予兆 / 錯覚 / 耽溺 / 後ろの正面 / 未送信メール
《 お題 》
『黎明』と『虹』を使って140字SSを書きましょう!
【予兆】
黎明の空に掛かる虹は雨の予兆。
彼は地平線を彩る朝日の中、ぼんやりと浮かぶ虹を眺めてため息を吐く。
栄華を極めたこの国はいつの間にか潤いを忘れ乾ききっていたのかと。
あの虹が空気に溶けると同時に始まる、全てを押し流す浄化の雨に如何程のものが残るだろうか?
預言者たる彼に何ができるのか。
《 お題 》
『空が青いね』を最初に使ってSSを書いてください。
【錯覚】
「空が青いね」と僕は言い、
「そんなもの錯覚よ」と彼女は言った。
「どこまでいっても空は透明なのに、光の屈折で青く見えるだけ。あなたが私を好きだと言うのと同じ。どこまでも透明な私に、あなたは勝手に色をつけるの」
膨れる彼女の頬に僕はさらりとキスをした。
「僕色に染まる君が見たいんだ」
《 お題 》
〔いらない愛〕です。
〔句読点以外の記号禁止〕かつ〔「声」の描写必須〕で書いてみましょう。
【耽溺】
息苦しい程の彼の接吻に、彼女は堪らず喘ぎ声を上げ。
花から花からへと揺蕩う彼。
偽りの愛で飾り付けた優しい嘘を唇に刻み、想いは脱ぎ捨て剥き出しの欲望で、甘美な蜜を絡め取る。
刹那の官能の海に溺れ、言葉を忘れ、呼吸を忘れ、終には心まで忘れ果ててしまうほど。
虚ろに響く彼の睦言は甘く切ない。
《 お題 》
「早朝のデパート」で登場人物が「さめる」、「人形」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【後ろの正面】
開店前のデパートの床掃除が私の仕事。
目の覚める様な取り取りの舶来品の間をぬって、私はせっせとモップをかける。
パタパタと小さな足音が駆け抜ける。
かけたばかりのワックスに残る小さな痕。
思わず辺りを見回した。
くすくす、くすくす。
棚の上、金の巻き毛の人形の靴裏に残る黄色い染みと刺激臭。
《 お題 》
『未送信メール』をお題にして140文字SSを書いてください。
【未送信メール】
貴女への溢れる想いを文字に変え、メール画面に打ち込んだ。
荒ぶる波が僅かに凪ぐまで。
気が済むまで。
毎日毎日繰り返した。
届ける事すら出来ない想いを電子の墓場に屠るために。
メールの数だけ叶わぬ欲を重ねていた。
想いの軌跡を綴っていた。
その時は、きっといつか笑って消す日が来ると信じていた。




