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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
ベンヌの住まう山
53/99

契約と制約

連合暦20年6月18日、


サール:「コゴーロさん、いくつか聞きたい事があるのですが。」

コゴーロ:「なんじゃ?」

サール:「ベンヌを守る者達は、

    その存在を隠していたのですよね?」

コゴーロ:「そうじゃな、お前さん達が言っていたヴァニッシュ

     とか言う輩の存在自体は伝わっていたんじゃよ。

     まあ、名前は違ったがの。

     わしらの間では、敵対する者と呼んでいたかのう。」

     

サール:「そうですか。

    では、ズールは、どうやって

    ベンヌを守る者の存在を知ったのでしょうか?

    あと、あなた達をどうやって見つけたのでしょう?」

コゴーロ:「その件については何も語らなかったようじゃが、

     先祖のベンジャミンは、もし敵対する者ならば、

     我々を殺したはずだし、罠にかけようともしなかった

     それらが、ズールという人物を信じるに値すると

     考えたようじゃな。

     予言については、本にも書いてある通り、

     我々を調べた痕跡が無かったにも関わらず、

     我々を見つけ出したという事が、

     決定的だったようじゃな。

     夜盗に襲われ、お前さん達が現れるまで

     わしは信じてはおらんかったがのう。

     お前さん達があの玉を持ってきたときに、

     信じる気になったというわけじゃな。」


パイン:「なるほど、結局ズールがどうやって知ったのかは

    分からないということか。」


コゴーロ:「さーて、パインさんの気持ちが変わらんうちに

     契約の話をしてしまおうかの。」

コゴーロは、一息つくと、話を再開した。


コゴーロ:「さて、先ほど精神力を肩代わりするといったが、

     召喚士は、既に幻獣と契約をしている。

     そのため、ベンヌとは契約できん。

     簡単に言うと、複数の幻獣とは契約できないと

     いう事じゃな。」

アリス:「ちょっと、教えてください。」

コゴーロ:「なんじゃ?」

アリス:「契約についてなんですが、私は、いつシヴァと

    契約したんでしょうか?

    全く身に覚えがないんです。

    気がついたら、シヴァがいたんです。」

コゴーロ:「なるほどな、

     幻獣との血の契約について話さねばならんな。」

アリス:「血の契約?」

コゴーロ:「血を使った魔法陣とかあるじゃろ。

     基本的には、あれと一緒じゃ。」

サールがニコニコしながら説明を始めた。

サール:「えーとですね。魔法陣に血を使うと、

    その魔法陣の発動をその血の持ち主や血縁者に

    限定することができるんです。」

コゴーロ:「そうそう、それじゃよ。

     しかし、幻獣との血の契約は、少し違う。

     血縁者でも幻獣が認めた者という条件が付くのじゃ。

     つまり、血縁者でも幻獣が認めなければ、

     契約は成立しないという事じゃな。

     幻獣は、契約の前にその契約者を見定めると

     言われている。

     幻獣が認めなければ、

     召喚士にはなれんという事じゃ。

     ベンヌの仮契約と同じで、

     話だけはできるということじゃがな。」

アリス:「あっ、もしかして、子供の頃に私の中にいたあの人。

    シヴァだったってこと?」

コゴーロ:「ほう、さすがじゃな。

     普通は忘れてしまうものだが、

     覚えているということは、

     やはり選らばれし者ということか。

     そうじゃな、シヴァか、

     あるいはシヴァの使い魔じゃろうな。」

アリス:「そっか、ずーと見守ってくれていたんだ、、、。

    あっ、という事は、今いるシヴァって、シヴァの

    精神体の一部分ってことなんですか?」

コゴーロ:「そういうことじゃな。

     一部分だから、シヴァを呼び出すことが

     できんのじゃよ。」

アリス:「なるほど、アンジェラさんの首飾りの力って、

    シヴァが近づいたんじゃなくて、大きくなったって

    ことだったんだ。」

コゴーロ:「何の話かわからんが、シヴァが大きくなったのなら、

     それは、パイプが太くなったということじゃろうな。」


コゴーロ:「され、話は戻るが、まずはこれを、、、。」

コゴーロは、懐に手をいれると、2つの指輪を取り出し、

それを2人に見せる。

パイン:「これは?」

コゴーロ:「これが、お前さん達が受け取るべき宝じゃ。

     この、赤と青の指輪じゃが、赤の指輪が

     玉に触れた者、パインさんの物じゃ。

     他の者が身に着けても効果がない。」

そう言って、パインの目の前に赤い指輪を置く。


コゴーロ:「そして、青の指輪じゃが、召喚士のお嬢さん。

     お前さんの物じゃ。

     これも、召喚士以外の者が身に着けても効果はない。」

そう言って、アリスの目の前に青い指輪を置く。


コゴーロ:「これらの指輪は、ベンヌの指輪じゃ。

     精神の指輪と呼ぶ者もおるな。」

パイン:「これが精神の指輪ですか。

    ちょっとまってください。精神の指輪って、

    ベンヌの心臓から作られているってきいたんですが。」

コゴーロ:「ほう、面白い事を知っておるな。

     ほれ、お前さん達が持ってきたあの玉じゃが、

     わしらの間では、ベンヌの心臓と呼んでいるんじゃ。」

サール:「なるほど、そういう事だったんですね。」

コゴーロ:「あの、ベンヌの心臓の中に指輪についている2つの

     石が入っているんじゃ。

     それを取り出すことができるのが、ベンヌを守る者

     のみなんじゃよ。

     2ヶ月待ってもらったのは、それだけ時間がかかる

     ということじゃな。」


パインが指輪を手に取ろうとすると、コゴーロがそれを制した。

コゴーロ:「まだじゃ。」

パインが、さっと手を引っ込める。


コゴーロ:「指輪の説明を聞いてからでも、遅くはないぞ。」


---


話は変わって、前日の夜に戻る。

レミューズとジェイルは、パイン達と分かれた後、

ジェイルの屋敷へと向かった。

王子と接触を図るため、執事のポールに指示を出すためだった。

その道中にレミューズから、さまざまな教えを受けていた。


ジェイル:「ところで、師匠、私も賢者になれるのでしょうか?」

ジェイルは元々貴族であり、敬語の使い方やマナー等

というものを十二分に教え込まれていた。

ただ、本人はそれが嫌で、わざと使わないと決めていたのだ。

後に本人が「私も若かったのだよ」と語っている。


レミューズ:「そのことか。

      なることは可能だが、私はお勧めしないな。」

ジェイル:「どうしてでしょうか?」

レミューズ:「うむ、これは精霊語について

      詳しく話さないとならないようだな。」

ジェイル:「精霊語ですか。

     それについては、カイン王国で多少は勉強したつもり

     ですが。」

レミューズ:「では、火の精霊語や水の精霊語とかは

      聞いたことがあるか?」

ジェイル:「えっ、精霊語というのは1種類じゃないのですか?」

レミューズ:「やはりな。

      お前の知っている精霊語は、火の精霊語の事だ。

      人間には火の精霊語が一番向いている。

      そのため、火の精霊語の事を精霊語と称している

      だけなんだよ。

      精霊はさまざまな属性を持っている。

      例えば、火、水、土、風等があるのだが。

      それぞれの精霊は別の言葉を使うんだ。」

ジェイル:「そうだったのですか。」

レミューズ:「そのため精霊文字、そう、魔法文字とも言うが

      それも異なるというわけだ。

      そのため、魔法文字は膨大な数が存在していると

      いうわけだな。

      神聖魔法というのは、当然知っているな。」

ジェイル:「はい。」

レミューズ:「神聖魔法で使うのは、光の精霊語だ。

      それとは反対に闇の精霊語というのもある。」

ジェイル:「闇の精霊語?」

レミューズ:「そう、闇の精霊語は、魔獣が使う言葉だ。」

ジェイル:「魔獣の言葉!!」

レミューズ:「精霊語は、その属性(地水火風など)によって

      光と闇の精霊語のどちらかに近い。

      ちなみに、光の精霊語と闇の精霊語は、

      全く一致することがない。

      これの意味することは、火の精霊は闇に近いという

      ことだな。」

ジェイル:「えっ、闇に近いのですか?」

レミューズ:「そういうことになるな。

      私は、まだ見つかっていない精霊が存在すると

      考えている。

      精霊は、我々が知らないだけで、

      光と闇の間に均等に存在していると

      考えているのだよ。

      。」

ジェイル:「・・・」

レミューズ:「我々が知っている精霊の中で、一番闇に近いのが

      火の精霊というわけだな。

      そのため、魔獣は火の魔法を使うんだ。

      火の魔法というのは、破壊の魔法なんだ。

      創造が皆無だ。それゆえに闇に近いという事だ。

      しかし、破壊の魔法であるがゆえに、

      全ての魔法の中でも、

      攻撃力は絶大というわけだな。」

ジェイル:「そうだったのですか。」

レミューズ:「思い出してほしい。

      神聖魔法は、光の精霊語を使う。

      火の精霊語は、闇に近い。

      このため、火の精霊語の一部が使えなくなると

      私は考えている。

      まあ、全てを捨てるわけではないがな。」

ジェイル:「賢者になるために、火の魔法を捨てるというのには

     そんな理由があったのですか。

     ところで、師匠は氷の魔法を使っていましたが。」

レミューズ:「うむ、私は火の次に水の精霊語を勉強していたが、

      水の魔法は、水が無ければ意味がないんだ。

      それで、亜種の氷の精霊語を研究したのだ。

      水の精霊語は火の次に研究が進んでいた

      精霊語だからな。

      ちなみに、土の精霊語は、身を守るのには使えるが

      攻撃力に乏しく、ゴーレムを作るぐらいしか

      使えないのだ。

      魔法障壁などは、土の魔法に属している。

      風の研究は、全くと言っていいほど

      進んでいないのが現状だな。」

ジェイル:「奥が深いのですね。」

レミューズ:「魔獣との闘いで貢献したいのならば、

      氷の魔法を覚えるしかない。

      まあ、それでも魔獣王の足止めにしか使えないと

      思っているのだがな。

      さらに、氷の精霊語を使えるようになるためには、

      水の精霊語の修得が必須なのだ。

      その上、全ての上位魔法を覚える必要がある。」

ジェイル:「上位の魔法なら、カイン王国の2ヶ月で

     覚えた者もいますが。」

レミューズ:「あぁ、上位の基本魔法だな。

      それなら、私は、1週間で覚えたよ。」

ジェイル:「・・・」

レミューズ:「しかし、その後が大変だった。

      全ての上位魔法を習得するまで、1年かかった。

      水は、3年だな。

      氷は、研究も含めて10年かかった。

      まあ、研究も終わっているから、3年ほどで

      覚えることができると思うがな。」

ジェイル:「水と氷を合わせて6年ですか、、、。

     あのー、それって師匠が修得した場合の

     期間ですよね?」

レミューズ:「あぁ、そうだよ。」

ジェイルは、うなだれながら言った。

ジェイル:「残念ですが、賢者になるのは、あきらめます。」

レミューズ:「そうか、ならば私が使う事のできる火の精霊語に

      ついて教えることにしよう。」

ジェイル:「はい、よろしくお願いします。」


後にジェイルは知ることになる。

一般的に上位の火の精霊語を全て習得するためには、

5年の歳月が必要と言われているらしい。

あのバーバラでさえも、2年の歳月を有したという事を。

A:お待たせしました。

  今回のお話は、ベンヌの話と精霊の話みたいですね。

  それにしても、賢者になるのに、火を捨てなければならない

  というのは、そんな理由があったんですね。

C:そうですね。

  光と闇の属性は、創造神(光)と破壊神(闇)という

  関係にあるのでしょうね。

A:もともと、2人の神に作られているので、どちらかの

  属性を含んでいるというのは、よくわかりますが、

  精霊は、創造神が作ったとされているので、

  なぜ闇属性に近い精霊が存在するのかが

  気になるところですね。

C:その辺りについては、いずれわかるかもしれないですね。

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