ドラゴンの骨と眠り姫
そこは、まさに巨大な穴と呼ぶに値する場所だった。
天然の円形の石の壁、それが垂直に天まで延びている。
上から見ることができたら、地獄へと続く穴のように
見えるのだろう。
その穴の底は、思ったよりも明るかった。
サールが魔法で明るくなっているのだろうと説明した。
そして、その穴の中心に到底信じられないような物があった。
それは、巨大な骨だった。
それを目にしたとき、全員が息を呑んだ。
そして、呆然と眺めていた。
最初に声をあげたのは、ジェイルだった。
ジェイル:((これが、ドラゴンの骨なのか?))
サール:((ドラゴンは、壁画しか見たことがありませんから、
よくわからないんですが、羽があったんですかね?
この骨はどちらかというと鳥じゃないですか?))
パイン:((いや、しかし鳥にしては、大きすぎるだろ、、、。
それに、歯のようなものもある。
鳥って、歯あったっけ?))
サール:((そうですね。鳥には歯は無かったと思います。
ということは、鳥ではないということですか?))
ジェイル:((そうだな、たぶんエイガルにも良く分からない骨
だったんだろう。
それで、ドラゴンじゃないかと思ったんだろうな。))
サール:((確かに、実際に見たこと無い以上、
ドラゴンと考えてもおかしくないですね。))
パイン:((そうだ、シロだったら何かわかるかもしれないな。))
ジェイル:((そうだな、聞いてみるか。))
そして、アリスとシロの気配のする方向を見た。
そこでは、アリスが投げた骨(?)をシロが咥えて
戻ってくるという、いわゆるボール遊びが行われていた。
パイン:((シロって、ネコじゃなかったっけ?))
サール:((いえ、幻獣ですよ。))
パイン:((あぁ、そうだった。))
ジェイル:((シロ、ちょっと見てほしいのだが。))
シロ:((なんにゃ、いそがしいにゃ。))
アリス:((よし、シロちゃん、いくよ。))
シロ:((あいにゃ。))
そして、また骨(?)が投げられた。
パイン:((アリス、ちょっときてくれよ。))
アリス:((はーい。ちょっとまってね。))
シロが咥えて戻ってくると、ボール遊びをやめて、
一緒にやってきた。
ジェイル:((この骨なんだが、何の骨か分かるか?))
シロ:((分かるわけないにゃ。))
パイン:((そうか、そうだよな、、、。))
シロ:((なんにゃ、その言い方やめるにゃ。
アリス、パインなんかやめるにゃ。))
アリス:((えっ、ちょ、ちょっと何言っているの?))
アリスがシロを睨み付けた。
アリス:((シ・ロ・ちゃん。))
シロ:((んぎゃー!!。アリスが怒ったにゃん。))
シロは骨の山の後ろへと逃げていった。
そして、アリスがそれを追いかけていった。
このとき、パインは、
(なんだったんだ、いまのは?)
と思っていた。
ジェイル:((さて、これ以上これを見ていても意味がないな。))
パイン:((そうだ、ローゼスの手記に書かれていたアンジェラの
寝ていた場所というのは、ここから魔法陣を飛んだ
所だったと思うんだが、、、。))
ジェイル:((ああ、そう書いてあった。
これから、そこに向かってみよう。))
サール:((そうですね、召喚士について何か分かるかも
しれないですね。))
アリスは、まだシロと追いかけっこをやっていた。
パイン:((アリス、いくぞ。))
アリス:((はーい。))
アリスは、立ち止まると、シロを呼んだ。
アリス:((シロちゃん、いくよ。))
シロ:((あいにゃ。))
そして、シロがアリスの元へと駆け寄って行く。
パインはそれを見て、いいコンビだなと思った。
パイン達がいる穴の底には、いくつかの横穴があった。
彼等は最初の横穴から、時計回りに1つづつ確認してゆく。
しかし、今までの横穴は、すぐに行き止まりだった。
そして今、彼等は反対側の横穴を進んでいた。
パイン:((この横穴は、前よりも長いようだな。))
その道は、なにかを避けて作ったのだろうか、
緩やかなS字を描いていた。
そして、S字を抜けると、目の前に扉があった。
その扉にも魔法陣は描かれていなかった。
しかし、先ほどのドアと同じように文字が彫られていた。
パイン:(("眠り姫の部屋"だってさ。))
ジェイル:((おっ、ついにあったか。
さて、拝ませて貰おうかな、
眠り姫の部屋を、、、。))
アリス:((ジェイル、その言い方、なんかいやらしいよ。))
パイン:((だな。))
サール:((ですね。))
ジェイル:((えっ、そーなの?
小説で敵がヒーローの仮面を剥ぎ取ろうとしたとき
言っていた言葉なんだけどな、、、。))
パイン:((小説の台詞をつかったのか、、、。))
ジェイル:((まあ、いい、さっさと入ろう。))
まず、パインが扉を開け中に入った。
その部屋は、岩をくりぬいただけのただの空洞だった。
その部屋の真ん中に魔法陣が描かれていた。
そして、壁際に申し訳なさそうに机が置かれていた。
パインは、周りを見回し何もいないことを確認すると、
全員が中へと入る。
サールが真っ先に魔法陣に駆け寄り調べ始めた。
パインとジェイルは、机に向かった。
そして、机の上に紙の束を見つけた。
紙の束は、ぼろぼろで読むことは不可能だった。
しかし、数枚下の紙は、かろうじて読むことができた。
そこには、こう書かれていた。
ズールが言うには、この魔法陣はかなり危険とのことだ。
私は、魔法については詳しくない。
やはり、ここはズールに任せたほうがいいのだろう。
しかし、こんなときに、勅命が来るとは考えてもいなかった。
遺跡調査には不服はないが、このタイミングが問題だ。
眠り姫の傍を離れることが残念でならない。
それにしても、この眠り姫は、どうやって起すのだろうか?
この場にいなくとも、そのことが頭を離れることはないだろう。
2人でこの手記について話していたとき、サールが言った。
サール:((この魔法陣、シェリルのいた場所のものと
ほとんど一緒です。))
ジェイル:((やはりそうか、ということは、
アンジェラが寝ていた場所という事か、、、。))
シェリル:((あのーー。))
ジェイル:((どうした?))
シェリル:((思い出した事があるんですが、、、。))
その発言で、全員がシェリルの元へと集まる。
ジェイル:((何を思い出したんだ?))
シェリル:((ここに来たことがあります。
そして、ここに別の部屋がある事を
思い出しました。))
ジェイル:((なんだって、その部屋はどこに?))
シェリル:((確か、こっちです。))
シェリルが、奥の方へと移動する。
シェリル:((ここです。))
そこは、むき出しの岩があるだけだった。
ジェイル:((何もなさそうだが、、、。))
シェリル:((たしか、そう、ここです。))
シェリルが行った壁には、沢山の穴が開いていた。
その中の1つに手を入れた。
「ガコッ、ゴゴゴゴゴゴッ。」
大きな音と共に、シェリルが示した位置に口が開いた。
ジェイル:((こんなところに、、、。))
全員が黙ってその口を見ていた。
口火を切ったのは、パインだった。
パイン:((よし、入ってみよう。))
パインが先陣を切って中へと入った。
そこには、大きめの空洞があった。
手前の地面には魔法陣が描かれていた。
そして、奥には、大きな魔法陣が描かれていた。
パインは、安全を確認し、全員を中へ入れた。
サールは、すぐに魔法陣へと向かった。
他のものは、中を見物していた。
サール:((手前の魔法陣は、先ほどの魔法陣に近い物ですね。
そして、奥の魔法陣は、ズールが座っていた魔法陣に
近いものだとおもいます。))
ジェイル:((ということは、時間を止める魔法陣だった
可能性があるということだな。))
サール:((そうですね。
しかし、断言することは出来ません。))
パイン:((サール、1つ質問していいか?))
サール:((なんですか?))
パイン:((前から気になってたんだが、魔法陣で似ていると
言うのは、どういう意味なんだ?))
サール:((あぁ、そのことですか。
魔法陣は、複数の円や線と魔法文字で
構成されています。
魔法文字自体は、現在確認されているもので、
千近くあります。
その1文字毎に意味がありまして。
その文字の組み合わせで描かれているのです。
円や線は文字の力を混ざらないように分けたり、
その力を溜めて置く領域を確保するためのものです。
いわゆる分割線ですね。
ただし、方位については意味があります。
まあ、ここを話すと長くなるのでやめましょう。
ということで、ある程度までは推測ができるのです。
しかし、未知の文字もまだ多数あり、否定文字や
複数の文字で意味を成す複合文字などがあるため、
確定することができないんです。
同じ転移の魔法陣でも人によって選ぶ魔法文字が
違うなど、色々とあるんですよ。))
パイン:((へーー。魔法陣って奥が深いんだな。))
サールは、目をキラキラとさせて答えた。
サール:((えぇ、だからこそ、面白いんですよ。))
パイン:((そんなものなのか。))
パイン達は、この後しばらくその空洞を調べた。
しかし、新しい事実を発見する事は出来なかった。
そのため、一旦戻ることを決めた。
A:「なんか、がっかりですよ。」
C:「えっ、なにが?」
A:「だって、眠り姫の部屋で、
なんの情報も得られないなんて。」
C:「何を期待していたんですか?」
A:「もっと、真相に近づく何かが、あると思ったのですが。」
C:「いや、まだ、章の前半ですよ。
ここで分かると、あとで困る。」
A:「えっ、困る?」
C:「いえいえ、作者の代弁です。」




