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魔獣の壺 - 本編 -  作者: 夢之中
英雄の誓い
28/99

シェリルの記憶1

幼い頃から魔獣王討伐を志すパイン。

世界でただ1人の召喚士に選ばれ、魔獣王を倒すことが

その使命だと悟ったアリス。

自分を英雄と疑わないジェイル。

そして、成り行きでそれに同行するサール。

彼等の旅は、まだ始まったばかりだった。


連合暦20年4月1日、

天馬の尻尾亭でいつものように朝食をとっていると、

ジェイルが現れた。

そして、パイン達と同じテーブルに座ると考え込んだ。

ジェイルは、パイン達と仲間にはなったが、屋根裏部屋の

寝起きを拒否したため、毎朝通っているのだ。

たぶん、屋根裏部屋という響き、

そして、何よりも狭いというのが、許せなかったのだろう。


アリス:「おはよーーっ、ジェイル。」

パイン:「おはよう。」

サール:「おはようございます。」

ジェイル:「・・・。」

ジェイルは、何かを考えているのか、

腕を組んだまま固まっており、返事をしない。

アリスがジェイルに近づくと、つんつんと突いた。

しかし、ジェイルは、反応を示さなかった。

そして、おもむろに、わきの下をくすぐった。

ジェイル:「うひゃひゃひゃひゃひゃ。」

ジェイルが身悶えて、椅子から転げ落ちた。

ジェイル:「なにをするんだ。

     まったく、、、。」

そして、立ち上がり、再び椅子に座ると真剣な顔で言った。


ジェイル:「シェリルを覚えているか?」

パイン:「ズールの屋敷にいた彼女か?」

ジェイル:「あぁ、そうだ。」

パイン:「彼女がどうしたんだ?」

ジェイル:「少しづつ記憶を取り戻し始めたんだが、、。」

パイン:「おぉ、それは良い事じゃないか。」

ジェイル:「いや、それが、そうでもないんだ、、、。」

パイン:「?」

アリス:「どういうこと?」


3人は、ジェイルの真剣な顔が珍しいのもあり、

その話に耳を傾けた。


最初は、例の魔法陣の件だった。

そう、ドラゴンの骨が存在していた場所へ続くと思われる

魔法陣についてだ。

その魔法陣は、血の刻印がされており、血族がいなければ発動

しない魔法陣だった。

彼女とパーティーを組んだ上で、その魔法陣へ向かったのだが、

魔法陣が発動しなかった。

これは、彼女が血の刻印の血族ではないことを意味していた。


サール:「彼女がズールの子供では無いということですか?」

ジェイル:「いや、それは分からない。

     あの魔法陣は、血の刻印がされていたが、

     ズールの血族かどうかは分からないんだ。」

サール:「なるほど、そう言うことですか。」

アリス:「?」

パイン:「どういうことだ?」

サール:「これは3つの可能性がありますね。

    1つ目は、血の刻印がズールのものであり、

    彼女がズールの血族でない場合。

    2つ目は、血の刻印がズール以外の者であり、

    彼女がズールの血族である場合。

    最後は、血の刻印がズール以外の者であり、

    彼女がズールの血族でもなく血の刻印の血族でも

    無い場合。

    ということになりますね。」

ジェイル:「あぁ、そういうことだな。

     まあ、この件に関しては、想定内だったんだがな。」

アリス:「じゃあ、悩む必要ないじゃない。」

ジェイル:「問題は、彼女の話した内容なんだ。

     それが、記憶なのか、

     あるいは何らかの記録を読んだり聞いた記憶なのか。

     それが問題なんだよ。」

そう言って、ジェイルがそれについて話し始めた。


ジェイル:「彼女が言うには、魔獣王との戦いは、

     過去にもあったらしい。」

パイン:「えっ?

    なんだって!!」

ジェイル:「まあ、黙って聞け。

     世界は、六界で構成されていると言われている。

     これは、知っているな?」

パイン:「神界、魔界、幻獣界、精霊界、魔獣界、人間界

    だったっけ?」

ジェイル:「あぁ、そうだ。

     遥か昔、世界は3つだったらしい。」

アリス:「3つ?」

もし漫画だったら、アリスの頭の上に”?”が無数に存在して

いたことだろう。

そして、ジェイルは神話と思える話を話し始めた。


元々、この世界には何も無かった。

そこに1人の創造主が現れた。

創造主は、世界を創るに当たり、2人の神を創った。

1人が創造の神、もう1人が破壊の神。

2人の神は、あまりにも強大な力を持っていたため、

創造主は、神界と魔界を創り、

その場所から世界を造り始めさせたらしい。

最初は、神界、魔界、人間界の三界だったということだ。

創造と破壊を繰り返し、世界は段々と今の形に近づいていった。

いつしか、その強大な2つの力がぶつかり合った中から、

幻獣が生まれた。

このとき他の生命は存在していなかった。

創造の神は、生命を作り出すため、精霊を創った。

破壊の神は、それを無に返すため、魔獣を創った。

幻獣は、それを見守る傍観者だった。

精霊は、木々や動物を創った。

魔獣は、それを破壊した。

その繰り返しが続けられた。

そして、精霊、魔獣、幻獣の力が交じり合うことによって、

人間が生まれた。

人間は、精霊に組する者、魔獣に組する者、傍観する者に

分かれた。

この時は、創造と破壊のバランスが取れていたらしい。

人間は次第に知恵をつけて行き、どうやったかは分からないが、

精霊に組する者が幻獣を味方につけた。

そして世界のバランスが崩れ、人間、精霊、幻獣と

魔獣の戦いが始まった。

魔獣は、幻獣の力によって創られた魔獣界へと封じ込められた。

この力を見た創造主は、2人の神に匹敵する力をもった幻獣を

危険だと判断し、幻獣界へと追いやった。

この時、幻獣はいずれ訪れるであろう魔獣との戦いのために、

ドラゴンを創った。

精霊と人間の世界が始まり、世界は安定してゆくかに見えたが、

人間が自分の欲の為に破壊を始めた。

精霊は破壊を嫌っていたため、人間の近くから遠ざかるように

なっていった。

人間もそれを理解し、その地域を聖域と呼び近づかなかった。

そして、何千年もの歳月がながれた。

人間達は、同じ種族で争いを繰り返しながら

知恵を蓄積していった。

そして、ついにドラゴンを従える業を作り上げ、

さらに破壊を加速させていった。

最初は聖域と呼び、人間達が自ら侵入を禁止していた場所をも

壊し始めた。

精霊達は、創造の神に精霊界を創ってほしいと懇願した。

これに応え、精霊界を創り、精霊を避難させた。

こうして、六界が創られた。

この後人間は、六界を繋ぐ魔法陣を作ったそうだ。

この魔法陣によって、精霊と幻獣を呼び出す力を手に入れた。

しかし、人間の中には魔獣を信仰するものが存在した。

この人間達が、魔獣界と繋ぐ魔法陣を作り、魔獣王が降臨した。

この戦いは、壮絶を極めたらしい。

幻獣が幻獣界に追いやられたために、本来の幻獣の力が

出せなかったからのようだ。

そして、多数の召喚士やドラゴンの命と引き換えに

魔獣王の封印に成功した。


ジェイル:「まあ、こんな話なんだが、、、。

     この封印時の話が断片的にだが、

     神話とかと違って妙に詳細なところがあるんだよ。」

パイン:「たとえば?」

ジェイル:「そう、封印の儀式の直前とかなんだが、

     たとえば、魔法陣を描くのを見ていたとか。

     魔獣の攻撃で、天井が崩れたとか、、、。」

パイン:「へー。」


サール:「神話についても、初耳ですね。

    私の知っている神話では、

    最初から六界が存在しているので、

    我々の時代の神話ではなさそうですが、、、。」

ジェイル:「あぁ、そうなんだ。

     これは創作かもしれない。

     しかし問題は、そこではなく、何故彼女が

     それを知っていたのかということだ。」

サール:「なるほど、ズールの居た時代、

    たかだか100年前ならば、同じ神話、

    あるいは、両方の神話が伝わっていても

    おかしくないと言いたいんですね。」

ジェイル:「そう、両方の神話が伝わっていても、おかしくない。

     しかし、この神話は、私が調べた限り、

     存在していない神話なんだよ。」

パイン:「面白いな。

    こういう話って、なんだか、わくわくするよな。」

ジェイル:「そこでだ、アリス。」

アリス:「んっ?」

ジェイル:「今の話、シロも聞いてただろ?

     シロの意見を聞きたい。」

アリスは少しの間沈黙すると口を開いた。

アリス:「んーーっ。

    ノーコメントだにゃぁ。

    だそうです。」

ジェイル:「むむむ・・・。」


ジェイルは、少し考えると、また話し出した。

ジェイル:「そこでだ、ズールの屋敷から持ってきた

     資料から複数の古代遺跡の場所が特定できたんだが、

     そこに行って見ないか?

     今話した神話やドラゴンのこと、

     それに、召喚士のことについても

     何か分かるかもしれない。」

サール:「それは、おもしろそうですね。」

パイン:「あぁ、そうだな。おもしろそうだ。」

アリス:「古代遺跡観光、いってみたーい。」

そう言って、アリスが右手の拳を突き上げる。

ジェイル:「観光じゃないんだけどな、、、。

     まあ、それはいい。

     今回の件については、シェリルの記憶を

     取り戻す目的もあるんだ。

     なので、シェリルも同行してもらうつもりだ。」

パイン:「なるほど、そう言うことか。

    俺は問題ないよ。」

サール:「私も問題ないです。」

アリス:「なーい。」

ジェイル:「よし、それならば、私の屋敷へと向かおう。

     シェリルはそこに待たせてある。

     そして、ズールの屋敷から飛ぶ。」

パイン:「えっ?、ズールの屋敷からだって、、、。」

パインは嫌そうな顔をしたが、アリスに押し切られ、

渋々承諾した。

そして、4人はジェイルの屋敷へと向かった。

C:「お久しぶりです。Cです。」

A:「本当に久しぶりですね、、、。

  もう次章書かないのかと思っちゃいましたよ。」

C:「まあ、作者にも都合があるみたいですので、

  大目に見てあげて下さい。」

A:「さて、次章ですが、流れ的にシェリルの話なんですか?」

C:「さぁ?どうなんでしょうね?」

A:「章タイトルが"英雄の誓い(仮)"なので、

  もしかしたら、ジェイルの話ですか?」

C:「あぁ、章タイトルは、仮なので変わるかもしれないとの

  ことです。」

A:「なーんだ、、、。」

C:「まあ、書きながら考えていることもあるので、

  許してあげてください。」


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