蜜柑 / 契約 / 運命 / 糸 / 散歩
《 お題 》
「夜のベンチ」で登場人物が「出会う」、「蜜柑」という単語を使ったお話を考えて下さい。
【蜜柑】
夜のベンチに座る僕の前を幾度となく通り過ぎていた男が、とうとう僕の横に腰を下ろした。男は紙袋から蜜柑を取り出した。ふわりと爽やかな香りが漂う。「お一つどうぞ」男の皺皺のごつい掌の上に小さな蜜柑。「どうも」受け取って皮を剥く。男は僕が食べ終わると立ち去った。懐かしい故郷の味がした。
《 お題 》
『やっぱり君が』を最初に使ってSSを書いてください。
【契約】
「やっぱり君が喋ったんだね」背中を向けたまま、彼はくぐもった声で呟いた。何の事か解らない。夕闇の迫る室内が急速に明るさを失っていく。「契約終了」くるりと彼は向き直った。彼の影が伸び広がって部屋を包んでいく。「知らない、俺は!」尖った角の生えた影が大きく割れ牙が覗き俺を呑み込んだ。
《 お題 》
『重なった偶然』をお題にして140文字SSを書いてください。
【運命】
もしあの日、僕と同じ様に君が窓の外をぼんやり見上げていなかったなら。寂しそうに小首を傾げていなかったなら。僕を見て微笑んだりしなかったなら。そして今日、ここで再会したりしなかったなら。重なった偶然に運命を見る事はなかったのに。君のいない未来を選ぶ事が出来たかもしれなかったのに。
《 お題 》
『消えてしまいたい』を最初に使ってSSを書いてください。
【糸】
消えてしまいたい…。そう願い続けていたら僕は本当に消えてしまった。そして、やっと気が付いた。初めから僕なんてどこにもいなかったって事。お天気の良い日に目を凝らして。見えるだろ、糸がきらきら光るのが。僕の身体の手足に結ばれた操り糸。空のうんと高い処、あいつが僕を動かしているんだ。
《 お題 》
『公園』と『挨拶』を使って140字SSを書きましょう!
【散歩】(英国紳士シリーズ2)
彼は蝙蝠傘を片手に軽く振りながら、毎日決まった時間に散歩する。騎馬像の前で鳩に餌をやり、ベンチに座る婦人に挨拶する。「良いお天気ですね」晴れの日も、雨の日も。雪の日も。婦人は彼が立ち止まり、ベンチに座ってくれるのを待っているのに。だからこの場所で読書するのに。雨雪の日は傘の下で。




