料理 / 缶コーヒー / 崖 / 境界線 / 穴場
《 お題 》
『だいたいそんなかんじ』をお題にして140文字SSを書いてください。
【料理】
料理自慢の母に教わった手料理を皆に披露して大盛況。私は鼻高々。でも、レシピを教えて、と言われた段ではたと困った。どう説明すればいいの? だばっ、どぼっ、ぼっ、で出来上がる。大体そんな感じ。皆、ああ、そうね、と苦笑い。ああ、良かった。解って貰えて。帰ったら母にお礼をいわなくちゃ。
《 お題 》
「深夜の公園」で登場人物が「迷う」、「コーヒー」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【缶コーヒー】
深夜の公園で、子どもが一人遊んでいた。ブランコでゆらゆらと。淡雪がふわふわと降る中で。僕は迷いながら公園の外れの自販機で缶コーヒーを買った。駆け足で戻る。「温まるよ」差し出されたそれをその子は不思議そうに眺め、ふっと空を仰いだ。釣られた僕が視線を戻すと其処にはもう誰もいなかった。
《 お題 》
〔伸ばした腕〕です。
〔「かぎかっこ」の使用禁止〕かつ〔「夜」の描写必須〕で書いてみましょう。
【崖】
月明かりに照らされる崖の上の小さな白い花が欲しくて少年は精一杯腕を伸ばした。母親に持ち帰ってあげる為に。今年初めて見つけた花だから必死になって崖を登った。春が来たよと伝える為に。薄昏がりの中を。もう春だから父さんは帰ってくるよ。窓ばかり眺め自分を見ない母親に只そう伝える為だけに。
《 お題 》
『大人』と『魚』を使って140字SSを書きましょう!
【境界線】
成人の日を控え、人魚は波の間を揺蕩い思案していた。その日を堺にいきなり子供が大人になるでもなし。月光の溶け込む金のとろみ。纏いつく柔らかな重み。人魚はやがて知ることになる。この優しく包む水中から一度空気に触れた時、人魚は人と魚に分かれるのだと。この水面が大人と子供の境界線だと。
《 お題 》
『当たりだね』を最初に使ってSSを書いてください。
【穴場】
「当たりだね!」君は頬を上気させ嬉しそうに僕を振り返る。透き通る水の中、魚影が通り過ぎる。せせらぎに深緑が影を落とす夏の午後。僕たちは岩場をそろそろと渡り川縁に着いた。ここはあいつが隠して、そのくせ皆に自慢していた釣りの穴場。顔を見合わせ笑い合い、僕たちは勇んで釣り糸を垂らした。