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地味過ぎるスキル《復元》が世界を救うようです  作者: mask


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5/5

修行と復活と

 そこからは早かった。

 ダンジョンに潜る合間に《復元》の魔法の研究が始まり、イザベラは両目を取り戻した。


 しかし、それ以降は何度もやってもイザベラが《復元》しない。

 理由は簡単だった。

 アリアの魔力が圧倒的に足りない。

 両目から次の復元をしようとしても疲れ切ってしまうのだ。

 だったらとイザベラが提案したのが修行だ。

 この世界では訓練したり、魔物を倒すとレベルアップして魔力量が上がるらしい。

 早速、イザベラ式の訓練が始まった。


「まずは腕立て伏せだ!」

「はいっ!」

 

 そう言われて寝転がるアリア。

 だけど今まで魔物との戦闘は避けて来たし、イザベラと出会って来てはお願いしていた。

 つまり非力なのである。


 仕方がないので膝突きの腕立て伏せが十回出来ただけでも褒められる。

 

 その後も腹筋背筋を十回ずつ。

 素振りもイザベラの重たい剣を借りての二十回でヘトヘト。

 魔力量どころか体力をつけるのも一苦労だった。


 それからは午前中は訓練。

 午後はダンジョン探索で弱い魔物と戦ってみたり。


 数ヶ月経つとダンジョンの遺品も魔物も一掃され、イザベラのために夜の間に移動して別のダンジョンの攻略を始めたりもした。


 いつしか魔力も増え、壊れたダンジョンの壁の修繕や怪我をした小鳥を助けられるようにもなった。


 そして一年の月日が経った。


「いきますよ」

「ああ、やってくれ」


 もう十個目のダンジョン。

 イザベラに鍛えられて成長したアリアはイザベラの両手を握る。


「《復元》」


 繋がれた手から今までにない光が放たれる。

 それは眩く、イザベラを包み込む。


「おおっ!」


 骨の手に筋組織がつき、血管に筋肉、皮膚までもがまさに《復元》されていく。

 それは手だけじゃない。

 前腕に二の腕に肩に胸に腹に背中に腰に股関節に太ももに脹脛(ふくらはぎ)に脛に爪先まで復元されていく。

 そしてアリアは顔をあげる。

 そこには骨じゃない。

 美しい女性の顔があった。


 今度こそ人類の《復元》が成功したのだ!


「イザベラさん」

「ああ」

 

 イザベラは肌のある手をニギニギ。

 背中や胸に足先まで見ていく。


 どこにも骨なんてない。


 頬にも触れるが、固い感触ではない。

 柔らかい人肌だった。


 剣を抜く。

 一年前のように刃に映る顔を見る。


「久しぶりだな、この顔を見るのは」


 フッとイザベラから笑みが溢れる。


「これを着てください」

「ああ、すまない」

 

 イザベラはそこで自分が全裸だったことに気付いた。

 もう何年も骨だったのでマントに身体を包み込み、今更ながらに頬を真っ赤に染める。


「わくわくし過ぎて服のことまで考えていませんでしたね」

「そ、そうだな。それに少し肌寒い」


 そこでイザベラは寒ささえも感じていられることに感動する。


「ああ。私は本当に蘇れたんだな」

「はい。ついにやりましたね、私たち!」

「なあ、アリア」

「なんですか、イザベラさん?」

「この力を使って世界を救わないか?」


 世界。

 とても大きく出た言葉だった。


「世界だなんて。私にはーー」

「いーや。君ならやれるはずだ」


 ポンとイザベラはアリアの肩を叩く。


「魔王との戦争で早百年。人類は負け続けて後退した。そこで数多くの勇者や英雄が散っていった。だがしかし、君が彼ら彼女らを蘇らせればあるいは人類は救われるかもしれん。どうだ? やってみないか?」

「で、でも」


 アリアの魔法は凄い。

 だけどアリア自身は勇者でも英雄でもない。

 スラム出身の少女だった。

 世界を救うなどといった大それたことが出来るとは少しも考えてはいなかった。


「だったら世界は構わない。ただ、私の騎士団を救ってはくれないか?」

「それなら、まあ。イザベラさんにはお世話になりましたし」

「そうか! やってくれるか! ありがとう、アリア!」


 こうして二人の長い長い旅が始まったのでした。

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