曇天 / 贈り物 / うたた寝 / テロリスト / 灯り
《 お題 》
〔恋を忘れて〕です。
〔二人称(君、あなた等)の使用禁止〕かつ〔色の描写必須〕で書いてみましょう。
このお題二回目……。
【曇天】
女は郵便受けに合鍵をカチャンと落とした。いつ来ても主のいない部屋。掃除をしても、作って机に置いた料理も気付かれもしない。この空を覆うあの黒雲の様に、家族を失った彼の心も真っ黒に塗り潰されたまま。女は曇天を仰いで呟いた。私は恋を忘れたあの人の為に、黒雲に呑まれ青空を失うのは嫌なの。
《 お題 》
『誘惑』と『贈り物』を使って140字SSを書きましょう!
【贈り物】
高価な贈り物を要求され翻弄される求婚者達。けれど彼らの見返りは、労いの言葉と笑み一つ。報われないと気付きつつ、このレースからは降りられない。ライバルに向けた意地がある。そんな闘志に油を注ぎ、甘く吐息をつく美しい姫。誘惑よりも競い合い。貢がれ続けるその間は。愛より富をと我も望む。
《 お題 》
「昼のスーパー」で登場人物が「寝る」、「傷」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【うたた寝】
昼のスーパーのフードコートで僕はテーブルに突っ伏して寝ていた。傷だらけ、埃だらけの革靴を履いた足に何かが引っ掛かる。泣き声が響く。「すみません」僕は寝ぼけたままの頭を起こし何度も謝った。下げなれた頭を更に低く。クスクス笑いに顔を起こす。モップを持った可愛い娘が僕を見つめていた。
《 お題 》
〔たった一つの冴えた死に方〕です。
〔オノマトペ禁止〕かつ〔キーワード「手紙」必須〕で書いてみましょう。
【テロリスト】
ダイナマイトを身体に巻きつけ死んだ息子から届いた手紙。例え家族を盾に取られ強要された死であっても、迷惑をかける事しかできなかった不甲斐ない自分には、たった一つの冴えた死に方だ、と。馬鹿な息子。死んでまで私達を苦しめる。これから私達は、テロリストの家族と後ろ指を指され続けるのに。
《 お題 》
『あかりをつけて』を最初に使ってSSを書いてください。
【灯り】
「あかりをつけて」貴方は彼方へと腕を伸ばした。それが貴方の最後の言葉。無知な民衆を導き、無明のこの世に灯を点した貴方の一生。貴方の残した言葉の数々、貴方の生き方そのものが我々を導く灯りだった。啜り泣きの中、事切れた貴方の両手を胸元で組み合わせ、今なお闇を睨めつけるその瞳を閉じた。




