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来世の行く先  作者: 真昼の電灯
第1章 アルカディア編
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001話 落下、転生

志田秀(しだしゅう)、15歳。

僕は東京に住むしがない高校生だ。

今日は友達の彰人(あきと)と旅行で福岡タワーに遊びに来ている。

彰人「おい秀!見ろよ!すげー景色だな~」

僕が景色に目をやろうと思ったとき。

急に鳥の突撃(バードストライク)で窓が割れた。

割れた窓から強烈な風が吹き込み、展望室内に警報音が響き渡る。

秀「うわっ、マジかよ! 彰人、離れろ!」

ガラスの破片を避けながら、僕は彰人の腕を引っ張って窓際から距離を取った。周囲の観光客からも悲鳴が上がり、スタッフが慌ただしく誘導を始める。

彰人「おい秀、大丈夫か!? 急に鳥が突っ込んでくるとか、どんな確率だよ……!」

「とにかくここから離れるぞ! 警備員の人の指示に従って避難だ!」

僕たちは身を低くしながら、急いで非常階段の誘導アナウンスに従って走り出した。折角の福岡旅行が、とんでもないハプニングで波乱の展開になってしまった。

それだけなら良かった。

吹き荒れる暴風の中、展望室のパニックはピークに達していた。

「きゃあああっ! たすけて!」

割れた窓のすぐそばで、手すりに必死にしがみついている女性観光客の姿が目に入った。足元は既にガラスの破片で滑りやすくなっており、強風にあおられて今にも外へ投げ出されそうだ。

「秀! 危険だ、近寄るな!」

彰人の制止の声が耳に入ったが、僕の体は反射的に動いていた。

「くそっ、手をつかんで!」

僕は体を限界まで乗り出し、必死に手を伸ばす女性の腕を強く掴んだ。足を踏ん張り、渾身の力で彼女を safe な展望室の内側へと引き戻す。

「きゃっ……! ありがとうございます!」

女性が無事に床へ倒れ込むのを確認した瞬間、足元のガラス片が体重に耐えかねて派手に砕け散った。

「しまっ——」

踏み場を失った僕の体は、浮遊感と共に突風に乗って窓の外へと押し出された。

「秀——ッ!!」

上空から遠ざかる彰人の悲鳴と、急速に小さくなっていく福岡タワーの姿。視界一面に青空と福岡の街並みが広がる中、僕は猛スピードで落下していった。


「……痛っ。あれ、ここ……どこだ?」

地面に投げ出されていた身体を起こすと、手のひらに触れたのは硬いコンクリートではなく、青々と茂る見たこともない植物の感触だった。

見上げれば、青空に浮かぶふたつの太陽。巨大な樹木が立ち並び、遠くには幻想的な建造物が立ち並ぶ街並みが見える。ついさっきまでいた福岡タワーの面影なんて、どこにもない。

秀「嘘だろ……落ちて死んだと思ったら、異世界かよ!?」

手にしていたスマホを取り出してみるものの、当然のように「圏外」の表示。それどころか画面の時計まで狂っている。

途方に暮れていると、草むらの奥からザワザワと怪しげな足音が近づいてきた——。


「……君も、死んだのかね?」

突然、掠れた声に呼びかけられて振り返ると、そこには白い髭を蓄えた身なりの良い老人が立っていた。杖に寄りかかりながら、どこか穏やかな目元で僕を見つめている。

秀「あ、えっと……僕、福岡タワーから落ちて……。ここ、やっぱり死後の世界なんですか?」

老人はふっと優しく微笑み、首を振った。

老爺「ハッハッハ、死後の世界か。若い者の発想は面白いのう。だが安心してよい、ここは黄泉の国などではないよ。……いや、元の世界から見れば『死んだも同然』の場所かもしれんがな」

秀「どういうことですか? 太陽もふたつあるし、街の様子も全然ちがうし……」

老爺「ここは『異界』じゃ。そなたのように、元の世界で死の淵に立たされた者が、ごく稀に境界を越えて流れ着く果ての地よ」

老人は遠くに見える幻想的な街並みを指差しながら、言葉を続けた。

老爺「わしもかつて、この地へ流れ着いた一人でな。……だが希望を捨てるでないぞ、若者よ。ここにはここでの生き方があり、新たに出会う人々がおるのじゃから」


秀「転生ってことでいいんですか? それとも……ここは天国か地獄のどっちかなんですか?」

僕の混乱しきった問いかけに、老人は白くて長い髭をゆっくりとなでながら、穏やかに頷いた。

老爺「ふむ……『転生』という表現が、一番そなたの感覚に近いかもしれんのう。ここには天国のような清らかな場所もあれば、地獄と見紛うような過酷な地域もある。要は、これからお主がどう生きるか次第じゃ」

老人は杖をコトンと地面に突き、僕の目をじっと見つめた。

老爺「だがな、一つだけ確かなことがある。お主の心臓は今もこうして動いており、痛みも風の冷たさも感じておるじゃろ? ならばここは死後の幻などではない。血の通った、新たなる生を受け入れる大地なんじゃよ」

そう言われて胸に手を当てると、確かにトク、トクと力強い鼓動が手に伝わってきた。

秀「そっか……僕、まだ生きてるんだ」

老爺「左様。運命がそなたに二度目の機会を与えたのやもしれん。さて……これからどうするね、若者よ?」

ここから、僕の'2周目の'物語が始まる。

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