契約と制約
連合暦20年6月18日、
サール:「コゴーロさん、いくつか聞きたい事があるのですが。」
コゴーロ:「なんじゃ?」
サール:「ベンヌを守る者達は、
その存在を隠していたのですよね?」
コゴーロ:「そうじゃな、お前さん達が言っていたヴァニッシュ
とか言う輩の存在自体は伝わっていたんじゃよ。
まあ、名前は違ったがの。
わしらの間では、敵対する者と呼んでいたかのう。」
サール:「そうですか。
では、ズールは、どうやって
ベンヌを守る者の存在を知ったのでしょうか?
あと、あなた達をどうやって見つけたのでしょう?」
コゴーロ:「その件については何も語らなかったようじゃが、
先祖のベンジャミンは、もし敵対する者ならば、
我々を殺したはずだし、罠にかけようともしなかった
それらが、ズールという人物を信じるに値すると
考えたようじゃな。
予言については、本にも書いてある通り、
我々を調べた痕跡が無かったにも関わらず、
我々を見つけ出したという事が、
決定的だったようじゃな。
夜盗に襲われ、お前さん達が現れるまで
わしは信じてはおらんかったがのう。
お前さん達があの玉を持ってきたときに、
信じる気になったというわけじゃな。」
パイン:「なるほど、結局ズールがどうやって知ったのかは
分からないということか。」
コゴーロ:「さーて、パインさんの気持ちが変わらんうちに
契約の話をしてしまおうかの。」
コゴーロは、一息つくと、話を再開した。
コゴーロ:「さて、先ほど精神力を肩代わりするといったが、
召喚士は、既に幻獣と契約をしている。
そのため、ベンヌとは契約できん。
簡単に言うと、複数の幻獣とは契約できないと
いう事じゃな。」
アリス:「ちょっと、教えてください。」
コゴーロ:「なんじゃ?」
アリス:「契約についてなんですが、私は、いつシヴァと
契約したんでしょうか?
全く身に覚えがないんです。
気がついたら、シヴァがいたんです。」
コゴーロ:「なるほどな、
幻獣との血の契約について話さねばならんな。」
アリス:「血の契約?」
コゴーロ:「血を使った魔法陣とかあるじゃろ。
基本的には、あれと一緒じゃ。」
サールがニコニコしながら説明を始めた。
サール:「えーとですね。魔法陣に血を使うと、
その魔法陣の発動をその血の持ち主や血縁者に
限定することができるんです。」
コゴーロ:「そうそう、それじゃよ。
しかし、幻獣との血の契約は、少し違う。
血縁者でも幻獣が認めた者という条件が付くのじゃ。
つまり、血縁者でも幻獣が認めなければ、
契約は成立しないという事じゃな。
幻獣は、契約の前にその契約者を見定めると
言われている。
幻獣が認めなければ、
召喚士にはなれんという事じゃ。
ベンヌの仮契約と同じで、
話だけはできるということじゃがな。」
アリス:「あっ、もしかして、子供の頃に私の中にいたあの人。
シヴァだったってこと?」
コゴーロ:「ほう、さすがじゃな。
普通は忘れてしまうものだが、
覚えているということは、
やはり選らばれし者ということか。
そうじゃな、シヴァか、
あるいはシヴァの使い魔じゃろうな。」
アリス:「そっか、ずーと見守ってくれていたんだ、、、。
あっ、という事は、今いるシヴァって、シヴァの
精神体の一部分ってことなんですか?」
コゴーロ:「そういうことじゃな。
一部分だから、シヴァを呼び出すことが
できんのじゃよ。」
アリス:「なるほど、アンジェラさんの首飾りの力って、
シヴァが近づいたんじゃなくて、大きくなったって
ことだったんだ。」
コゴーロ:「何の話かわからんが、シヴァが大きくなったのなら、
それは、パイプが太くなったということじゃろうな。」
コゴーロ:「され、話は戻るが、まずはこれを、、、。」
コゴーロは、懐に手をいれると、2つの指輪を取り出し、
それを2人に見せる。
パイン:「これは?」
コゴーロ:「これが、お前さん達が受け取るべき宝じゃ。
この、赤と青の指輪じゃが、赤の指輪が
玉に触れた者、パインさんの物じゃ。
他の者が身に着けても効果がない。」
そう言って、パインの目の前に赤い指輪を置く。
コゴーロ:「そして、青の指輪じゃが、召喚士のお嬢さん。
お前さんの物じゃ。
これも、召喚士以外の者が身に着けても効果はない。」
そう言って、アリスの目の前に青い指輪を置く。
コゴーロ:「これらの指輪は、ベンヌの指輪じゃ。
精神の指輪と呼ぶ者もおるな。」
パイン:「これが精神の指輪ですか。
ちょっとまってください。精神の指輪って、
ベンヌの心臓から作られているってきいたんですが。」
コゴーロ:「ほう、面白い事を知っておるな。
ほれ、お前さん達が持ってきたあの玉じゃが、
わしらの間では、ベンヌの心臓と呼んでいるんじゃ。」
サール:「なるほど、そういう事だったんですね。」
コゴーロ:「あの、ベンヌの心臓の中に指輪についている2つの
石が入っているんじゃ。
それを取り出すことができるのが、ベンヌを守る者
のみなんじゃよ。
2ヶ月待ってもらったのは、それだけ時間がかかる
ということじゃな。」
パインが指輪を手に取ろうとすると、コゴーロがそれを制した。
コゴーロ:「まだじゃ。」
パインが、さっと手を引っ込める。
コゴーロ:「指輪の説明を聞いてからでも、遅くはないぞ。」
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話は変わって、前日の夜に戻る。
レミューズとジェイルは、パイン達と分かれた後、
ジェイルの屋敷へと向かった。
王子と接触を図るため、執事のポールに指示を出すためだった。
その道中にレミューズから、さまざまな教えを受けていた。
ジェイル:「ところで、師匠、私も賢者になれるのでしょうか?」
ジェイルは元々貴族であり、敬語の使い方やマナー等
というものを十二分に教え込まれていた。
ただ、本人はそれが嫌で、わざと使わないと決めていたのだ。
後に本人が「私も若かったのだよ」と語っている。
レミューズ:「そのことか。
なることは可能だが、私はお勧めしないな。」
ジェイル:「どうしてでしょうか?」
レミューズ:「うむ、これは精霊語について
詳しく話さないとならないようだな。」
ジェイル:「精霊語ですか。
それについては、カイン王国で多少は勉強したつもり
ですが。」
レミューズ:「では、火の精霊語や水の精霊語とかは
聞いたことがあるか?」
ジェイル:「えっ、精霊語というのは1種類じゃないのですか?」
レミューズ:「やはりな。
お前の知っている精霊語は、火の精霊語の事だ。
人間には火の精霊語が一番向いている。
そのため、火の精霊語の事を精霊語と称している
だけなんだよ。
精霊はさまざまな属性を持っている。
例えば、火、水、土、風等があるのだが。
それぞれの精霊は別の言葉を使うんだ。」
ジェイル:「そうだったのですか。」
レミューズ:「そのため精霊文字、そう、魔法文字とも言うが
それも異なるというわけだ。
そのため、魔法文字は膨大な数が存在していると
いうわけだな。
神聖魔法というのは、当然知っているな。」
ジェイル:「はい。」
レミューズ:「神聖魔法で使うのは、光の精霊語だ。
それとは反対に闇の精霊語というのもある。」
ジェイル:「闇の精霊語?」
レミューズ:「そう、闇の精霊語は、魔獣が使う言葉だ。」
ジェイル:「魔獣の言葉!!」
レミューズ:「精霊語は、その属性(地水火風など)によって
光と闇の精霊語のどちらかに近い。
ちなみに、光の精霊語と闇の精霊語は、
全く一致することがない。
これの意味することは、火の精霊は闇に近いという
ことだな。」
ジェイル:「えっ、闇に近いのですか?」
レミューズ:「そういうことになるな。
私は、まだ見つかっていない精霊が存在すると
考えている。
精霊は、我々が知らないだけで、
光と闇の間に均等に存在していると
考えているのだよ。
。」
ジェイル:「・・・」
レミューズ:「我々が知っている精霊の中で、一番闇に近いのが
火の精霊というわけだな。
そのため、魔獣は火の魔法を使うんだ。
火の魔法というのは、破壊の魔法なんだ。
創造が皆無だ。それゆえに闇に近いという事だ。
しかし、破壊の魔法であるがゆえに、
全ての魔法の中でも、
攻撃力は絶大というわけだな。」
ジェイル:「そうだったのですか。」
レミューズ:「思い出してほしい。
神聖魔法は、光の精霊語を使う。
火の精霊語は、闇に近い。
このため、火の精霊語の一部が使えなくなると
私は考えている。
まあ、全てを捨てるわけではないがな。」
ジェイル:「賢者になるために、火の魔法を捨てるというのには
そんな理由があったのですか。
ところで、師匠は氷の魔法を使っていましたが。」
レミューズ:「うむ、私は火の次に水の精霊語を勉強していたが、
水の魔法は、水が無ければ意味がないんだ。
それで、亜種の氷の精霊語を研究したのだ。
水の精霊語は火の次に研究が進んでいた
精霊語だからな。
ちなみに、土の精霊語は、身を守るのには使えるが
攻撃力に乏しく、ゴーレムを作るぐらいしか
使えないのだ。
魔法障壁などは、土の魔法に属している。
風の研究は、全くと言っていいほど
進んでいないのが現状だな。」
ジェイル:「奥が深いのですね。」
レミューズ:「魔獣との闘いで貢献したいのならば、
氷の魔法を覚えるしかない。
まあ、それでも魔獣王の足止めにしか使えないと
思っているのだがな。
さらに、氷の精霊語を使えるようになるためには、
水の精霊語の修得が必須なのだ。
その上、全ての上位魔法を覚える必要がある。」
ジェイル:「上位の魔法なら、カイン王国の2ヶ月で
覚えた者もいますが。」
レミューズ:「あぁ、上位の基本魔法だな。
それなら、私は、1週間で覚えたよ。」
ジェイル:「・・・」
レミューズ:「しかし、その後が大変だった。
全ての上位魔法を習得するまで、1年かかった。
水は、3年だな。
氷は、研究も含めて10年かかった。
まあ、研究も終わっているから、3年ほどで
覚えることができると思うがな。」
ジェイル:「水と氷を合わせて6年ですか、、、。
あのー、それって師匠が修得した場合の
期間ですよね?」
レミューズ:「あぁ、そうだよ。」
ジェイルは、うなだれながら言った。
ジェイル:「残念ですが、賢者になるのは、あきらめます。」
レミューズ:「そうか、ならば私が使う事のできる火の精霊語に
ついて教えることにしよう。」
ジェイル:「はい、よろしくお願いします。」
後にジェイルは知ることになる。
一般的に上位の火の精霊語を全て習得するためには、
5年の歳月が必要と言われているらしい。
あのバーバラでさえも、2年の歳月を有したという事を。
A:お待たせしました。
今回のお話は、ベンヌの話と精霊の話みたいですね。
それにしても、賢者になるのに、火を捨てなければならない
というのは、そんな理由があったんですね。
C:そうですね。
光と闇の属性は、創造神(光)と破壊神(闇)という
関係にあるのでしょうね。
A:もともと、2人の神に作られているので、どちらかの
属性を含んでいるというのは、よくわかりますが、
精霊は、創造神が作ったとされているので、
なぜ闇属性に近い精霊が存在するのかが
気になるところですね。
C:その辺りについては、いずれわかるかもしれないですね。




