彼方 (残酷な友人シリーズ2)
《 お題 》
『指』と『猫』を使って140字SSを書きましょう!
【許し】
柔らかな草の上で猫の様に伸びをする君の、
髪についた草の葉を僕はそっと取り除いた。
君は起き上がると僕をちらりと眺めすたすたと歩き出す。
何も言わない君に僕は俯いたまま。
坂を下った処で怒った様に君は振り返った。
「来ないの?」
僕は満面の笑みで駆け出した。
「ごめんね」
君は只鼻先で嗤うだけ。
《 お題 》
『甘やかせる権利』をお題にして140文字SSを書いてください。
【権利】
皆、僕が彼に甘いという。
もっと躾けなきゃロクなもんじゃないぞ、と僕を脅す。
そんな言葉はどこ吹く風。
僕に擦り寄り喉を鳴らす彼。
僕だけに甘える彼。
柔らかな銀の毛並み。月光の瞳。
彼に選ばれた僕。
彼と一緒にいるのは義務じゃない、権利だよ。
彼を甘やかせる権利を持っているのは、僕だけなんだ。
《 お題 》
『途中』と『奏でる』を使って140字SSを書きましょう!
【調べ】
学校へ向かう途中彼を見かけた。
川辺に掛かる低い枝に腰掛けて。
「遅刻するよ」
僕の声に、彼は人差し指を唇に当てた。
何かに耳を澄ます様に。
僕も目を閉じて耳を澄ます。
小川のせせらぎに、風の揺らす樹々の葉擦れの、自然の奏でる音楽に。
友人達に背中を叩かれ引き戻された現実に彼の姿はもういない。
《 お題 》
『君と僕の終末論』をお題にして140文字SSを書いてください。
【ラッパ】
「天からラッパの音が聞こえるんだ」
夜っぴいて僕たちはこの世の終末について語り合った。
一枚の毛布を二人で分け合い、天窓から覗く星の振り注ぐ綺麗な夜に。
終わりこそが始まりの目的、と、君は言う。
翌日、終末はあっけなく訪れた。
君の姿が消えた。
僕の前から。この村から。
鳴り響くラッパの残響。
《 お題 》
『彼方』と『悲しみ』を使って140字SSを書きましょう!
【彼方】
僕は胸にぽっかりと出来た空白を悲しみで埋めた。
他にどんな感情も入り込めない程隙間なく。
こうして月光色に染めて於けば、きっと君は僕に気付いてくれるはず。
月夜の晩に散歩するのが好きな君だもの。
僕はあの月の彼方へと腕を伸ばす。
もう一度君に逢いたくて。
何者をも顧みない、残酷な僕の友人。




