第1話いきなり断罪
第1話 いきなり断罪
(あれ?ここは?)
「聞いているのかフランチェスカ、今までの貴様の横暴、目に余る」
(あ、断罪)
周りを見渡すと学生然とした人々が並び、ドレスで着飾った令嬢たちが口に扇子を当てて囁き合っている。
「善良なるリリアを貶めんと画策し、時に如何わしい噂を流し、時に事故を装い危害を加えんとする、淑女にあるまじき数々の愚行、まさか知らぬとは言えまい」
(私が…フランチェスカ…?)
卒業式、断罪、悪役令嬢、ピコーン。
(あー、これ、断罪されて死ぬやつだ。)
(でも、こんな型通りの断罪、浴びるほどラノベを読んだ私には初心者向けのパズルみたいなものよ。)
「恐れながら、このフランチェスカに発言をお許しいただけますでしょうか?」
胸を張る。堂々とする。どんなにピンチでも逆転するチャンスはある。冷静に、その一点を探し、機会を窺う。
「なんだ」
「私、フランチェスカは確かにリリア様を貶めんと如何わしい噂を流しました。事故を装い危害を加えようとしました」
「罪を認めるんだな」
(食いついた!)
大衆を振り返る。
「罪!皆さま、お聞きになりましたか?私の行いが罪だと言うのであれば、リリア様がして来られた事は大罪ではございませんか?」
今までただの観客だと思っていたのに、急に当事者になりざわつく。
(いいのいいの、こう言うのは派手にやった方が引っ掛かるの。リリアがゴミをちゃんとゴミ箱に捨てなかった事さえ大罪よ!)
「え?」
この場を仕切る、フランチェスカを断罪した男の横で小さく怯えたフリをする少女が驚いた顔でフランチェスカを見ながら声を漏らす。
(私を吊るし上げて来た男、多分この国の王子ね、その横に明らか悪役令嬢に虐められて来たような顔をしてるのがきっとリリアだわ。)
(急に我が身に火の粉が降り掛かって来て驚いてる。でも、もう私のターンよ)
「皆さまには家門を守ると言う使命がございます。私から声を上げるように言った所で無理な事は承知しております」
「それでも、私が断罪されたとて、皆さまの心のうちに誰が正義で、誰が悪かを刻み付けていただければ十分でございます」
「言うに事かいて皆の心のうちで判断しろなど、恥ずかしげもなくよく言えたものだな。誰も貴様の味方などおらぬ」
「果たして本当にそうでしょうか。リリア様とて決して聖女ではございません。夜、女神様に祈り懺悔をした事もあるでしょう」
(もう一押し、誰かが口火を切ってくれれば)
その時、いかにも下っ端風の男が一歩前に出た。皆の耳目が男に集まる。
一歩踏み出したものの、フランチェスカを擁護する事によるデメリットを考え二の足が踏めないようだ。
ここは、急かしてはいけない。あくまで、この男に委ねる。
ほんの30秒ほどの沈黙が1分にも10分にも、1時間にさえ感じる。
改めて辺りを見回すと、会場の端には一段高い観客席があり、いかにも為政者然とした男が座って見下ろしている。
(この中ではこの男が一番上ね。であればこの男を納得させれば、勝ち)
「畏れ多くも、クライド子爵家子息、ニルスに発言の機会を」
(来たー!)
ピク。
この場を仕切る男の頬が少し引き攣った。まさか自分に意見する者がいようとは思わなかったようだ。
重圧を跳ね除け、助け舟を口にした男にもちろん見覚えもない。
「発言を許可しよう」
「ありがとうございます、レオンハルト殿下。フランチェスカ様の行為すべてを否定する訳ではございません。ただ、私はフランチェスカ様に助けていただいた事があるのです。その時の事は父も覚えています。そして、いつかグランツ公爵家に危機が訪れた時にはご恩をお返しするように言われています」
「なんの事はない、単に気まぐれの善行だっただけだろう」
(うん、分かる。単に助けてもらった報告。私に罪がない理由にはならない。けれど、発言する、と言う行為そのものがこの場面をひっくり返す力を持ってるはず)
「お待ちください。私にも発言の機会をください」
どこかの令嬢の発言を機会に、会場がざわつき始める。耳をすませば口々にフランチェスカ様は、フラン様はと話し始める。レオンハルト王子はその言葉に分が悪くなったと感じたのか、早々に切り上げようとする。
「ええい、分かった。今回は不問とする。これでよいだろう」
(待ちなさい、今は私のターンよ!)
「お待ちください、殿下。私の事は不問としても、皆さまの思いは別にあるようでございますよ。もしかすると、リリア様に思い当たる事があるのでは?」
今まで大人しく悲劇の主人公然としていた令嬢の顔が赤味がかった。
「うるさいうるさい、あんたのどこがいいのよ。単に公爵の娘だからってちやほやされて、多少の罪は見逃して貰えて、レオンハルト様とだって親が決めただけでレオンハルト様に相応しくないのよ!」
(ようやく登場人物の相関関係とか地位が分かったわ。でも、もういい。私の勝ちは確定してるから、あとは今後のためを思ってちょっと懲らしめるか)
「リリア様、ようく分かってらっしゃるのね。レオンハルト様はこの国を代表するお方のご子息、つまり将来はこの国を代表される方。子供の頃からそのように学び、ご成長なさっています。そして、私達令嬢もそれは同じです。王妃となった際には同様の目で見られると言うことを認識しなければなりません」
「例えば国賓として外国を訪問する際に殿下と並んで立った時、殿下に間違えて脚を踏まれたらどうなさいますか?」
「脚を踏んでいる所を誰も見ていないのに、殿下を責めますか?それとも、ニコリと微笑んで仲睦まじく国が1つであると思わせますか?」
最後は一段上にある観客席の男に向かって言った。既にレオンハルトもリリアも敵ではない。この男さえ納得させればいいのだ。
「勝負ありじゃな」
「父上!」
レオンハルト王子が異論あり、と叫んだ。しかし公の場である事を思い出し、言い直す。
「国王陛下!」
言い直したところでもはや何も覆らないのは明白だった。
そこまでの記憶しかない。気づけばワンルームのベッドに寝転がってさっきまで観ていたはずの動画の続きを見ていた。1秒も経っていなかった。
(ふー、危なかった!)
(一体何なのよ、いきなり断罪なんて危なっかしい。)
皆さま、最後まで読んでいただきありがとうございます。
読むのと書くのとは大違いですね。
推敲を重ね過ぎ不足分を脳内チェスが補完している為、ボリュームも思った以上に少ないし分かりずらい部分も多々あるかと思いますが、そこは皆さまにテンプレで補完していただければと思います。
一言でもコメント戴けると嬉しいです。
それでは次回作もよろしくお願いします。




