地下水路
連合暦20年6月18日、
ドレアル:「レミューズ、おぬしが氷の魔法の使い手であることは
周知の事実じゃ、氷の女王がおぬしならば、
その時という事になるわけじゃよ。
エッグ王子がわしを呼んだ理由がそれじゃな。」
レミューズ:「なるほど、そのような事があったのですか。」
その時、ジェイルがぼそっとつぶやいた。
ジェイル:「それにしても、またしても、ズールか。」
レミューズがジェイルの言った言葉に反応した。
レミューズ:「ズールを知っているのか?」
ジェイルは、今までに起こったことを簡潔に説明した。
レミューズ:「なるほど、ズールがどんな方法を使ったのかは
わからないが、これから起こることを知っていた
ということだな。
魔獣王と戦うために、先手をうったという事か。
だとすると、大河の水差しは、魔獣王討伐に
必要だということか?
一体何につかうというのだ?」
ドレアル:「確かにそうなるの。
まあ、討伐に向かえば、いずれわかるのだろう。」
レミューズ:「マスターのおっしゃる通りですね。
今は大河の水差しの入手に専念しましょう。」
ドレアル:「そうじゃの。ところで、エッグ王子。」
エッグ王子:「なんでしょうか?」
ドレアル:「地下道の入口の封印の管理は、
どうなっているんじゃ?」
エッグ王子:「今年から私が管理することになりました。」
ドレアル:「うむ、それは好都合じゃの。
さて、それならば早速向かうとするかの。」
レミューズ:「マスターも行かれるというのですか?」
ドレアル:「祠には、ちょっとした仕掛けがしてあっての。
わしが行かなければ入手は無理なんじゃよ。」
ジェイル:「それって、マスターが亡くなったら入手
できないってことですか?」
レミューズがジェイルを睨み付けた。
ドレアル:「いや、わしが死んだ場合は、国王の血筋でも可能
じゃよ。ただし、ちょっと回り道になるがの。」
ジェイル:「なるほど。」
ドレアル:「エッグ王子は、お残りいただけるかの。
あと、護衛は不要じゃ。」
エッグ王子:「わかりました。
それでは、代わりと言っては何ですが、
これをお持ちください。」
そう言って、3つの指輪を1人づつに手渡した。
レミューズとドレアルは、その指輪を眺めると、
何も言わずに指にはめた。
ジェイルは、どんな指輪か聞きたかったが、だれも言葉を
発しなかったため、だまって指にはめることにした。
ドレアル:「さて、それでは、向かうかの。」
そして、地下道の入口へと向かった。
エッグ王子を先頭に階段を降りてゆく。
そして、長く伸びた通路の奥の扉へと招き入れられた。
そこは四角い小さな部屋だった。
置かれている物は何もなく、補強もされていない
削り出されたままの壁が印象的であった。
正面の壁には魔法陣の描かれた木の板がはめ込んであった。
ジェイルは、少し違和感を感じた。
ジェイル:「封印と聞いていたので、石か何かで封鎖されている
のかと思ったのですが。」
ドレアル:「なるほど、どうやらジェイルは魔法陣についての
知識が全くないようじゃの。」
ジェイル:「いえ、あの、、、」
ドレアル:「よいよい、せっかくじゃし、少し説明しておくかの」
エッグ王子:「マスタードレアル、申し訳ないのですが、
封印を解く準備が必要ですので、
外でお待ちいただけますか?」
ドレアル:「おぉ、そうじゃったの、封印の解除は秘密に
するように指示したのは、わしじゃったの。
それでは、外で待つとしようか。」
そう言って、エッグ王子を1人残して、他の者は外へとでた。
ジェイル:「あの?、封印の話ですが、、、。」
ドレアル:「そうじゃった。さて、おぬしの言っている封印は、
完全封印と呼ばれる封印方法なのじゃ。」
ジェイル:「完全封印?」
ドレアル:「うむ、封印には、完全封印と通常封印というのが
あるのじゃ。
完全封印は、絶対に開けることができない封印じゃ。
ただし、永久ではない。
大概は、数年程度じゃな。
しかし、儀式を行う事により延長することができる。
開けようと思った場合、封印が解けるのを待つ必要が
あるわけじゃよ。
これは、石で封印を行う。
それに対して、通常封印は、
好きなときに開け閉めできる封印じゃ。
延長する儀式は不要じゃが、魔道に精通していれば、
時間をかければ解くことも可能じゃ。
これは、封印用の木の一枚板で行うのじゃ。」
ジェイル:「なるほど、しかし木の板で壊れないのですか?」
ドレアル:「百年樹というのを聞いたことがあるかの?」
ジェイル:「木の魔法具の材料ですよね?」
ドレアル:「そうじゃな。
ルシード王国の近くに魔晶石の鉱脈があるのは
知っているな。」
ジェイルは、無言でうなずく。
ドレアル:「ルシード近くの大地に生える木は、魔晶石を
ゆっくりと吸収しながら成長するのじゃ。
100年かけて成長した木を百年樹と呼ぶのじゃ。
そして、魔法と相性が良いため魔法具の材料として
使われているのじゃよ。
そして、1000年かけて成長した木を千年樹と呼ぶ。」
ジェイル:「1000年ですか、、、。」
ドレアル:「そうじゃ、その千年樹を使った一枚板がこの封印に
使われているのじゃよ。
乾燥させた千年樹に魔法陣を描くと、鉄よりも固く
なると言われておる。」
ジェイル:「鉄よりも固いんですか?」
ドレアル:「実際の固さは分からんが、屈強の戦士が戦斧で
叩いても、壊すことができないのは確かじゃ。」
その時、部屋の扉が開いた。
エッグ王子:「封印を解きましたので、お入りください。」
部屋の中にはいると、正面の木の板があった場所に細い通路が
続いているのが見えた。
ドレアル:「それでは、エッグ王子は予定通り、たのんだぞ。」
エッグ王子:「はい、わかりました。」
それだけ言うと、ドレアルは通路へと入っていった。
2人も後に続いて通路へと向かった。
通路の中は、ゴウゴウと水の流れる音が聞こえる。
そして所々に明かりが灯っていた。
ジェイルには、油か魔法かはわからなかったが、
予想していた暗い通路を進むという思いは払拭された。
通路は、クネクネと曲がりくねっていたため、
進行方向も、進んできた通路も近くしか見えなかった。
しばらく進んだところで、ドレアルが急に立ち止まった。
ドレアル:「すまんが、少し休ませてくれ。」
そう言うと、何か呪文のようなものを口ずさむ。
ドレアル:((どうじゃ?聞こえるか?))
ジェイルは、突然の事に驚いた。
ジェイル:(これは、パーティー会話か?
いや、パーティーの術式はやっていない。
一体どういうことなんだ?)
エッグ王子:((聞こえてます。))
レミューズ:((どうやら、大丈夫そうですね。))
ドレアルがジェイルを見ると戸惑っている顔をしていた。
ドレアル:((おぬしも指輪をはめたじゃろ、その指輪で、
パーティー会話と同じことができるのじゃよ。
但し、パーティー会話とちがって、考えるだけでは
会話は出来ん。
指輪に触れながら考えてみなさい。
聞かれたくないときは、指輪から手を放すんじゃ。))
ジェイルは、ドレアルの言葉にしたがった。
ジェイル:((どうですか?聞こえますか?))
ドレアル:((どうやら、うまくいったようじゃな。))
ドレアル:「年をとると、すぐに疲れてしまう。」
そう言いながら、その場に座り込む。
レミューズ:「そうです、お年なのですから、無理せずに、、、」
レミューズとジェイルも横に腰を落とす。
ドレアル:((さて、休憩中に話しておく。
黙って聞くように。
レミューズは、気が付いておるな。))
レミューズ:((えぇ、もちろんです。))
ジェイルは、何のことかわからなかった。
ドレアル:((坊主、声をあげたりするなよ。))
ジェイル:((はい。))
ドレアル:((わしらは、つけられておる。
あくまでも、わしの予想じゃが、
こ奴らは、ヴァニッシュじゃろう。))
レミューズ:((私もそう思います。))
ドレアル:((敵は、どう動くかわからんが、
進む以外に道は無いのじゃ。
まずは、大河の水差の祠まで移動するが、
注意してすすむようにな。))
レミューズ:((そうですね。))
ドレアル:((さて、エッグ王子、手筈通り運んでくれ。))
エッグ王子:((はい、すぐさま行動を開始します。))
ジェイルは、一体なにが起こっているか判らなかった。
しかし、この先に大きな問題があることは確実であることは
はっきりと確信した。
ドレアル:「すまんの、そろそろ大丈夫じゃ。
先へ進もうかのう。」
レミューズ:「わかりました。」
そう言って3人は、立ち上がると、ゆっくりした足取りで
水路の奥へと歩みを進めた。
しばらく進むと、次第に水の流れる音が大きくなり、
そして突然視界が開けた。
そこは、巨大な空洞だった。
空洞には、巨大な湖が広がっていた。
人が通れるところは、湖の外側のみだった。
その時、エッグ王子の声が聞こえた。
エッグ王子:((わかりました。大臣と宮廷魔導士の所在が
判明しません。))
ドレアル:((そうか、やはりな。
すまんが、次の行動に移ってくれ。))
エッグ王子:((了解しました。))
ジェイルは、この会話の意味を聞きたくてたまらなかったが、
レミューズが何も言わない為、黙っていることにした。
湖の外側をぐるっと進むと、最奥に小さな祠のような建造物が
見えた。
3人が祠の前に到着した時、突然目の前が光った。
ジェイルは、なにが起きたのか分からなかったが、
振り向こうとしたときに、何が起こったのかがわかった。
そう、体が動かなかったのだ。
A:お待たせしました。
なにやら、絶体絶命状態になってしまいましたね。
敵は、ドレアルの予想通り、ヴァニッシュなんですかね?
C:んー、どうでしょう?
祠にかけられた魔法という可能性もあると思いますが、
それなら、ドレアルが何か言いそうな感じですよね。
A:んー、どうなるか、ちょっと楽しみですね。




