喜怒哀楽の情景
《 お題 》
『だいたいそんなかんじ』をお題にして140文字SSを書いてください。
【喜】
熱くも温くもない紅茶を飲んで、固くなりかけのトーストを齧る。
壁の時計をちらりと眺め、慌ててネクタイを締める。
これまでと同じ。
だいたいそんなかんじで始まる毎日。
変わったのはきみがそこにいるってこと。
朝食の味も、忙しない時計の音も同じはずなのに。
鮮やかに日常を彩る君の声。
君の存在。
《 お題 》
『本』と『最初』を使って140字SSを書きましょう!
【怒】
最初から最後まで僕はその本が気に入らなかった。
まず、文体。キャラクター。筋書き。全て。
ここまで不愉快なものも珍しくて、僕は最後まで読み切った。
心に残ったのは時間を無駄にした腹立たしさ。
こんなにも僕の心を動かしたこの駄作は、
ある意味、傑作なのかもしれないと、
読み終えてから苦笑した。
《 お題 》
〔かなしいひと〕です。
〔モノローグ禁止〕かつ〔温度の描写必須〕で書いてみましょう。
【哀】
混雑するレストランの中央に、彼女はいた。
深い哀しみをその身に湛えて。
暖かな光を注ぐシャンデリア、
柔らかな音楽、
賑やかな談笑がさんざめく中、
彼女だけが濃い灰色に塗られ、そこだけ凍てついた影が舞う。
まるで魂を忘れて来たかのような彼女の虚空に吸い込まれ、
彼は目を逸らす事が出来なかった。
《 お題 》
「深夜(または夜)の神社」で登場人物が「開く」、「ほくろ」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【楽】
深夜の神社の鈴の向こう。
蒼い光と影の格子模様にほんのり浮かぶ白い脚。
古ぼけた引き戸がきしきしと悲鳴を上げ、その音に、女の肌がびくりと跳ねる。
黄泉比良坂を転がるように、開かれた白に手を伸ばす。
黄泉の供物を食せば戻れぬと警鐘が鳴る。
滴る水蜜桃の肌。
抗えぬ、揺れるほくろの常世の快楽。