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第3話

★戦国武将×偉人★

混沌極める乱世で、少女が運命に抗うIf戦記。予測不能な異世界戦国時代の幕開け!

 大友家の九州平定の総仕上げ、島津討伐。

 日向国・高城川原にて、ついに両軍は激突した。先陣を切る立花軍の中に、私もいる。


「ひぇー、大友はえらい数じゃっど。こりゃあ、まともにぶつかったら一溜まりもんなか」


 遠く離れた敵陣。馬上に跨るひょろりとした体格の若武者が、のんびりとした薩摩弁で頭を掻く。

 島津軍の将は……島津家久か。


◆◆◆

【島津家久】

島津四兄弟の末弟。軍略の天才と言われ『家久がいれば関ヶ原の勝敗は分からなかった』と語られる程の知将。

◆◆◆


 いざ開戦してみると、島津の軍勢はひどく奇妙な動きを見せた。

 力任せに押し込もうとすれば側面から銃撃を受け、引けば絶妙な距離感で急所を突いてくる。まるで一つの生き物のように滑らかに動き、私たちの突撃をのらりくらりと躱していく。


「なんだあの部隊は! まともに打ち合う気がないのか!?」


 前線で指揮を執っていた三郎殿が、忌々しそうに舌打ちをした。


「少しずつこちらの陣形が間延びさせられている。このままじゃ各個撃破されてしまう!」


 宗茂殿も険しい顔で戦況を見つめている。

 私も前線で刀を振るっていたが、敵がすぐに引いてしまうため、得意の近接戦闘に持ち込めない。

 ……くっ、やりづらいな。


「これが天才の采配か……」

「捉えるのには時間が掛かりそうだね」


 じわじわと焦りが広がり始めた、その時だった。


『退けぇ! 道を空けい!!』


 後方から大音声が轟いた。

 振り返ると、立花軍の兵たちが左右に大きく道を開け、その後ろから数十人の男たちに引かれた巨大な鉄の塊が姿を現した。


「宗麟様直伝の新兵器! 今こそ、その威力を見せつける時ぞ!!」


 砲兵たちが巨大な砲身に火薬と弾を込め、火を放つ。

 天地がひっくり返ったかのように空気が震え、耳の奥に痛みが走る。なんて轟音だ。

 放たれた鉄の塊が、島津軍の陣形のど真ん中へ着弾した。

 凄まじい爆発と共に土砂が天高く舞い上がり、数十人の島津兵が吹き飛ばされる。


「こりゃあたまげた! あんなもん何発も撃たれたら、陣もクソもんなかど。……全軍、一旦退け! 森の奥まで後退じゃ!」


 土煙の向こうから、のんびりとした薩摩弁の号令が戦場に響く。

 その声と共に、島津軍は背後の深い森へと撤退を始めた。


「見たか! これが『国崩し』の威力よ!!」


 後方の本陣から、宗麟殿の愉快そうな高笑いが聞こえてくる。


「よし! 今こそ一気に押し潰せ! 全軍、追撃ぃ!!」


 圧倒的な火力の前に敵が逃げ出したと沸き立ち、大友軍の兵たちが怒涛の追撃を開始しようと一斉に前へ出た。


「よし、僕たちも続くぞ!」


 宗茂殿も太刀を掲げる。

 確かに好機だ。国崩しの火力も想像を絶するものがあった。あれを一度でも受ければ撤退を指示するのも理解できる。しかし、あの天才が、あんなにもあっさりと背を見せるだろうか?即撤退の判断を下せるのも才能とは言えるが……

 相手は島津家久。そうだ、彼こそが釣り野伏せの達人のはずだ!

 そうか、このタイミングで仕掛けるのか!!


「——待ってくれ!! 追っては駄目だ!!」


 私は咄嗟に、宗茂殿の前に立ち塞がった。


「雪夏? どうしたんだい、敵は崩れているのに」

「違う! これは『釣り』だ!」


  真っ直ぐに宗茂殿の目を見据え、言い放つ。


「釣りって、お前……明らかに総崩れしかかってるじゃねぇか!殿(しんがり)だって、あんなに必死に……!」


 三郎殿の言うことも至極当然。

 しかし、それこそが島津家の恐ろしさなのだ。


「そうだ、三郎殿!この島津の兵は『その作戦を知らず』に撤退戦をしているんだ!」

「あ、ありえねぇ……」


 息を呑む宗茂殿と三郎殿。

 島津家の強さの源は兵が死兵となって戦うこと。それ故に相手は撤退なのか作戦なのかを気付くことが出来ない。釣り野伏せの罠を防ぐことが困難なのだ。

 しかし、私なら……


「だからこそ、裏をかく」


ご覧いただきありがとうございます!

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