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星辰の魔法使い

「もう、潮時だな。」

もはや実感すら持てないほど、私の身体は透明になっていく。

だが、長いようで短い星の命が最後の最期で力を振り絞って光り輝くように、私の魔力は昂っていた。

「行って……しまいましたよ。」

私は水晶越しに、遠くにいる“その人“に言葉を投げかける。私の魔力量を持ってしても、数分も持たないだろう。

「そうですか……こちらの魔力がもう少しでも使えたなら、そっちにいくこともできたかもしれないのですが………」

「あなたはそんなことをしている場合ではないのでしょう?刻一刻を争う苦労の中で、本当に尊敬しますよ。」

少しの静寂がすぎ、言葉が投げかけられる。

「どうでしたか、彼は。」

「えぇ、すごくいい子ですよ。あの子なら、私が見いだせなかった美しい魔法を見つけられるかもしれません。」

「#####ですね。」

私の魔力が切れていくのと同時に、魔法通信が途切れそうになる。

「これで、お別れみたいです。」

最期の会話を続けるため、私はありったけの魔力を注ぎ込んでいく。

「あとは、私に任せてください。」

「頼みます………」

「メルぺディアのことではなく、あなたのことですよ。」

その言葉に、私は少しだけ目を見開く。

「あの時に見せてくれた魔法、もう一度使ってみてください。」

「残念ながら、そんな魔力は残っていないんですよ。」

「だとしてもやりなさい。」

厳しい言葉に、「ははっ」と声を漏らす。相変わらず手厳しいな。

………どうせもう終わりなのだ。あの人の言う通りにしてみよう。

「それじゃあ、お願いします。

━━━━━━━師匠。」


私の命の灯火が、消える。


その刹那、魂の奥底で、あの人の声が確かに聞こえる。


『超律臨界魔法━━━━━━━━━━━━━』



あぁ、まただ。また気を遣わせてしまった。


『あの子を支えてくれて、ありがとう。』



感謝するのは、私の方ですよ。

あなたのおかげで、私は今を生き延びてきた。


そして今も、私の運命に抗う手助けをしようとしてくれている。


これで、“史上最恐の魔法使い“の人生にはピリオドが打たれる。

しかし、私の運命はたった今、大きく道を変えた。

さぁ、約束を果たすための準備に取り掛かろう。





━━━━史上最恐の魔法使いと言われた彼女は、星の輝く空の下、丘の芝生に座って口を開いた。

『あなたならわかっていると思うが、私も呪いを持っている。』

今までは“お前”と呼ばれてきたが、その人は私のことを“あなた”と呼んだ。

そこにどんな感情の変化があったのかはわからないが、その人は続ける。

『“現牢の呪い”。そう名付けたこの呪いは、私の存在を今この瞬間に縛り付ける。

過去へ巻き戻せばやり直せるだろう。そんな言葉を、私は何度聞いたか覚えていない。

自分でも、何度も思った。

もしも過去に戻れたら………踏み外した道を正せたら………そんなことを、幾度となく考えた。

実際、私が作った時間移動の魔法は実に数百にも上る。

世界の時間を巻き戻すものから、個人の時間を戻すもの。

しかし、その中の一つとして私の思い描く通りの結果になったものはなかった。

自分以外の人間を過去に戻そうとしても、世界はそれを許してくれない。

私が作り出した魔法では、私の運命を変えることはできないのだ。

それが嫌で、私は星彗魔法を作り出した。

嫌だったというよりも、この今が全てだということに気づいただけなのかもしれないが………

だからと言って、私以上の魔法使いなど、私は知らない。』

彼女が言い終わった時、私は問い返した。

『本当は、知っているんじゃないですか?あなたを超えるたった1人の魔法使いを。』

その言葉に、彼女は小さく笑う。

『やはり、わかるか。』

『もしもの話で、確証はありませんでしたが。』

『あぁ、そうだ。私は私を超える人物を知っている。ただ、あなたは少しだけ勘違いをしている。

………私が生きてきた人生の中で、私を超えることができるのは1人ではない。2人だ。』

深蒼の瞳を光らせながら、彼女は言い切る。

『もしかしたら、あの子には苦しい思いをさせてしまうかもしれない。それでも、止めないでおいてくれないか。』

『あなたがそこまでおっしゃるのなら………わかりました。』

私は、彼女が何を言いたいのかを理解した。

『そうなったら、あなたはどうするんですか?』

『きっと、大丈夫だ。』

瞳の奥、確かにそこに存在する彼女の安堵と覚悟。

それを見て、私は頷く。

不思議なことに、この人の目には相手を納得させる不思議な力がある。

『もう時間もないから言うが………私の弟子を頼んだぞ。ルーベルナ。』

空を見上げて呟いた彼女の横顔から目を離し、私も空を見上げる。

『またいつか、彼に会ってあげてください。

こんな、星空の下で。』

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