2つ目のメダル
転送の魔法陣へと向かう途中で、パインがジェイルに聞いた。
パイン:「一つ質問していいか?」
ジェイル:「なんだ?」
パイン:「魔獣に組する者なんだが、どこで知ったんだ?」
ジェイル:「あぁ、その事か。
昔、まだ従僕の剣の事を知る前のことだ。
魔獣王を倒したいとベルノに話したんだ。
その時に魔獣に組する者の話を聞いたんだ。
魔獣王を討伐しようとする者たちが何者かに
襲われているとね。
そして、私に言ったんだ、敵は魔獣王だけじゃない。
人間にも敵がいるってね。
もし、生半可な気持ちで言っているなら、
そのような事を口にするなと言われたよ。」
パイン:「そういえば、前にもベルノという名前が出てきたけど
誰なんだ?」
ジェイルは、少し考えてから、ゆっくりと話し始めた。
ジェイル:「ベルノは、私の兄のような者だな。
実際は、世話係なんだが、、、。
私が物心つく前から一緒にいたんだ。
色々なことを教えてもらったよ。
もう、3年近く前になるのかな。
魔獣王討伐隊として出発したんだ。
しかし、いまだに行方知れずだ。
生きているのか死んでいるのかも判らない。
普通なら何らかの情報が得られるはずなのだが。」
パインは聞いたことを後悔していた。
パイン:「すまない。」
ジェイル:「何を謝っているんだ。
私は、まだベルノは生きていると思っている。
だから、問題はない。」
パイン:「・・・。」
パインは言葉を見つけることが出来なかった。
5人+1匹は転送の魔法陣に到着すると、躊躇無く飛んだ。
辺りが見えるようになると、そこは部屋の中だった。
部屋は、暗くはなかったが、明るいというほどではなかった。
部屋には何も無く、真ん中に魔法陣があるだけだった。
壁の1辺には扉が1つあった。
アリス:「えっ?、遺跡じゃないの?」
パイン:「みたいだな。」
シロ:「にゃにか、いやにゃかんじがするにゃ。」
サール:「えぇ、空気が淀んでいます。」
シェリル:「・・・。」
ジェイル:「そうだな、警戒して進もう。」
パイン:「あぁ、そうするか。」
パインが慎重に扉を開ける。
そして、その先を確認する。
そこは、通路のようだった。
特に人の気配はない。
パイン:「大丈夫そうだ。」
そう言って、通路に出る。
その通路は、1方向に真っ直ぐに続いていた。
サール:「ここは、一体何なんでしょうね?
見る限り古代遺跡ではないようですし、、、。」
アリス:「ズールの別荘ってところなのかな?」
パイン:「もう少し調べないとな、、、。
とりあえず、先に進もう。」
パインを先頭にゆっくりと進んで行く。
途中いくつかの扉があったが、鍵がかかっており入ることは
できなかった。
そして、突き当たりに扉を見つけた。
パインがノブを回す。
鍵はかかっていないようだった。
そして、ゆっくりと扉を開けた。
突然なにかが、パインの目の前を横切った。
パイン:「うぁ!!」
パインが飛び上がって、後ろにいたサールに激突する。
そして、2人して尻餅をついた。
ジェイル:「どうした?」
ジェイルが部屋の中を覗き込むと、1匹のねずみが
ちょろちょろと動き回っていた。
続いてはいったアリスもそれを見る。
アリス:「あっ、ねずみ、かわいい!!」
シェリルはブルブルと震えながらアリスを見ていた。
シェリル:「アリスさんって、怖いものないんですか?」
アリスはピースサインを出しながら、
「パインと違って、なーーーしっ。」
と答えた。
シェリル:「そうなんですね。」
そういいながら、パインを見つめる。
パイン:「いまのは、突然だったから、驚いただけだ。」
そう言い訳をしながら、立ち上がる。
そして、部屋へ入り先頭へと戻った。
そこは、円形の部屋だった。
部屋の壁には、棚のようなものがぐるっと1周設置されている。
もともとは、図書室かなにかだったのだろうか?
棚の近くには、本や物が辺りに散らばっていた。
まるで泥棒にでも入られた後のようだった。
パイン:「これは、侵入者が何かを探していたのか?
すごい有様だな。」
サール:「そうですね。
盗む目的ではなさそうな荒れ方ですね。」
パインは、周りを見回すと部屋の真ん中にある設置物に
近づいた。
それは、ガラスのような透明なケースだった。
ガラスケースの下には魔法陣が描いてあった。
そして、その中にメダルが置いてあった。
パイン:「メダルが、あったぞ!!」
4人がパインの周りに集まる。
ジェイル:「これは、どうやってあけるんだろう?」
パイン:「まかせろ!!」
そう言って、両手で剣を強く握り締めると剣を振り上げる。
そして、力いっぱい振り下ろした。
「ガン!!」
鈍い音とともに、パインの両手から剣が飛ばされる。
パインは、両手を握り、悶えていた。
どうやら、強く叩きすぎて、手が痺れたのだろう。
サールが近づき、剣が当たった所を確認する。
サール:「傷一つついていませんね。
魔法がかかっているのでしょう。
物理的な破壊は困難ですね。」
パインは言った。
パイン:「サール、そう言う可能性があるなら、
さきにいってくれ、、、。」
アリスがパインを部屋の隅へと移動させる。
ジェイル:「さて、どうやって取ればいいんだろうな?」
サール:「簡単ではなさそうですね。
侵入者が、これほど大事に保管されている物を
放置するとも思えません。
たぶん、あける方法を模索したと思いますよ。
それで、それが見つからずに放置して帰ったと。」
ジェイル:「きっとそうだろうな。
他の方法を探そう。」
サール:「えぇ、そうしましょう。」
サールがパインの方を見ると、アリスが、パインの両手に
つんつんしているのが見えた。
ジェイル:「よし、全員で手がかりを探すんだ。」
その一言で、全員が散会して部屋の中を探しだした。
それは、念入りに捜した。
机の下や、本棚の本の間、下に落ちた本や物も調べた。
落ちているものの下も移動して調べた。
しかし、それらしい仕掛けや魔法陣は発見できなかった。
しばらくして、サールは一旦諦め、
ガラスケースのところに戻った。
そして、ガラスケースの中を見た。
サール:「えっ、無くなっています。」
ジェイル:「なんだって?」
その声で全員がガラスケースの前に集まる。
ジェイル:「一体どこへ消えたんだ?」
ジェイルが考え込んでしまった。
そして、最後にやってきたアリスが聞いた。
アリス:「何が消えたの?」
サール:「このガラスケースに入っていた
メダルが消えたんです。」
アリス:「えっ?」
そう言うと、アリスが肩にかけていたカバンを下ろし、
カバンの中を捜しだした。
「あった。」
といって、カバンから何かを取り出した。
そして、それをサールに見せる。
それは、紛れも無くガラスケースに入っていたメダルだった。
サール:「えぇーーーっ!!」
サールはビックリした。
全員がアリスに注目する。
サール:「アリスさん、なんでそれを持ってるんですか?」
アリス:「えっ、何でってどういうこと?
ガラスケースから取り出したんだよ。」
サール:「どうやったんですか?」
アリス:「どうやったって、普通に持ち上げたんだよ。
こうやって。」
アリスがガラスケースを上に持ち上げた。
ガラスケースは難なく持ち上がった。
サール:「盲点でした。
仕掛けなんて無かったんですね。
絶対に何か仕掛けがあるとおもっていたのに、、、。」
ジェイル:「なるほどな、あの魔法陣のせいで、
魔法によって封印されていると
錯覚させられていたんだ。
前の侵入者もそう思って、
部屋の中を捜したんだろう。
思い込みは怖いな。」
アリス以外の者は、取り出したときに何故すぐに
教えなかったのかを突っ込みたかったが、
アリスがむくれると困るので、それを心の奥にしまった。
パイン:「アリス、すごいじゃないか。」
アリスは、鼻高々に答えた。
アリス:「でしょーーーっ!!」
そして、2枚目のメダルを入手すると、
ズールの屋敷へと戻った。
屋敷を出ると、外はすでに日が落ち始めていた。
ジェイル:「もう日が暮れる、3つ目のメダルは明日にして
今日は、屋敷に戻ろう。」
パイン:「そうだな。」
サール:「そうしますかね。」
アリス:「はーい。」
そしてジェイルの屋敷へと戻った。
屋敷の談話室で、5人は席を囲んでいた。
ジェイル:「今回入手できたメダルがこれだ。
見て判るとおり、ドラゴンの絵が描かれている。
反対の面は魔法文字だ。
2個目のメダルと思ってもいいだろうな。
あと1つのメダルを入手できたとき
あの扉の先へ行けるということだろうな。」
サール:「そうですね。
あの先に一体何があるんでしょうか?
気になって眠れませんよ。」
ジェイル:「私の予想では、そこに従僕の剣があると
思っている。
そして、私はドラゴンマスターになれる。」
パイン:「ところで、ドラゴンマスターというのは?」
ジェイル:「いや、これは、私のつけた名前だ。
精霊魔道士の達人をマスターと呼ぶだろ。
それで、ドラゴンマスターにしたんだよ。」
パイン:「なるほどな、ジェイルらしいや、、、。」
そういって、パインは笑った。
その後5人は、メダルで開ける部屋の話で盛り上がった。
夜も更け、ジェイルの屋敷に泊まる事となった。
パインは、夢を見ていた。
暗闇の中だった。
何か声のような音が聞こえる。
注意深く音のする方向へと進んで行く。
「パ・・・、ど・・・の・・・。
・・・よ、ここ・・・て、、、。」
パインには、その声を聞き取ることが出来なかった。
その声はかぼそく、そしてあまりにも小さかった。
C:「無事2つ目のメダルを入手できましたね。」
A:「ですね、それにしても、仕掛けが無いというのは、、、。」
C:「まあ、私がそこに行ったら、何かありそうだなと
思うので、持ち上げてみようとは思わないですね。
あれは、アリスだからこそ出来たのかもしれない。」
A:「なるほど、天然のアリスだからこそなんですね。
ところで、パインの夢って、、、。」
C:「あぁ、それは、秘密ですね。」
A:「秘密なんですか、、、。ちょっとだけ教えて、、、。」
C:「Aさんの後ろに"秘密"と書かれたプラカードを持った
作者が立っていますよ。」
A:「えっ、判りました。
この話はもうやめましょう。」




