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bird servant  作者: 真琴
9/18

file.6-No.2

続きを知りたくてまごまごしている方は少ないかもですが、頑張って早めに投稿。



雰囲気出すのって難しい……、ということを実感した回です。

「……黒鴎?」



表情はいつもと変わらない。だが、黒鴎の目には苛立ちが浮かんでいた。

……珍しい。枢木はそう思った。

良く考えたら最初から黒鴎の対応はおかしかった。まず依頼人を来客用のソファに誘導していない。黒鴎はいつもの指定席である椅子の腰掛けていて、依頼人は立ったまま。なんともちぐはぐである。そんな状態であるからして、コーヒーなど飲み物も出していない。

また、黒鴎はあまり口を開こうとしていなかった。後から考えれば、むしろ口数を少なく務めているように感じれた。

加えてこの不機嫌そうに苛立ちをあらわにしている顔。明らかに、この依頼人に何かある。枢木は黒鴎をそんな顔をさせている元凶を見た。

女子大生は動揺するわけでもなく、変わらずにこりと笑っていた。だが、黒鴎の言葉を聞いてからは逆に仮面をつけているように見えて、逆に気味が悪くなった。



「そんなくだらない依頼をしに来たわけではないのでしょう。言いたいことがあるなら早く言っていただきたい」



黒鴎は少し息を吐き、そう告げる。すでに女子大生の瞳を見ていなかった。

対するほうも、その態度は特に気にしていないらしく。考えるようなそぶりで、自身の頬を指でつついていた。



「んー、やっぱり通用しませんかぁ。……では素直にお聞きしますね」

「そうして頂けると余分な時間を割かずに済みます」



黒鴎の言葉を機に、言葉づかいが変化した。

若い女性特有の相手にこびるような甘い感じではない。小馬鹿にしたようなところは変わらないが、敬語で少し突き放したような雰囲気だ。

ふっと。ほんの少しだが、黒鴎に似ている。そう感じた。

窓から射す光が、彼女の顔をよく映した。



「オーナーさん。私と手を組みませんか」

「組み手なら基本の型程度にしかできませんが」

「そう言う意味じゃないですよ。あなたならこの世に刺激を与えることができる。あなた自身も分かっているはずですよ」

「刺激……?」

「バイトくんは思ったことない?この世はあまりにも平凡でつまらなさすぎる。刺激的なことが起こらないかなんて」



思ったことなどない。とは言えなかった。なにしろこのバイトを始めたのも、普通のところと違って「面白そう」だったからという理由からだ。

枢木が答えないのを肯定と捉えたか。例えば、と女子大生は続けた。

だがその言葉を聞いて、枢木は吐き気がせり上げた。



「公共施設に大量殺人者の投入。それとも公共交通機関を事故を装った爆破でもしてみますか。あと大金を乗せた現金輸送車の襲撃、なんてのも面白そうじゃないです?」

「な………!?あんた何考えてんだ!!」

「言葉どおりのことを」



枢木の言葉に女は人差し指を口元当て、とぼけたように返答した。

女はあらためて黒鴎に向き直る。そして手を差し出した。まるで言葉どおりに手を組むのを求めているかのように。



「どうですオーナーさん?悪い話ではないと思いますけど」



黒鴎は彼女の顔を見、差し出されたその手を一瞥する。そして視線を女へと戻した。

そして。



「そんなもの興味ありません」



あっさり女の申し出をを切り捨てた。



「何がしたいのか目的がさっぱりわかりませんが。あなたに付き合わされる人は可哀相だということはわかりました。その前に、相手がいないでしょうが」

「そんなことないですよ、酷いこと言いますね。付き合ってくれた人はいますよ。もう壊れ気味ですけどね」

「壊れ気味……?」

「そうなんですよ。すごくまめに働いてくれるいい人だったんですけどね。やっぱりいくら邪魔でも配偶者である奥さんを始末したのは失敗しました。配偶者の不幸は一番心に負担がかかるとは知ってはいましたけど、まさかあそこまでとは。それからはもう使い物になりません、これでもすごく困っているんです」

「なるほど。壊れたらその方はもう用済みで、今度は私に乗り換えようという考えですか。あなたも人のこと言えないのでは?」

「一時でも良い夢見れたからいいじゃないですか。こっちとしては感謝して欲しいぐらいですよ」



攻撃的な音が静かな空間に突然沸いた。机が大きく震える。枢木が力任せに叩いたのだ。

その瞳に見えるのは、怒り。その矛先は笑みを浮かべる魔女に。



「人間を……人に命を何だと思ってるんだ!」

「あれ?バイトくんは熱血属性ですか。面白いぐらい偽善な言葉を吐くんですね」

「テメェ……ふざけんな!!」



枢木が女に向かって拳を振り上げる。だがその手は黒鴎によって止められた。枢木は驚いて黒鴎を見る。

何故止める。その問いは何故か喉に詰まって出てこなかった。

それはきっと。黒鴎が自分の数倍も、憤りを感じているように見えたからだ。



「あなたが手をあげる必要はありません」

「あれあれ。オーナーさんの方はフェミニストですか?」

「御冗談。時間の無駄だからです」



レンズの奥に覗く瞳が、女を見据えた。



「この店の趣旨には反しますが、あなたの依頼はどうやら私たちではこなせそうにありません。お帰り頂けますか」

「引き受けて下さらないんですね」

「はい」

「とても残念です」



しゅんとしょぼくれたリアクションを取った。

だが枢木の目には、それは滑稽なただの演技にしか映らなかった。それほどまでに、女の外見は薄っぺらで、そして本心はどろりと不透明で何も分からない。

すると突然、女は横にあった手を後ろに組み替える。それに合わせて、持っていたバックがくるりと回る。



「じゃあ今日は退散しますね。次来た時にはきっと、オーナーさんの気持ちが変わってるかもですから」

「いつ来ても変わることはありません」

「そうとは思えませんね。ではその時はバイトくんを貰いましょう」

「おおいいぜ、そん時はそのまま警察に突き出してやるよ。いい刑事知ってっから」

「わお。怖い」



女は扉に手をかけ、少し開けただけで動きが止まった。



「あ、そう言えばまだ名前言ってなかったですよね」

「今後会う予定のない方の名前を聞く趣味はありませんが」

「そんなつまらないこと言わないでくださいよ」



笑って話し続けるその時の彼女の瞳は真っ黒。決してきれいとは言えず、そして底が全く見えなかった。



「私は結城美帆乃(ゆうきみほの)です。名字、名前、好きな方で呼んでください」

「……『bird servant』の黒鴎昴です。私の名を二度と呼ぶことは無いでしょうが」

「……枢木(みのり)。悪いけど俺もアンタは嫌いだ」

「随分と嫌われてしまったみたいですね。でもきっと、会うことになりますよ。どんな形かはわかりませんけどね」

「そうですか」

「はい。ではまたお会いしましょう?」



そう言い残して、女は結城美帆乃は扉の奥に消えていった。

不吉な、予感を遺して。

とうとう主人公2人の名前が……!!

ちなみに。枢木くんのお名前の読みは女の子っぽいですが「みのる」ではなく、「みのり」です。黒鴎さんの名前の読みは普通に「すばる」です。平凡ですんません、名づけセンスは0です。



結城美帆乃という女性はこれから彼らにとってキーパーソンになる予定です。私の文才があれば!!(笑)ちなみにこの子は特に名前を考えるのにすごく苦戦していたのは此処だけの秘密。



ここまで読んでくださってありがとうございます!!

感想は随時受け止め体制万全です(笑)

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