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[15]トイレのトラブル続く[16]ハイテク機器導入[17]宇宙戦艦ヤマト2号は凄かった


[15]トイレのトラブル続く


宇宙戦士によって、トイレの平和はもたらされた。

とはいかず、トイレは依然として詰まったままで、一向に改善の兆しが見えなかったのである。

それにしても便器と便槽を繋ぐパイプの中にも木の根っこが入り込んでいて、それが原因で水やものが流れないのかも知れないという宇宙戦士の見解を聴けたことは、色んな意味で事態を大きく前進させてくれた。

つまりパイプの便槽に近い部分に根っこがはびこっているとすれば、それを尖った棒ではなく

棒の先に布の塊のようなものをつけて根っこを根こそぎ押し出せば、パイプはスッキリと貫通する筈である。

そして後は、マンホールの周りに除草剤をばら撒いておけばその再発は防げるわけだ。

つまり問題は根こそぎ解決ということになる。

今思えば妻が細長い棒でツンツンやってるときに、棒の先が何かに刺さり、そのなかをズビズビと潜って行ってる感触があると言っていたことを思い出した。

それなら全ての辻褄が合うわけで、僕はその対策として、思案の挙げ句にこのように考えた。

つまり、根っこを押し出すにしても布の塊ではバキュームで吸う時に詰まる可能性があるから、その代わりにティッシュをボールくらいに丸めてそれを棒の先で突けば根っこは押し出されパイプの詰まりは解消されるはずだと。

早速やってみることにした。

これには娘の愛鈴(アイリーン)も加え3人での作業となった。先ずは今まで使っていた棒では長さとしなりが足りないということで、暗いなか山の中を探し回った挙げ句に3㍍くらいの土用竹を切り出してきた。

「ティッシュは出た?」

「竹だけ出た」

「ティッシュは?」

「出ん。水が少し出た」

こんな様な会話が何度も何度も繰り返される。

娘は双方の連絡役として奔走した。

いくら大声を出しても意思の疎通がなかなか難しかったのだ。何度も何度もティッシュの塊を突き続けた。たまにティッシュらしきものも便槽の方に出てきたが、直ぐにパイプに水が溜まりだし詰まりが解消することはなかった。

夕食後に始めた作業は一向に進展しないまま深夜に及び、僕は朝まででもやりたい気持ちだったが、妻と娘が音をあげた。

一人で出来る作業ではない。断念せざるを得ない。

やはり僕も途方に暮れていた。

パイプのなかは一体どうなったのか。

何故詰まったものが出てこない。僕のなかで謎は深まるばかりだ。

その時ふと、やはり宇宙戦士が言っていた言葉を思い出した。「どうしても詰まりが解消しないようでしたら特殊な機械があることはあります。少しコストが高くはなりますが」

彼はこちらの費用のことまで気遣っていた。

宇宙戦士の好感度は高まるばかりだ。 

もうそれしか残されていないように思われた。

明日頼んでみよう。


ところで山荘に台風が接近中だ。

雨の日の山荘も霧に包まれてなかなか乙なものだが、ものが台風となれば話は別だ。

ここは山奥深く入っているため、土砂崩れや倒木で道路が寸断されることもしばしばで、一度寸断されると復旧作業は直ぐには期待できない。なにしろ人里離れた交通量のほとんどない林道である。作業が一番の後回しになるのも仕方のないところだろう。

早く山を下りねば!



[16]ハイテク機器導入


狸狐庵山荘のトイレのトラブルに、いよいよハイテク機器が導入された。先ずはドランクドラゴンの塚地と鈴木に似た二人が軽トラに乗ってやって来た。

ふたりはマンホールの蓋のところからは見えない、パイプの出口と思われるところに蛇腹状の太い管をあてがい、その中に胃カメラよりは随分大きな内視鏡を挿入する。

いよいよ謎に包まれていたパイプの中の全貌が明らかになるわけだ。少しワクワクする。

カメラはゆっくりと蛇腹状管を通りパイプの入口にさしかかる。大腸ファイバーで見る大腸内に酷似している。入口からほんの少し入るとカメラの視界はいきなり黒っぽい網のようなものに遮られた。

明らかに根っこの塊だ。

内視鏡の頭は小さな(サカズキ)くらいあるが、押し込めば通らないことはなさそうだ。

「もう一寸奥に入れてみて」

「入るかなあ、あ、入る入る」

更に奥で内視鏡が写し出したのは、根っこに絡んだティッシュの塊の残骸だった。

「あれ?なんだろう、これ」

鈴木は怪訝そうに内視鏡の画面を見ながら言う。

「いやいや、私がティッシュの塊を押し込んだから」

すかさず僕は、言い訳をするように言った。

「根っこはやっぱりパイプにこびりついてる?」

「そうですねえ。かなりしっかり根を生やして、くっついてるみたいですねえ」

やっとのことパイプの中の様子を知ることができた。 棒で突いて一時的に根っこの塊に穴が開き、多少の水が流れたとしても、棒を抜けば根っこの穴はふたたび閉じて、パイプに水が溜まりだす。しかも根っこはパイプに完璧に付着していて少々のことではびくともしない。

そのうえ押そうが引こうが髪の毛のように自由自在になびいてて、まさに暖簾に腕押し状態だ。

やはり敵は不死身のモンスターだったのだ。 

さあ、それでどうするか、ということだ。

鈴木は塚地と何やら相談している。

僕の方は宇宙戦士の言っていた『特殊な機械』とは一体何なんだろうと、それの登場をこころ待ちにしていた。

ところがである。鈴木と塚地は相談のすえ、長くて細い棒のようなものはないでしょうか、と僕に聞く。

それなら私が昨夜使ってたやつがここにありますよと言いながら例の土用竹を渡すと、それで昨夜我々がやってたのと同じような作業を二人して始めたのである。

結果は大概分かっていたが、なにしろ彼らはプロなのである。少し放っておくことにした。

15分くらいして見に行ってみると、彼らは竹のほうはそこら辺に放り出しておいて、鈴木の方がマンホールの淵に頬っぺたを着けるようにして便槽の下の方に手を伸ばして何かをやっている。観ると細長いノコギリをパイプの出口の方に突っ込んで、こびりついた根っこを切ろうとしているのだった。まさかこれが、宇宙戦士の言ってた特殊な機械でもあるまい。

彼らはそれを何度も何度も繰返し、時々ノコギリを過って便槽の中に落としたりすると、紐の先に付けた磁石を垂らしてノコギリをくっつけ、それを回収する。

「なかなか、頭脳プレーだねえ」

僕がからかうように言うと、塚地が照れて笑う。

感じのいい若者たちだ。

「電動の金ブラシみたいなものがあればいいんだけどねえ」と僕が当てずっぽうなことを言うと、

「あー、そうですねえ。高圧の洗浄車が居たらなんとかなるかもしれませんけどねえ」

「そんなものがあるの?それなら根っこは取れそう?」

「取れるは取れるでしょう、凄いパワーですから。下手するとパイプも割れるくらいいきますよ」

「へー、そりゃ凄いねえ。それやって貰おうか。今すぐ呼べるの? 」

「4tトラックですからねえ。ここに入りますかどうか」

「この前来たバキュームカーが4tだったから大丈夫。ゆっくり入るでしょう。で費用はいくらくらいかかるの?」

僕が気になるのは常に金のことだ。

「いやー、高圧洗浄車を動かすだけで1万5千円かかりますからねえ。作業賃も入れて全部でいくらくらいかかるのかなあ。ちょっと聞いてみなきゃ分かりませんなあ」


そんなこんなで、とうとう4tの高圧洗浄車のお出ましとなったわけだ。

それは正に、我々にとって『宇宙戦艦ヤマト2号』と呼ぶに相応しいハイテクカーだった。


台風12号が高知県に上陸した。

上陸したにしてはあまりに情けない。

ごく普通の雨がしとしと降るばかりで風なんかほとんど無い。

おまけに時々晴れ間まで覗く。どことなく事前の防災対策の作業が空しくおぼえる。

テレビのニュースなんかによると台風の中心から遠く離れたところの方が風雨が強いみたいだ。逆に言えば目がやたらと大きな台風なのかも知れない。

被害にあわれた方々には心からお見舞い申し上げます。不謹慎な言動をお許しください。

どちらにしても台風なんてもううんざりだから、どうかお願いだから来ないで頂戴!

狸狐庵山荘からのお願いです。



[17]宇宙戦艦ヤマト2号は凄かった


早速塚地が自社に電話し、高圧洗浄車という僕達にはあまり耳慣れない作業車を呼び寄せることとなった。

30分くらいかけて下界からやって来た『宇宙戦艦ヤマト2号』は荷台のタンク部分がバキュームカーより少し角ばった印象だが、全体的な違いはあまり感じさせない。

2号の戦士は1号のそれにくらべ、少々軟弱そうなイメージがある。お笑い界で例えるならサバンナのボケ担当高橋と言ったところか。


作業は早速始まった。水圧を徐々に上げて行き、その結果を内視鏡で確認するという方法で行われ、それが何度か繰り返された。

一度に水圧を上げてこびりつた根っこを一挙に取ろうとすると、その水圧でパイプが破損する恐れがあった。

4度目くらいの洗浄で根っこのほとんどは除去されたようだ。鈴木と高橋が言ってた通りその水圧の威力は凄まじく、便槽の方からは金属音に近いような甲高い音と煙のような水飛沫が飛び散っていた。

作業はほぼ完了したように見えた。ところが最後の1本、それも水圧で樹皮を剥がされモヤシのように真っ白くなった1本だけが、ひょろひょろと内視鏡に映し出されるのである。

「なんかスッキリしないなあ。あの一本だけがどうもねえ。なんとかしたいねえ」

「もう少し水圧上げて、もう一度やってみましょうか」

鈴木もそのもやし1本が気になるようで、水圧を上げて再度洗浄してみたり、またノコギリで伐ろうとしたが暖簾に腕押しそのもののもやし1本は、遂に剥がされることはなかった。

そしてこれはもう除草剤で息の根を止めるしかないということになり、鈴木、塚地、高橋の3人の戦士たちは山を降りていった。


その後僕は強力な除草剤を買い込み、マンホールの周りと例のパイプのモヤシ向けて多量に散布した。更に、神経を病んだ人のようにそれを何度も何度も繰り返した。

こうして狸狐庵山荘のトイレ騒動は漸く決着をみたのである。宇宙戦士を初め関係者の方々、大変お世話になりました。

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