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偽装された異世界召喚〜喚ばれて早々用済みになった俺は、最強の偽装能力で魔神に復讐する〜  作者: 石畑サン輔
第三章 夢と過去

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60話「また会おう」


 新たな服をゲットし、再び街へ。

 下を向くフラメアと並んで、中央通りを歩いていた。


「なぁ、あれって──」

「軍のフラメアか? いつもと雰囲気が違うぞ」

「隣にいるの、噂の英雄様じゃない? 少しカッコイイ……かも?」


 帝国民のざわめきが聞こえてくる。

 どうやら、相当注目されているようだ。

 そりゃそうだろう。オシャレした美人は自然と目立つ。


「もっと早く歩け。ノロノロ歩くな!」


「いやあ、チヤホヤされるって滅多にないからさぁ。つい」


「魔神倒したのお前じゃねぇだろ。調子乗んな」


 フラメアがうざったいと言いたげに睨んできた。

 その通りだから、反論はできないな。

 

 俺の体に乗り移った悪魔。

 彼なのか彼女なのか知らないが、見事に魔神を撃破してくれた。

 その間の記憶はないし、実感もない。

 

 それでも英雄扱いされて、感謝されているんだ。

 応えないのも失礼だろう?


「はぁ……どうしてあたしが、こんな……」


「──あ、姉上?」


 と、先を行っていたフラメアの足が止まる。


「ル、ルル、ルシアン……!?」


 正面を見てみると、目を見開いたルシアンがいた。


 


 

「──それで一体、何をしていたのだ」


 呆れた顔で、ルシアンはため息を吐いた。


 お昼時、俺たちは高級そうな飲食店に入店。

 テラス席に着いて、今は頼んだ料理を楽しんでいる。

 俺は熱々の謎ステーキにフォークを突き刺した。

 

「ただの散歩だよ。暇つぶしのな」


「そうか、ただの散歩か。ホッとしたぞ」


 簡潔な説明だけで、ルシアンは頷いてくれる。

 彼は恐ろしく優しい男だ。

 ここの料金も持ってくれるというのだから。

 

「こ、こいつが無理やり着せてきたんだ! ほら、これを着ないと殺すってな!」


 フラメアがバンとテーブルを叩く。

 何を笑顔で、変な嘘をついているんだ?

 あんなに自分から着たがっていたくせに。


「アメハル、お前は案外恐れ知らずなのだな……」


「はあ? 誰もそんなこと言ってないって」


 ひと口サイズのステーキを頬張った。

 俺はただ、正直な感想を言っただけだ。

 

「お前の姉、意外と可愛いもの好きだって教えとく」


「いいや、驚かん。父が死ぬ前はお淑やかな性格だったからな。むしろ、久しぶりにこんな姉上を見られた」


「……え? マジ?」


 彼女がお淑やかな性格?

 こんな男っ気のある口調と振る舞いで?

 思わずフラメアの方を見てしまう。


「もぐもぐ……軍人として、適した振る舞いを覚えただけだ」


 鍛えたとかいう問題なのか。

 本当にお淑やかだったのか……とても信じられない。


「それより、どうして散歩でホッとしたんだ?」


 ルシアンは何故か胸を撫で下ろしていた。

 散歩に安心できる要素とかあったか?


「あぁ、姉上とアメハルが恋仲になったかと」


「「──ぶふぉ!?」」


 口の中にあったものが吹き出た。

 コイツ、いきなり何言ってくれてんの?


「お前が兄上になるかと思うと、気が気でなくてな」


 済ました顔で気持ちの悪いことを言い放った。

 俺とフラメアは身を乗り出す。


「ごほっごほっ……! 誰が! こんな奴と!」


「そうだぞ! 笑えない冗談やめろって!」


 俺を初対面で脅してきた奴だぞ。

 恋仲になるとかありえない。


「あぁ!?」


「え? いや、なんで俺……?」


 意見が一致したのに、フラメアは俺を睨んできた。


「無しと言われると、逆にムカつく」


 もう無茶苦茶だろ。

 反論するのも面倒なので、大人しく椅子に座り直した。

 理不尽すぎる怒りに、思わず肩を落とす。


「それはさておき……アメハル。授与式の準備はできたか」


「準備?」


 皇帝陛下に会うためにも、この格好に着替えた。

 他にも何か必要なものが?


「貴族の作法は……知らなそうだな。くれぐれも、そんな服で陛下と会うなんてことはするなよ」


「ダメなのこの服!?」


「当然だ。みすぼらしいにもほどがあるだろう」


 自分なりに真っ当なチョイスだと思ったんだが。

 謁見するには、いかにもな礼装が必要になるらしい。


「まぁ、この服も今後着続けるつもりだし、いいか」


「……授与式が終われば、この帝国を去るのか?」


 ルシアンは少しだけ寂しそうに目を伏せた。


「多分な。アスタフィア王国に戻るか、もう一体の魔神の所に赴くか。レイネ先生の方針に任せるよ」


 短い間だったが、帝国とはお別れだ。

 ある程度の準備をしたら、速やかに出国する。

 フェイルノートの対策も考えなくてはならない。


「帝国を北上すれば、トネリク聖王国があるな。道中は平原が多いから、大した苦労はしないだろう」


 ルシアンは料理を口に運ぶ。

 険しい道のりにはならなそうだな。

 もう一体の魔神がどこにいるかわからない以上、しらみつぶしに各国を回ることにはなりそうだが。


「なんなら、あたしが護衛くらいしてやろうか?」


 フラメアは頬杖をついて、悪戯っぽく笑う。


「遠慮しとくよ。帝国はただでさえ人手不足だろうしな」


「ま、それもそうか」


 返答がわかっていたように、フラメアは軽く頷いた。

 

 しばらく沈黙が続く。

 無心で昼食を食べ終え、すみやかに店を出た。

 食後の運動も兼ねて、また街を歩くことにした。


「……アメハル、ありがとう」


「え?」


 隣で歩くルシアンが、急にそんなことを言ってきた。

 お礼をしたいのは俺の方だ。

 特に金銭の面で頼りきりで、感謝しきれない。


「ここまで立ち直れたのは、間違いなくお前のおかげだ。アメハルがいなければ、どのみち死んでいただろう」


 どことなく、嬉しそうだった。

 会う前はルドたちに虐められていたルシアン。

 あの時と比べて、彼は実に清々しい顔をした。


「いつでも頼ってくれ。それに応えられるよう、いつでも屋敷の部屋は空けておくからな」


 差し出された手を見つめる。

 出会った頃の彼なら、こんな表情で手を差し出すことはなかっただろう。


 帝国に来て、初めての友人。

 俺は迷わず、その手を握り返した。


「……頼もしい限りだ。ありがとう」


 ルシアンには頑張ってほしいものだ。

 フラメアにあんな啖呵を切ってしまったしな。

 相応の男になると信じているとも。


「父の仇も討てたし、コイツのフリして学園にいたことも許してやるよ」


「あぁ、ありが──って、え、知ってたのか!?」


 前を歩くフラメアは、してやったりと笑った。


「ふん、やっぱりな」


 まんまと不意を突かれたな。

 いつからバレていたんだ?

 偽装の精度が甘かったのか。


「ひとまずは、これで不問にしてやる」


 フラメアは極めて優しい力で、俺の頬に拳を当ててきた。


「ほら、帰るぞルシアン」


「ちょ、姉上! また会おう。くれぐれもお大事にな」


「……あぁ、また」


 先を行くフラメアを追いかけるように、ルシアンは手を振って去っていった。


 その後ろ姿をしばらく見送ってから、俺は街の雑踏へ戻るのだった。

 

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