初めてのクエスト
これまでのあらすじ)
傭兵試験を受ける為にカイン王国へとやってきたパイン。
アリスと共に無事に試験に合格する。
試験中に起きた不可解な出来事。
パインとアリスが行動を共にすることを聞き、
傭兵協会会長のバーバラは、試験中に起きた
出来事を調べる為に試験官サールを2人に同行させる。
連合暦20年3月17日、
3人は、傭兵協会の事務所にいた。
事務所の中は正面にカウンターがあり、
その左右の壁にはボードが吊るされ、
多くのクエストが貼りだされていた。
サール:「えーと、D級のクエストは、、、。」
サールは、ボードを眺める。
サール:「あった。ここがD級のクエストですね。」
アリス:「はーい。」
3人がボードの前に集まる。
そこには、何枚かのクエストが貼りだされていた。
サールがその1枚を剥がした。
サール:「これが一番近そうですね。」
その紙には以下の内容が書かれていた。
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★☆☆☆☆(D)
内容:魔獣の壺の回収
場所:D-5地区
報酬:銀貨1枚
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パイン:「銀貨1枚か、、、意外と少ないな。」
この世界で、流通している貨幣は5種類存在する。
白金貨:金貨x2枚
金貨 :銀貨x5枚
銀貨 :青銅貨x10枚
青銅貨:銅貨x10枚
銅貨 :外食1食ぐらいが銅貨1-5枚ぐらいの価値
サール:「確かに少ないですが、ライセンスカードの特典を
使えば、宿泊費用を抑えることができますよ。」
パイン:「どういうこと?」
サール:「クエストを完了するとポイントが付きます。
このポイントを使うことによって、1日1部屋を
無料で借りられるのです。
遠征先での滞在に使えるわけですね。」
パイン:「なるほど。」
アリスが他のボードの前で騒いでいる。
アリス:「ねーねー、こっちのクエストは金貨x3枚もらえるよ。」
サール:「それは、★5つのクエストですね。
A級でないと受けることができません。」
アリス:「そっか。」
クエストは★でその難易度が設定されていた。
★☆☆☆☆ D級のみ、報酬(銀貨1枚)
★★☆☆☆ D級のみ、報酬(銀貨2枚)+銅の傭兵コイン
★★★☆☆ C級のみ、報酬(金貨1枚)+銀の傭兵コイン
★★★★☆ B級のみ、報酬(金貨2枚)+金の傭兵コイン
★★★★★ A級のみ、報酬(金貨3枚)+白金の傭兵コイン
サール:「我々はD級ですので、★が1-2の物のみです。
★2つのクエストならば、本試験の最後の壺ぐらいの
強さしかありません。」
パイン:「なるほど。」
パイン:(しかし、あんな勝ち方してしまったが、
本当に大丈夫だったのだろうか?
なんだか、不安になってきたな、、、。)
パイン:「ところで、傭兵コインというのは?」
サール:「それは、指定枚数集めると級が上がるコインですね。
C級にあがるのに、銅の傭兵コインを20枚集めないと
いけません。」
パイン:「うへ、まだまだ先は長いな。」
サール:「さて、このクエストを受けてみませんか?
私もいることですし、危険は無いはずです。」
パイン:「そうですね。」
アリス:「やろー。やろー。」
3人は、そのクエストを受けるとパーティーを組み、
D-5地区へと向かった。
パイン:((それにしても、パーティー料金が青銅貨3枚もとられる
なんて、思いもよらなかったよ。))
サール:((一人青銅貨1枚ですからね。パーティーの最大が6人
ですので、最高で6枚になりますよ。))
パイン:((どんどんクエストをこなして行かないと、
生活できなくなってしまうな。))
そんな会話をしながら歩いていると、目の前に森が見えた。
サール:((そろそろD-5地区です。警戒していきましょう。))
パイン:((了解。))
アリス:((はーい。))
その森の中がD-5地区だった。
3人は、周りに警戒しながら、進んで行く。
森の中を少し進むと1軒の家があった。
パイン:((こんなところに家がある。
魔獣の目撃情報が得られるかもしれない。
ちょっと聞いてみようか?))
サール:((そうですね。))
3人は辺りを警戒しながら、玄関へと向かった。
パインが扉をノックする。
パイン:「すみませーん。」
しばらく待つが返事が無い。
突然、お尻を撫でられた。
アリス:「キャー!!」
その声にパインとサールが驚く。
パイン:「うぁー。」
サール:「うぎゃー。」
???:「騒がしいのー。」
3人は後ろを振り返る。
そこには、ニヤケ顔の小柄な老人が立っていた。
アリス:((お尻触られた、、、。))
パイン:((なんだって。))
パインとアリスは老人を睨み付ける。
老人:「主ら、修行が足りんようじゃの。
'溺れる者は尻をも掴む'と昔からいうじゃろ。」
アリス:「そんなこといいません!!、
'溺れる者は藁をも掴む'です。ぷんぷん。」
老人:「そうじゃったかの?
まあよい、ところで、お主ら何者じゃ?」
老人は話を逸らした。
パイン達は老人にここに来た理由を説明した。
老人:「おお、そうか、そうか。
傭兵協会に連絡したのはわしじゃよ。
この先の洞窟に魔獣が現れての。
難儀しておったのじゃよ。」
老人の話によると、2日前に洞窟の近くで魔獣を見たとの
事だった。
パイン:「分かりました。これから洞窟へ行ってきます。」
老人:「すまんが、よろしく頼む。」
パイン:「はい。」
そして3人は洞窟へと向かった。
アリスは、洞窟までの道のりの間中、機嫌が悪かった。
そして、問題の洞窟が見えた。
パイン:((アリス、機嫌なおしてくれよ。))
アリス:((・・・。))
洞窟の入り口あたりに、何か動くものが見えた。
パイン:((気をつけろ、何かいるぞ。))
アリス:((・・・。))
すると、洞窟から一頭の小熊がのろのろとした足取りで現れた。
アリス:「キャー、かわいい。」
小熊に駆け寄ろうとしたアリスをサールが止めた。
サール:((親熊が近くにいると思います。
危険ですので注意してください。))
しばらく様子をみたが親熊が現れないため、
3人は、小熊に近づいた。
小熊は生まれたばかりなのか、
まだ目が見えていないようだった。
サール:((親熊は、どうしたのでしょう?))
パイン:「とりあえず、中に入ってみるしかないな。」
アリス:「そうだね。」
アリスが小熊を抱きかかえる。
中を見ると、内部は闇に包まれていた。
サールがなにやら呪文を唱えると、サールの持っていた杖の上部
が輝いた。その光が洞窟内部を照らす。
サール:((これでいいでしょう。))
パインは魔法ってすごいなと感心していた。
そして、3人はゆっくりと洞窟の中へと入っていった。
少し進むと、前方に黒い何かがあるのを見つけた。
それは大きな熊だった。
アリス:((死んでるの?))
パイン:((いや、まだ生きているようだが、
かなり危険な状態みたいだ。
アリス、頼む。))
アリス:((分かった。))
アリスは小熊を下に降ろし祈り始めた。
祈りが終わり、しばらくすると、親熊はゆっくりと動き始めた。
そして目の前の小熊を見つけると、両手を伸ばして引き寄せ、
小熊をなめ始めた。
親熊はこちらを見たが、特に威嚇してこなかった。
サール:((大丈夫そうですね。
では、壺を探しましょう。))
奥を照らすと、すぐ傍に壺らしき物が見えた。
パイン:((あれ、壺じゃないか?))
サール:((そうみたいですね。))
近くに寄ると、やはりそれは魔獣の壺だった。
守護者はそこにはいなかった。
サール:((まずは、すぐに蓋を閉めましょう。))
パインは蓋の横に落ちていた蓋を取ると、しっかりと閉じた。
パイン:((親熊が小熊を守るために、魔獣と戦ったのかな?
それで、なんとか守護者を倒した。
そんなところか。))
サール:((そうですね。たぶん、そんなところでしょう。))
後ろを見ると、親熊と小熊とアリスがじゃれあっていた。
パインは、壺を縄でぐるぐる巻きにすると
背中に背負い洞窟を出た。
2人も後に続く。
パイン:((さて、壺も回収したし、もどろうか。))
アリス:((そうだね。))
サール:((ええ。))
アリスは何気なく洞窟の方を振り返った。
そこには、小熊を背中に乗せた親熊がこちらを見つめていた。
アリスは2匹に手を振ると、
「元気でねー!!」
と叫んだ。
パインとサールも手を振っていた。
名残惜しそうにこちらを見つめる2匹の熊が目に焼きついた。
3人は老人の家へと戻ると家の扉を叩く。
突然、アリスが悲鳴を上げた。
アリス:「キャー!!」
その声にパインとサールが驚く。
パイン:「うぁー。」
サール:「うぎゃー。」
アリス:「んもう、何なのよ、このジジイ!!
'仏の顔も三度まで'って知らないの?」
老人:「ん?ということは、後一回触れるのー。」
そう言ってアリスに近づく。
アリス:「キャー!!」
アリスは老人から逃げる。
逃げるアリス、追う老人の構図を見ながら、
パインとサールは笑っていた。
この後、3人は傭兵協会へと戻ると壺を渡し、
初めてのクエストが完了した。
とある場所では、2人の男が会話していた。
男B:「どうやら無事クエストをこなしたようです。」
男A:「まずい。
まずいぞ。
なんとしても取り返さねばならない。
なんとしてもな。」




