旋律/ 菜園 / 星まつり / 砂糖 / 待ち人
《 お題 》
〔美しい人〕です。〔カタカナ語禁止〕かつ〔キーワード「楽譜」必須〕で書いてみましょう。
【旋律】
神秘的な黒曜石の瞳。
艶やかな珊瑚の唇。
光る真珠のような肌。
宝石箱に隠された珠玉の連なりを僕は楽譜に写しとる。
俗な景色を映す窓。
つつましやかな家具。
陰気でくすんだ部屋。
僕の指先から生まれる美しい彼女がこの現実を色彩で満たす。
空気を震わす彼女の声に包まれて僕は今日も夢を生きる。
《 お題 》
「昼の浴室」で登場人物が「待つ」、「月」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【菜園】
僕は昼に湯船に浸かる。
浴室からは市民菜園が見渡せたせるから。
大きな窓の切り取る青い空にはクレヨンで描いたような白い月。
その下に広がる緑の畝。
のどかな景色に四肢を伸ばして。
こうしていつも、楽しげな母親と小さな息子が来るのを待つのだ。
ふやけた皮膚のような過去を、眺めるために。
《 お題 》
「夜の神社」で登場人物が「始める」、「星座」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【星まつり】
高く聳える杉に囲まれた神社の境内の中央に立ち夏の夜空を見あげた。
雲のない満天の星空。
闇を埋め尽くすほどの輝き。
しんと張った夜気を切り掲げた右手で震える星を繋いでいく。
僕だけの星座を作るのだ。
この空を巡る物語を紡ぎ僕の歴史を記録するために。
年に一度の誰も知らない星まつりを始めよう。
《 お題 》
〔悲鳴がきこえた〕です。
〔句読点以外の記号禁止〕かつ〔味の描写必須〕で書いてみましょう。
【砂糖】
口に広がる鮮やかな甘み。
この魅惑的な味わいを知ったとたん誰もが虜になった。
程なくしてこの味が、多くの虜の過酷な労働によってもたらされることを知った人々は、このひと匙に悲鳴がきこえたと口々に謗る。
白い悪魔、とそれを呼んで。
《 お題 》
「昼のレストラン」で登場人物が「すれ違う」、「指」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【待ち人】
ランチタイムになってもこのレストランはすかすかで、まさかすれ違うとは思えない。
手持ち無沙汰に両手の指を何度も組み換え、ウィンドウから車道を眺めた。
今しも崩れそうな灰色の空に溜め息のような枯葉が舞っている。
伝票を手に立ちあがり座り直す。
「珈琲を」諦めきれない指先が注文をだす。




