クリスマスに寄せて
《 お題 》
「夕方の事務所」で登場人物が「抱く」、「手品」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【手品】
「残業ご苦労さん」
茜色の窓をバックに社長が笑う。
「夕食を奢るよ」
カラカラとワゴンを押し入って来た執事風の給仕が、慇懃な仕草で銀のクロシュをそっと開けた。
静寂が弾け、無機質な事務机の上を駒鳥が舞う。
「メリークリスマス」
掌に舞い降りたフードボックスに、抱いていた不満が笑顔に化けた。
(ダニエル・メリアムの絵から着想。手品の単語使っていないので題にしました)
《 お題 》
「早朝の屋上」で登場人物が「頭を撫でる」、「糸」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【クジ】
バーゲン初日のデパートの屋上で私は一人泣いていた。
「ここにいてね」お母さんは帰って来ない。
ふわりと大きな手が頭を撫でた。
涙の向こうには赤鼻ピエロ。
「はい」と糸を渡してくれた。
お空の上には七色の風船。
「当たるかな」
くいっと糸を引くと、お母さんが釣れた。
パチッ、ピエロがウインクする。
《 お題 》
『飛翔』と『光』を使って140字SSを書きましょう!
【聖夜】
寒い夜道を肩を竦めて歩いていた。
灯りの消えたままの冷たい部屋に帰る為に。
石畳に靴音だけが陰気に響く。
誰もいない部屋のドアを開けた途端、
眩しい光の乱舞の中から飛翔する天使が降り立ち出迎てくれた。
「メリークリスマス」
賑やかなかけ声に唖然とし
「メリークリスマス」
思わずそう応えていた。
《 お題 》
『喉が渇いた』を最初に使ってSSを書いてください。
【プレゼント】
喉が渇いた。
そう呟いたのは、この狭い部屋を出て賑やかな街へ出かけたかったから。
それなのにあなたは台所へ引っ込んだ。
パンっと威勢良い音。
溢れ出る泡。
注がれる金色。
小さな卓袱台に置かれるショートケーキとコンビニチキン。
「これ買ったら金がなくなった」
そっと出されたプレゼントは指輪かな?
《 お題 》
〔昔の話をしてほしい〕です。
〔モノローグ禁止〕かつ〔「明かり」の描写必須〕で書いてみましょう。
【昔の話】
暖炉の傍に置かれた肘掛椅子が指定席。
私はお婆ちゃんのお膝に頭をのせる。
テーブルランプと炎がぶつかり合って幾つもの影を作る中、
窓の外にはちらちらと白い雪。
夕食後の聖なる夜のお話の時間に
「お婆ちゃんが子供だった頃、天使に逢ったお話をして」
私は毎年同じ話をねだる。
繰り返される悠久の時。




