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22面倒事が私の周りに集まっています

「いただきます」


 こんなに大勢で朝食をとったのは初めてかもしれない。私の家での話だが。私と九尾たち四人で食べることはあっても、それにジャスミンや車坂、七尾まで加わるとにぎやかになる。


「この人数だと、すぐに冷蔵庫の中が空になりますね」


「管理も意外と大変だ」


 翼君と狼貴君の主婦みたいな発言にくすりと笑ってしまう。


「それって、この食事が蒼紗のお金で、それをあんたたち居候が食いつぶしているということかしら?ていうか、あんたたちって食事が必要ないでしょ」


「必要ないが、おいしいものは食べる。人間と同じ暮らしをしてみるのもいい機会だからな」


「一理ありますね。私も、半年以上人間界に滞在していますが、食べ物に関しては、おいしいと言わざるを得ないですね」


 黒猫はいつの間にか大人の男性に姿を変えていた。黒スーツ姿の車坂である。


 今日の朝食メニューは、特に凝ったものではない。トーストにイチゴジャム、目玉焼きにソーセージ、サラダの簡素なメニューだ。それに、ホットミルクがついている。



「ごちそうさまでした」


 朝食を完食した私たちは、やっと落ち着いた。食器を片付け、一息ついたところで、ジャスミンが九尾に質問する。


「ねえ、あんたに一つ、昨日のことで質問いいかしら?」


「構わん。昨日の件だろう?われもそのことで話したいことがある」


 九尾はジャスミンの質問を許可した。昨日の件については、私も質問したいことがある。黙ってジャスミンの質問を聞くことにした。


「昨日の話だけど、私たちが酔っぱらったようになったのは、本当に薬の影響かしら?」


 九尾に促されてジャスミンが話し出す。昨日の新歓コンパでの彼らの痴態を思い出す。人外である彼らは酒に酔ったような状態になり、本性をさらけ出してしまった。それが、飲み物に入れられていた何らかの薬の効果だと九尾は言っていたが、私も疑問に思っていた。


「ふむ、そのことだが、本来ならそんな薬、簡単に手に入るものではない」


「僕たちみたいな存在に効果がある薬が出回っていたら、世の中、大変なことになるでしょう?」


 九尾の回答ともいえない言葉に、七尾が補足する。しかし、実際にその薬とやらが九尾たちが飲んだ飲み物に仕込まれていたのだ。どういうことなのか、ジャスミンがいら立ちを隠せず、問い詰める。


「だから何だというの?私が聞きたいのは」




「すいません。その話は、私の話の後に、あなた方だけでしてもらえないでしょうか?」


 ジャスミンの言葉を遮り、ここまで静かに話を聞いていた車坂が手を挙げて発言を求めた。


「なんだ、犯人に心当たりがあるのか?」


「そんな希少な薬は、調べればすぐに出どころがつかめそうですが、あいにく私はあなたがたと違って暇ではないのですよ。用事があってこの場にいるのです」


 車坂が勝手に自分の用件を話し始めた。


 彼の話は長かった。塾の講師をして半年以上も経つのに、用件をまとめて話すことがいまだに苦手らしい。要約すると、この町にまた異変が起きているという話だった。


「……ということで、現在、魂が抜けた遺体が大量に出現しているそうです。しかも、魂が抜けている大半は能力者らしいのです。一応、あなた方に忠告をしておこうと思いまして。それから、もし犯人の手がかりを見つけたら、連絡をお願いします」


 話を終えた車坂は、この後、死神同士での会議があるらしく、朝食のお礼をして、家から出ていった。家の外に出ると、黒猫姿になり、塀の上をかけていった。



 一方的に話を始めて、そのまま話し終えたら去っていくという、人間社会だと常識知らずと言われそうな行動をした車坂。非常識と怒る者はその場にいなかった。そもそも、その場に、私以外に常識人は存在しなかった。


「能力者のみが魂を抜かれる、か。これは気を付けた方がよさそうだな」


「嫌な事件が起こっているわねえ。それって、ニュースで話題になっている遺体のことでしょう?あいつの話だと、私や蒼紗が標的になりかねないということでしょ」


「それにわれたちも加わるかもな。見た目が人間の姿をしている異端者を探しているのかもしれん」


 一同は九尾の言葉に黙ってしまった。異端者を探している。昨日の新歓コンパの件で面倒なことが起きたと思っていたのに、それ以外にも問題が起きている。


「それにしても、蒼紗先輩の近くにいると、退屈しないね。でも、昨日の件は、僕をおちょくったこと、犯人には後悔させてやる!」


「七尾、落ち着け、お前ひとりで行動してはダメだ」


「ふん、オレはもう、お前の」


 興味深そうに私たちの話を聞いていた七尾だが、昨日の件は根に持っているらしい。ぷりぷりと怒りをあらわにしている姿は、ケモミミ少年姿と相まって、微笑ましい光景に見えた。内容は全然、微笑ましくないが。




「プルルルル」


 突然、携帯の着信音が部屋に響き渡る。誰のものかと思ったら、七尾のものだった。七尾はズボンのポケットからスマホを取り出し、電話に出る。


「もしもし、ああ、今は九尾の家に居る。わかってる。お前なんかに言われなくても、僕はお前の家に帰るよ。雨水のガキのくせに、僕に指図するな!」


 相手は雨水君のようだ。おそらく、自分の家に戻ってこない、厄介な同居人を心配して電話をしたのだろう。それなのに、一方的に通話を終わらせる七尾。


「雨水の小僧がついているなら、まだ一安心だな。七尾、お前は一度、雨水の元へ戻れ。そして、警戒するよう伝えろ。この町で何か嫌なものが動き出している」


「はいはい。わかりましたよ。僕はこれで帰ります」


 ケモミミと尻尾はなくなり、大学生姿に姿を変えて七尾は家から出ていった。




「まったく、面倒な奴が多いな」


「ああああああ」


「今度はなんだ」


 二人が去り、ようやく静けさを取り戻したかと思えば、次はジャスミンが突然叫びだした。暇を持て余したようで、スマホをいじっていたようだが、そこで何か見つけたようだ。あきれたような口調の九尾だが、私も同じ気持ちだった。


「あ、蒼紗、こ、これは、まずい。みて、これ、やば」


 言葉がとぎれとぎれになり、顔が青ざめていくジャスミン。スマホを覗き込むと、衝撃の画像がスマホに映し出されていた。


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