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走り出せ!エクストリーマー!  作者: 双鶴


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25/50

第25話 商店街を歩く

 土曜日の午前。

 春の光が商店街のアーケードに差し込み、

 看板の影がゆっくり揺れていた。


「じゃあ、行くか」

 俺――白峰理久は深呼吸した。


「緊張してる?」

 黒江斎が横目で笑う。


「そりゃするだろ。

 商店街全部に挨拶って、普通じゃないだろ」


「普通じゃないから面白いのよ」

 黒江は胸を張った。


 雨宮柊は、手に持った紙袋を確認していた。


「ステッカー、三十枚。

 お礼のカード、三十枚。

 あと、クラファンのQRコード入りのチラシ」


「準備完璧だな」

「はい。

 “誠意は形にする”って黒江さんが言ってましたから」


「言った覚えはないけど、まあいいわ」

 黒江は笑った。


 最初に向かったのは、

 クラファン開始前から応援してくれていた自転車屋だ。


「おお、来たか科学部!」


 店主は、俺たちを見るなり満面の笑みを浮かべた。


「クラファン、すごいじゃないか。

 商店街でも話題だぞ」


「ありがとうございます」

 俺たちは頭を下げた。


「で、今日は何しに?」


「挨拶です」

 雨宮がカードを差し出す。


「最初に応援してくださったお礼を」


「そんなもんいらんいらん」

 店主は手を振った。


「お前らの挑戦が見られるだけで十分だ。

 それに――」


 店主は俺の肩を軽く叩いた。


「白峰、お前、写真写りいいな。

 あれで客が増えたぞ」


「えっ、俺のせいで?」

「いい意味でだよ!」


 黒江が小声で言った。


「ほらね。顔は武器よ」


「言い方よ……」


 次は文房具屋へ。


「科学部ちゃんたち、いらっしゃい」


 店主のおばあちゃんは、

 俺たちを見るなり目を細めた。


「動画、見たよ。

 あんたたち、ほんとにいい子だねぇ」


「ありがとうございます」

 雨宮が丁寧に頭を下げる。


「これ、ステッカーです。

 よかったらレジ横に置いてください」


「置く置く。

 うちの孫も“科学部かっこいい”って言ってたよ」


 黒江が笑った。


「それは嬉しいですね」


「嬉しいだけじゃないよ。

 町の子が頑張るのは、町の誇りなんだよ」


 その言葉は、

 胸の奥にじんわり染みた。


 そして八百屋。


「科学部!

 これ持ってけ!」


 渡されたのは、

 大量のバナナ。


「え、こんなに?」

 俺が驚くと、店主は笑った。


「若いんだから食え食え。

 作業中に倒れたら困るだろ」


「ありがとうございます……!」


 雨宮が小声で言った。


「白峰くん、

 今日ずっと“ありがとうございます”しか言ってませんね」


「言うしかないだろ……」


 続いて喫茶店。


「科学部さん、席空いてるよ」


 店主はコーヒーを三つ出してくれた。


「これ、サービス。

 クラファンのページ、毎日見てるからね」


「毎日……?」

 黒江が驚く。


「そりゃそうだよ。

 町の子が挑戦してるんだ。

 応援しない理由がない」


 雨宮が静かに言った。


「……なんか、

 町ってすごいですね」


「すごいのはお前らだよ」

 店主は笑った。


「挑戦するやつがいると、

 町は勝手に動き出すんだ」



 すべての店を回り終えたころ、

 太陽は傾き始めていた。


 紙袋は空になり、

 代わりに応援の言葉が胸に詰まっていた。


「……すごかったな」

 俺は呟いた。


「すごいのは“町の温度”よ」

 黒江が言う。


「私たち、

 もう後戻りできないわね」


「後戻りする気ないだろ」

 俺は笑った。


「もちろんよ」


 雨宮がホワイトボードの写真を見せてきた。


「明日から、

 “技術の山”に戻りますね」


「山?」

 俺が聞くと、雨宮は言った。


「フレームの強度。

 まだ解決してません」


 黒江が真顔になる。


「そうね。

 町の応援に甘えてる暇はないわ」


 俺は深く息を吸った。


「よし。

 明日からは“技術編”だ」


 商店街の旗が風に揺れていた。


 町の温度を背中に受けながら、

 科学部は次の山へ向かって歩き出した。


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