エピローグ
よく晴れた日曜日、エリカとサトルは互いのイヌを連れてドッグランに来ていた。
「行くわよー、それっ!」
「キャン、キャン!」
エリカが投げたフリスビーを追いかけて、キャニスは走った。
「ナイスキャッチ! じゃあ次はハチツー、行くわよ! それ!」
「バウッ、ワウッ!」
ハチツーはフリスビーを追いかけてまっすぐに走った。
「エリカちゃん、今日もかわいいなぁ」
サトルは芝生の上で仰向けになり、両手を枕にして後頭部に当てていた。そのサトルに向かってフリスビーは徐々に近づいて来た。
「……!! え、円盤!?」
自分めがけて飛んで来たフリスビーは、サトルにとってはあたかも自分を連れ去りに来た未確認飛行物体のように見えた。
「ワウ! ウォフ!」
ハチツーはフリスビーを追って走り、そのままサトルの上に落ちたフリスビーに飛び込んだ。
「わっ、こら! ハチツー! 降りろ、降りろって!」
サトルの上に飛び乗ったハチツーは、フリスビーのことを忘れてサトルの顔をペロペロと舐めだした。
「重い、重いったら! ハチツーどうしたんだよ!?」
ハチツーは幸せを噛み締めていた。サトルと一緒に居られる時間が、ハチツーにとってこの上ない宝物となっていた。
「あは、ハチツーったら、サトル君にゾッコンね」
駆け寄って来たエリカはサトルとハチツーの様子を見て羨ましそうに微笑んだ。
「ハ、ハチツー離れろ、笑われてるぞ」
サトルは上体を起こし、両手でハチツーを制した。ハチツーは尻尾を振りながらサトルの匂いをクンクンと嗅いでいる。
「エリカちゃん、こっちにフリスビー飛ばすんだもん。また俺を誘拐しにUFOが飛んで来たのかと思っちゃったよ」
「もう、サトル君ったら、嘘ばっかり! UFOも未来人も居る訳ないでしょ。今度その嘘ついたら怒るわよ?」
エリカは頬を膨らませ、腕を組んで横目で睨んでくる。
「わ、分かったよ。エリカちゃんの前ではこの話はもうしないよ」
サトルはドギマギしながらエリカを宥めた。エリカにはどうしても未来人との邂逅は信じて貰えそうになかった。
「ホント、しょうがないわね……ま、サトル君が無事だったから万事良しとするか!」
エリカは太陽に照らされた青空のようにカラカラと笑った。それからサトルの横に座ると真剣な眼差しでサトルを見つめた。
「……本当、心配してたんだから。馬鹿」
エリカの目は潤んでいる。サトルはそれを見て一気に胸の鼓動が高まった。
「……ありがと。心配かけさせてごめん」
エリカとサトルの心は、磁石のように惹かれ合っていた。
「……せっかくドッグランに来たんだから、ハチツーと遊んであげたら?」
「……いや、イヌたちはイヌたちで遊ばせてあげようよ。もう少しだけさ」
二人の空気を壊さないためにか、キャニスとハチツーは主人たちのもとを離れ、二匹で寄り添っていた。
「ご主人様たち、すごく仲が良いよね」
「そうね、見ていて恥ずかしい程だわ」
二匹はハッハッと舌を出し、互いの顔をクンクンと嗅ぎ合った。
「しばらく二人だけにしてあげよう」
ハチツーの提案をキャニスは喜んで受け入れた。
「見て、ご主人様たち、キスするわよ」
キャニスの言葉にハチツーが二人の方を向くと、サトルがエリカの両肩に手を置いたところだった。
「なんか、二匹から視線を感じる……」
サトルがイヌたちの方を向くと、二匹とも思い切りサトルたちの方を見ている。
「……馬鹿、見てたっていいじゃない」
エリカは催促するように目を瞑り、口づけの形に口を作った。
「……」
サトルは覚悟を決め、目を閉じエリカに顔を近づけていった。
「キャン、キャンキャンキャン!」
その時、キャニスが物凄い剣幕で吠え始めた。エリカとサトルは目を開き、イヌたちの方を向いて驚愕した。
「ゆ……ゆゆゆ、UFO!?」
何と二十メートル級の巨大な円盤が二人の方に向かって飛んで来ていた。サトルは円盤から逃げるためエリカの手を取って走り出した。
「サ、サトル君!」
エリカは走りながらサトルの背中を見つめた。サトルは振り向いて呟いた。
「……ね? 嘘じゃないって言ったでしょ?」
以上で完結です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次回作をお楽しみに。




