孤独 / 焦燥 / 朝 / 余韻 / 迷い
《 お題 》
「深夜のレストラン」で登場人物が「共有する」、「ビール」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【孤独】
深夜のレストランで、灯さえ消えてしまった表通りを眺めるフリをして店内を映す窓ガラスを眺めていた。静かな音楽と時間を共有する客席はまばらで、泡の消えた飲み残しのビールを前に居眠りする客や欠伸を噛み殺す客の姿に行き場のない僕は親近感と共感を覚えつつ、この空気をノートに書き綴っている。
《 お題 》
〔死に急ぐ君〕です。〔「!」の使用禁止〕かつ〔キーワード「心臓」必須〕で書いてみましょう。
【焦燥】
まるで生き急いでいるようだ、と君は僕を笑うけれど、僕から見れば君の方こそ。僕の心臓を鷲掴んだまま死に急ぐ君を僕は追い掛けているだけ。僕の目の前で命を危険に晒す事を楽しんでいる君に、僕の息の根は止まってしまいそうだよ。本当は君、僕を殺したいんじゃないの? そう思わずにはいられない。
《 お題 》
『幸福な朝』をお題にして140文字SSを書いてください。
【朝】
一晩中もがき苦しんで父は事切れた。鎧戸を開け、朝陽に照らされる歪んだまま固まった父の顔を眺めながら、僕は紅茶を淹れた。父に殺され続けた僕の感覚が徐々に息を吹き返す。初めて紅茶に香しさを感じ、喉を通り抜ける熱に身体がほっと温まる。爽やかな風が吹き抜ける、僕の幸福な朝の始まりだった。
(書いた後、自分で当惑したSS。過去一番、RT、ファボがあったのに、更に驚いた)
《 お題 》
『刹那』と『恋人』を使って140字SSを書きましょう!
【余韻】
廊下を行く僕の腕がぐいと捕まれ後ろに引かれた。階段脇の用具置き場に隠れるように佇む僕の秘密の恋人が、僕の唇を塞ぐ。この刹那こそが永遠。頭上で響く足音に、溺れる僕を一人残して何食わぬ顔で去って行く君。僅かに残る君の温もりが、今日一日僕を酩酊させるというのに。そんな事にはお構いなし。
《 お題 》
「夕方の廊下」で登場人物が「疑う」、「スーツ」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【迷い】
西日刺す廊下の端からスーツ姿の紳士が靴音を響かせ近づいて来る。僕は俯いて震え、手の中の銀貨を握り締める。拾ったんだ。でも疑われている。背中を冷や汗が流れ落ちる。この擁護院の庭にこんな大金が落ちている訳がない。これはあの人のもの。解っているのに僕の喉は声を発することが出来なかった。