもなった気分だわ」
「それはお断りします」
「即答しなくてもいいじゃない。まあ、実際は、私は蒼紗の孫の孫?いやそのまた孫?蒼紗の本当の年は知らないけど、蒼紗からしたら私って、可愛い子供に間違いはないでしょ」
私が即座にジャスミンの言葉を拒絶するが、ジャスミンに堪えた様子はなかった。
「こんな大きな子供はお断りです」
「ひどいわね」
そんなくだらないことを話しているうちに、ジャスミンはそろそろ帰ると言って、昼食を食べると家に帰っていった。
「月曜日にまた会うのに、寂しいって顔してるわよ」
「そんなことはありません!」
「寂しいって思われた方がいいんだけどね」
ジャスミンが去り際に放った言葉につっけんどんに返すと、ふふと笑われてしまった。




