第八十二話 運命の決戦
夜空には星々が瞬き、戦場を薄ぼんやりと照らしていた。信長軍と三好軍は一歩も引かずに激闘を重ね、戦場は緊迫感と激しさを増していた。
宗則は陰陽術を駆使して戦場の状況を把握し、騳虵を駆使して敵軍の動向を探り続けていた。
「信長様、騳虵からの報告が届きました。敵の動きが活発になっています。さらなる策が必要です」
信長は冷徹な目で周辺を見渡し、鋭い光を宿した目で新たな指令を発した。
「全軍、守りを固めつつ進軍せよ。敵の動きを封じ込めろ」
その指示が兵たちに伝わり、全軍が動き出す。防御を固めつつ敵の動きを封じる作戦が展開され、三好軍に対抗し始める。
その頃、宇佐山城でも激しい戦闘が繰り広げられていた。綾瀬の急報を受けた信長軍の援軍が奮戦し、森可成らの士気を支える。
「綾瀬、信治と茂綱殿の兵と共に援軍として加勢せよ」
信長の指示を受けた綾瀬は、宗則の元に急行し、宗則に京への指示を伝える。
「宗則様、信長様より京への指示が下りました。朝廷工作を行い、和睦の勅書を得てください」
宗則は決意を新たに京への道を急いだが、心には不安と迷いが広がっていた。
信長に仕える陰陽師である彼が、信長の力が及ばない場へ派遣されることにどれほどの意味があるのかという疑念が彼の内にあった。
「信長様の志を全うするためには、どんな手段も受け入れるべきなのだろうか…」
京に到着した宗則は、朝廷工作を行うために公家勢力に接触する。
「御上から和睦の勅書を賜りたい。信長様の意向に従い、平和をもたらしたいのです」
公家たちは冷静な目で宗則を見つめ、心中にある自分たちの思惑を隠しながら条件を提示した。この瞬間が天皇直属の陰陽師に彼を取り込む好機だと考えていたのだ。
「天皇直属の陰陽師として、我々公家勢力の力になることを誓いなさい。そうすれば勅書を出す手配をしよう」
その言葉を聞かされた瞬間、宗則の心の中には大きな葛藤が広がった。
信長に仕える身でありながら、天皇直属の陰陽師になることで、更なるしがらみが生じるのではないかという不安が彼を襲ったのである。
「信長様に背くことになるのではないか…」
彼の胸の内には不安と悩みが交錯し、その重みが彼を苦しめた。
しかし、信念を持ち続ける彼は、やがて決意を固めることにした。
「私は信長様への忠誠を持ちながら、この務めを全うしなければならない。公家勢力に取り込まれることで信長様の期待に応え、陰陽道の名を広めるのだ」
宗則は深く頷き、決意を込めて答えた。
「はい、天皇直属の陰陽師として公家勢力にお役に立つことを誓います。どうか和睦の勅書を賜りたく存じます」
公家たちの顔には思惑がうまくいったことへの愉悦の色が浮かび上がった。微笑みを浮かべる彼らの表情に、宗則は再び不安を感じた。
「これで我々の目論見は一段と強まるでしょう。御上も貴殿の陰陽道の力を期待している」
その結果、天皇から和睦の勅書が発せられることとなった。
一方、野田城・福島城の戦いでは撤退戦の準備が始まろうとしていた。信長は兵たちに命令を下した。
「柴田勝家、隼人、殿を申し付ける。我が軍の撤退を守りきれ」
勝家と隼人は深く頷き、決意を新たにした。
「はい、信長様。我々が必ず殿を務め、撤退を支えます」
兵たちは強固な決意を胸に、撤退戦を開始する。
三好軍の攻撃を受けつつも防御を固めながら、信長軍は退却を進めた。銃撃戦や剣戟の音が響き渡る中、血戦が続く。
信長も宗則の成功を信じながら撤退の指示を出し続けた。姿勢に迷いはなかった。
「全軍、我が命令に従い、無事に退却を続けるのだ」
撤退戦が続く中、信長軍は徐々に後退していく。その一方で、宗則は京の公家勢力から和睦の勅書を手に入れ、信長の元へ戻るべく道を急いでいた。
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