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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
新たなる決意
4/99

初めてのライセンスカード

これまでのあらすじ)

魔獣王討伐隊に参加することを夢見て、

試験会場のあるカイン王国へとやってきたパイン。

アリスと知り合い、2人で予備試験をクリアした。

続けて本試験へと挑む2人。

合格してライセンスカードを入手できるのか?


連合暦20年3月16日、

パインは夢を見ていた。

巨大な柱が左右に延々と並んだ通路のような場所を歩いていた。

通路の先は暗く、空気が淀んでいる感じがした。

延々と続く通路をゆっくりと進んでいくと広い空間にでた。

目の前を見ると、そこには巨大な壺があった。

それに近づくと、どこからともなく呪文のような声が

聞こえてくる。

何を言っているのかは分からなかったが、

なぜか危険であることだけは分かった。

声が聞こえなくなると、上空が急に明るくなった。

上を見上げると巨大な火の玉があった。

それが自分に向かって落ちてきた。

パイン:「うぁ!!」

目が覚めた。

身体中から滝のような汗が噴出していた。


パイン:(ふう、夢か。嫌な夢だったな。)

そんなことを考えながら身支度を済ませると部屋をでた。

廊下に笑顔のアリスが立っていた。


アリス:「おはよー。」

パイン:「あっ、おはよう。」

アリス:「突然、大声あげてどうしたの?」

パイン:「えっ?」

アリス:「うぁー!!、って声が隣の部屋まで聞こえたよ。」

パインは食堂へ向かいながら夢の話をした。

アリスは何か思案しているようだった。


食堂で食事を受け取り席に着くと、アリスが言った。

アリス:「それって、私の夢じゃないかな?」

パイン:「えっ?」

アリス:「まだ、パーティー組んでたよね。

    たぶん、私の意識が入り込んだのかも。

    その夢って、私がよく見るやつだもの。」

パイン:「そうだったのか、、、。」


パインは少し考えると、思い切って質問した。


パイン:「あの夢は一体何なんだ?」

アリス:「んー、よくわかんない。

    あんな場所には行ったことないし、

    あの詠唱も聞いたことが無いし、、、。」

パイン:「そうか。」


パインはこの時ふと思った。

パイン:(もし俺があんなことやこんなことの夢を見たら、

    アリスがそれを見る可能性があるのか、、、。

    寝るときはパーティーを解散しないとやばいな。)

そう心に深く刻み込むパインだった。


2人は食事を済ませると、受付へと向かった。

本試験の受付には、数人の受験者が並んでおり、

その後ろに並ぶと自分の番が来るまで待った。

そして、自分の番がやってきた。


受付嬢:「本試験受験の方達ですね。

    そちらにいる係りの者についていってください。」

横をみると、サールが立っていた。


サール:「おはようございます。」

パイン・アリス:「おはようございます。」

サール:「それでは、こちらにおいでください。」

そして、予備試験とは異なる部屋に連れて行かれた。


部屋に入る2人をじっと見つめる男がいた。

男:(よし、予定通りあの部屋に入ったか。

  あとは、結果を待つだけだな。)


その部屋は予備試験の部屋と似ていた。

サール:「それでは本試験の説明をいたします。

    本試験ではパンフレットに記載されていた通り、

    現在の装備で行います。

    パーティーを組んでいますのでポーションなどの

    アイテムの持込は禁止となります。

    お二人には、これから連続で4回、壺の蓋を

    閉じてもらいます。

    無事蓋をすることが出来たら、壺の横に巻物が

    あります。

    それを使用すると、次のエリアへと移動します。

    4回目の壺の横にメダルがありますので、

    それをもって帰還してください。

    これで、本試験の終了となります。

    なお、魔獣の強さは、しだいに強くなりますので

    注意してください。

    これからお渡しする帰還の巻物は帰還時に

    使用してください。

    なにかご質問はありますか?」

パイン:「本試験は4回あると聞いていたのですが?」

サール:「パンフレットはお読みになりましたか?

    受験者の数が増えたため、今回より4回分を一度に

    実施する旨が書かれています。」

パイン:「そうだったんですか。」

サール:「他にご質問はありますか?」

パイン:「ありません。」

サール:「それでは本試験を開始させていただきます。」

そして、本試験が開始された。


最初の空間に現れたときに、アリスが言った。

アリス:((巻物が複数になるんだね、

     分かりやすいようにしておこうよ。))

そう言うと、小さな紙に’帰還’と書くと、

帰還の巻物に貼り付けた。

パイン:(さすが女の子だな、細かいところによく気がつく。)

そして、遠くにうごめくスライムに向かって切りかかって

行った。

3回目までは、敵が強くはなってはいたが、

予備試験とたいして変わらなかった。

2人は多少疲労があったが、問題なく進むことができた。


そして2人は、最後のエリアにいた。

飛んだ先には小部屋ぐらいの空間があり、

その先に人1人が通れるぐらいの狭い通路が続いていた。


パイン、アリスの順に通路をゆっくりと進んでいく。

アリス:((パイン、ここ、なんかおかしい。))

パイン:((ああ、俺もそう思う。気をつけろ。))

パインもただならぬ気配を感じていた。

それは、その場にいるだけで、恐怖するような、

重くじめじめとした感覚だった。


丁度その頃、試験会場の監視部屋は騒然としていた。

水晶玉で受験者の監視を行っていたが、2人の受験者が

次の部屋に現れていなかった。


   「なんだと、受験者の2人が消えただと。」

   「はい、転移の巻物を使ったあとに消息不明に、、、」

   「担当者はだれだ?」

   「サール試験官です。」

   「サールか、、、すぐに呼び出せ。」

   「分かりました。」


パインとアリスは、今まで以上に慎重に前進していた。

パインは右手に剣を構え、左手に盾を装備していた。

アリスは、右手にメイスを持ち、左手にやや小ぶりな盾を

装備していた。

洞窟を少し進むと、その先に広そうな空間が見えた。


パイン:((壺はこの先のようだな。

     慎重に進むぞ。))

アリス:((うん。))

その空間に入ったとたん、上空からうなり声が聞こえた。

そして突然頭上から魔獣が飛び降りてくるのが見えた。

それは、大人ぐらいの大きさの魔獣だった。

そして、アリスのすぐ横に着地した。


アリス:「キャー!!」

アリスは目を瞑り、メイスをめちゃくちゃに振り回した。

その攻撃の何発かが当たった。

そして、魔獣が空間の中央へと飛ぶのが見えた。

特にダメージを受けている様子はなかった。


パイン:((落ち着け、アリス。))

アリスは、その声にはっとして、メイスを振り回すのをやめた。


2人が魔獣の方向を見ると、その魔獣の後方から何匹もの

魔獣が近づいてくる。

アリスの声に反応して来たのだろう。

その大きさは、優に2mはあろうかと思えるほど大きかった。


パイン:((まずい、後退するぞ。))

パインはアリスを先に行かせると、続いて洞窟に逃げ込んだ。

1匹の魔獣が続いて洞窟に飛び込んだ。


2人は、通路を全力で逆走した。

魔獣が追走する。

そして、最初に現れた空間へ逃げ込んだ。

当然のことだが、その場所には他の道が無かった。

その狭い空間の端まで移動する。


アリスを通路と反対側の壁に移動させると、

アリスをかばうように立ち、迎え撃つように剣を構えた。

その時、魔獣がゆっくりと現れた。

そして、1回吼えると、飛び上がった。


少し前、監視部屋にはサールと共に、

パーティーの術式を行った係員がいた。

サール:「まずは、使用した転移の巻物の回収を行いましょう。

    そこに描かれている魔法陣を見れば何か分かるかと。」

巻物は、魔晶石の粉末をまぜた絵の具で巻物に魔法陣を描き、

魔法の種類によって定められた魔法陣で術式を執り行うことで

完成する。

転移系の場合、転移先の魔法陣で行う必要があった。

ちなみに、帰還の巻物も転移の巻物も同じ物であったが、

転送先が町など、明確になっているの物を帰還の巻物と呼ぶ

習慣があっただけである。

術式によって魔晶石に魔力が封じ込まれ、

その力を利用して魔法が発動する。

その魔力は1回分しかなく、使用済みの巻物が手持ちに残った。

1回使用された巻物は二度と使用することができないため、

使い捨ての魔法という事になる。

そして転移系の巻物の場合、利用者を転移したあとに巻物だけが

転移前の場所に残る。

これは、床に描いた魔法陣が一緒に転移されないことでも

分かるとおり、魔法陣自体には影響しないということだった。

サールが言ったのは、3回目で使用した巻物を回収して

そこに描かれた魔法陣を調べることによって、

どこに転移されたかを知るというものだった。

そして、すぐに捜索隊が組織され、3回目の魔法陣へと転移した。

その隊長はバーバラと呼ばれる精霊魔導士のマスターだった。


バーバラは、落ちていた巻物を取ると魔法陣を見た。

バーバラ:((サール、この魔法陣をどう見る?))

サールは巻物を受け取ると、それを見た。

サール:((はい、これは私の作ったものではありません。

    ここに描かれている魔法陣はここで使われている

    ものとは明らかに違います。))

バーバラ:((やはりそうか。

     この件は、別途調査の必要があるようだが、

     まずは、2人の救出を優先する。

     ユーリ、気配を感じるか?))

ユーリと呼ばれた者は、パーティーの術式を行った者だった。

ユーリ:((わずかながら、南西の方角に気配を感じます。))

バーバラ:((詳細な位置を特定してくれ。それまで待つ。))

ユーリ:((わかりました。))

そう言うと、ユーリは、魔法陣を描き始めた。


パインは、魔獣を迎え撃つため、剣を構えていた。

魔獣が通路から現れると1回吼え、飛び上がった。

その時魔獣は、天井の高さを考慮していなかったのだろう。

天井に頭をぶつけると、そのまま落下し、

ふらふらとよろめいている。

それを見ていたパインは、魔獣に近づくと剣を突き出した。

剣は難なく魔獣に突き刺さる。

パイン:(こいつ、アホすぎる。)

アリス:((やったね、パイン!!))

パイン:((俺にかかれば楽勝さ!!))

そう言ったあと、パインは今のは言うんじゃなかったと

また後悔した。


他の魔獣がやって来ないことを確認すると、

2人はこれからどうするかを検討した。

パイン:((奥の魔獣はこいつとは比べ物にならないほど

    強そうだ。

    どうやって、メダルを取るかだな。))

アリス:((それにしても、なんでやってこないんだろう?))

パイン:((あいつらデカすぎて通路に入れないんじゃないか?))

アリス:((そっか。))

その後、2人はどうやって魔獣を倒すかを話し合った。

結局、良い案は出なかった。

とりあえず2人は、状況を確認するため、広い空間へと

慎重に進んで行った。


その時、後方が光った。

パインはあせった。

パイン:(まずい、後ろに敵が出現したのなら挟み撃ちだ。)

この通路ではアリスと入れ替わることができない。

パイン:(どうする?)

そう考えていると、アリスが後方に走り出した。


パイン:((まて、行くな。))

アリス:((大丈夫だよ。魔獣じゃないみたい。))

パインはアリスの後に続いた。


最初の空間にもどると、そこには3人が立っていた。

その中にサールを見つけた。

サール:「お二人とも無事でしたか。それはよかった。」

バーバラは下に転がっている魔獣の死体を見ると言った。

バーバラ:「こいつはお前らが倒したのか?」

パイン:「そうですが、、、なにか?」

バーバラ:「そうか。」

そう言うと、バーバラは少し考えて口を開いた。

バーバラ:「この試験は中止とする。」

パイン:「えっ、どうしてですか?」

2人はびっくりした。

バーバラ:「安心しろ、お前達は合格だ。」

パインは、訳が分からなかった。

隣では、アリスが飛び上がって喜んでいる。

バーバラ:「すぐに帰還の巻物を使って帰還しろ。」

2人はそれに従って、帰還の巻物を使った。


2人が戻るのを確認するとバーバラが言った。

バーバラ:((さて、我々はここの調査を始めるか。))

そう言うと、バーバラ達は奥へと進んで行った。


パインとアリスは、試験会場に戻ると受付へと向かった。

そして明日の朝、受付に来るように言われると、

パーティーを解散した後で部屋へと戻った。


丁度その頃、とある場所では、2人の男が会話をしていた。

男B:「残念ながら、失敗しました。」

男A:「なんだと!!、、、まあ良い、次の手は考えてある。」


連合暦20年3月17日、

2人は、朝一番で受付の前にいた。

彼女の言っていた通り、合格と判定された。

そして、無事にライセンスカードが発行された。


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