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4. 真相編

 真解と真実は一度家に帰ると、巻尺を持って戻ってきた(真実はズボンに履き替えてきた)。巻尺で、メイが死体を発見したポイントから、警察が到着したポイントまでの距離を測る。

 約200メートル。真実の見込んだとおりだ。

「こんなの測ってどうすんだ?」

「謎事の指摘だけなら、偶然だと思った。逆に、このことだけなら、それも偶然だと思っただろう。でも、2つ合わさると、偶然とは思えない」

「?」

「兜警部に連絡しよう」


 すぐに、真解たちの部屋で兜と会う約束を取り付けた。4人が真解たちの部屋に来ると、数分で兜と猫山もやってきた。真解と真実はベッドに座り、メイは真解の勉強机の椅子に、謎事と刑事2人が床に座る。

「で、なんで俺たちは呼び出されたんだ?」

 兜が真解の顔を覗き込む。真解は真面目な顔で言った。

「どうも、真相が違うような気がしたからです」

「どういうことだ? 明人が犯人ではない、と言うことか?」

「いえ、そうではないんですが……」

 まだ証拠がないので、強く言い出せない。真解はとにかく、順を追って説明することにした。

「メイから、明人さんを逮捕したと聞いたとき、まず謎事が不自然な点を指摘しました」

「なんだ?」

 兜が、すぐ隣りの謎事の顔を見る。

「確か、明人さんを逮捕したとき、玄関から千波さんが出て来たんスよね?」

「ああ、そうだ」

 謎事の言うとおり、警察がガレージを調べているときに、エプロン姿の千波が出てきた。

「なんで出て来たんスかね?」

「そりゃ、車の音が聞こえたのに、明人が家に入って来ないからだろう?」

「やっぱりそうですよね。でもそうすると、犯行当夜も、千波さんは外に出てくるはずッスよね?」

「……お?」

 兜は首をひねって考えた。犯行当夜?

 明人の証言を思い出す。

 車で会社から帰って来て、ガレージに車を停めた。ガレージを出たとき、電柱の裏に石黒が隠れているのに気がつき、もみ合いになった。

「……確かに、そうだ。千波は、車の音を聞いたはずだ。なのに……」

「でもそれは」と猫山。「偶然じゃないのかな? たまたま聞こえなかった、とか。たまたまトイレかお風呂に入ってた、とか。色々考えられると思うけど」

「その通りです」真解が答えた。「だからボクも、謎事の指摘を受けたときは、ただの偶然だろう、と思いました。でも、よく考えてみたら、近所の人も全く気付いてなかったんですよね?」

「あ、ああ…確かに。争うような音を聞いた者はいない」

「大の男2人が争ったら、絶対近所の人が何か聞いているはずです。千波さんも、近所の人も何も聞いていない。これはどう考えてもおかしい。念のため調べてみようと思って、メイが死体を発見した川に行ってみたんです。そしたら、もう1つ不自然なことが」

「なんだ?」

「死体の流れる速さです」

「は? 速さ?」

 そんなもの、考えようとも思わなかった。それがいったい、どうしたというのだ。

「メイは、死体を発見してから警察が到着するまでずっと、死体を追いかけて川沿いを下りました。その間、約10分。歩いた距離は、200メートルほどです」

「……それで?」

「10分で、200メートル。1時間なら、その6倍の1200メートル、つまり1.2kmです」

「そうだな」

「明人さんの証言によれば、死体を川に捨てたのは午後8時過ぎです。一方、メイが死体を発見したのは、翌日の午前10時過ぎ。つまり、明人さんが死体を捨ててから、14時間後です。1時間で1.2km流れるのですから、14時間では何kmになりますか?」

「あ~……」

「16.8km」兜の代わりに真実が答えた。「でも、明人さんが死体を捨てた場所は、ひなた壮のすぐ近く。メイちゃんが死体を発見した現場から、たった14kmしか離れてない」

「そうなんです、兜警部」

 真実の言葉を真解が引き継ぐ。

「本来16.8km流されるはずなのに、死体は14kmしか流されていない。差は2.8km。1時間に1.2km流されるなら、2時間以上の差があることになります」

「いや、待て」兜は反論を試みた。「それはたまたまではないか? それに、川の流れはどこも一定と言うわけじゃない。速くなったり遅くなったりするだろう」

「川は基本的に」とメイ。「上流の方が、速く流れます。おそらく、ひなた壮の近くの川は、わたしの家の近くの川より、流れが速いのではないですか?」

 そういえば速かった気がする。

「つまり、本来なら死体は16.8kmよりももっと上流で捨てられていなければいけないんです」

「そうかな?」今度は猫山が突っ込む。「さっき警部が言ったとおり、川の流れは一定じゃないし、必ず上流の方が速いと言うわけでもない。死体が何かに引っかかったりもするだろう。偶然、ってことは考えられない?」

「もちろんです」真解は首肯したが、「でも、偶然が2つ重なったことになりますよね?」

「……」

 1つなら、無視していいだろう。だが2つとなると、ちょっと無視できない。

「だが、どうしてずれたんだ?」

「考えられる可能性は1つ。明人さんが、ウソをついているんです。死体を捨てたのは、午後8時じゃない。それより少なくとも2時間は遅い10時以降なんです」

「……だが、何故そんなウソを?」

「それは、何かを隠すためです」

「まあ、そうだろうな」

「では何を隠そうとしたのか? 明人さんは、自分が犯人だと自白している。殺人を認めているのに、なお隠そうとすることは?」

 兜は火の点いてないタバコをくわえ、腕組して考え出した。犯人が動機を隠すのよくあることだ。他人には言いにくかったり、自分でも上手く説明できなかったりするからだ。だが、明人は動機も話している。殺害方法も話した(凶器も、川に捨てたと証言していた。いま、刑事たちが調べている)。何も隠すことはない。

「考えられる可能性は2つ」兜が何も言わないので、真解が話し出した。「1つ目は、誰かをかばっている、と言う可能性です」

「かばう……ってことは、犯人は明人ではないのか!?」

「はい」

 真解はうなずいた。誰かをかばうために、敢えて自らが犯人だと名乗り出た。だとしたら、明人がかばうような相手は誰か。そんなの決まっている。

「犯人は明人さんではなく、娘の千波さんだと考えられます」

 あの野郎、と兜は思ったが、猫山は首をひねって聞いた。

「でも、どうして死体遺棄の時間を誤魔化したんだ? 自分が犯人だって言うだけで十分じゃないか。それに、どうして明人が千波の犯行を知っているんだ? 2人は共犯なのか?」

 矢継ぎ早に質問する。真解はうなずいて、説明を始めた。

「後ろの質問から答えましょう。まず、2人は共犯です」

「だけど、昨日真解くんは、共犯はあり得ない、って言ったじゃないか」

 正確には、そう指摘したのは真実だ。その時は、「共犯ならば計画殺人であり、計画殺人にしてはアリバイが弱い。だから計画ではなく、よって共犯でもない」と真実が推理した。

「そうですね……昨日、ボクは『千波さんの単独犯はあり得ない』と言いました。明人さんにバレないように犯行を完遂できないからです。でも、こうも考えられませんか。この事件は千波さんの単独犯……ただ、それが明人さんにバレた」

「!」

「バレたのはおそらく、殺害直後。なんらかの弾みで殺してしまったんでしょう。そこに運悪く明人さんが帰宅し、明人さんが千波さんの身を守るために、死体を遺棄した」

「遺棄の時間を誤魔化したのは?」

「たぶん、殺害から遺棄までの間のことを話したくないため、思わず殺害後すぐ遺棄した、と言ってしまったんだと思います。ストーカーとはいえ、千波さんは人を殺してしまった。なので、かなり動揺して、もしかしたら恐怖で泣きじゃくったりしたのかもしれません。それを落ち着かせるのに2時間かかった。でも、それを警察に話すことは出来ない。だから思わず、殺害後すぐに遺棄したと話した」

 ううむ、と猫山はうなった。

「さらに言えば、千波さんが犯人なら、犯行当夜に明人さんが帰ってきたときに千波さんが出てこなかったのは何故か、というナゾも、ナゾではなくなる。別に明人さんが外で揉めたわけではないのだから」

「近所の人が何も聞いていないのは?」

「それはたぶん、殺害現場が自宅近くではないからだと思います」

「どういうことだ?」

「犯行現場は、井上さんの家の近くではなく、家の中なんです。石黒さんはストーカーです。なんらかの方法で家に侵入した。おそらく、千波さんの帰宅を待つために。そして帰ってきた千波さんと鉢合わせし、もみ合いになるうちに殺してしまった」

 そしてそこに、明人が帰ってきた。驚いた明人に、千波は泣き崩れ、それをなだめるのに2時間かかった。それから明人は死体を捨てに行き、どうすれば千波に容疑がかからないか考えた末、あの自白を思いついた。

 この推理に証拠はない。だが、突発的な犯行であり、殺害現場も家の中だとわかっている。明人を逮捕したのだから、容疑者の家を捜索する許可は難なく下りるだろう。井上宅を捜索すれば、必ず何か証拠が出るはずだ。なんなら、千波を尋問したっていい。きっと、そのうち本当のことを話すだろう。

 真解の推理を元に、兜は今後の予定を高速で立てた。

 が、その真解が言った。

「もう1つの可能性」

「は?」

「ボクは最初に、明人さんが隠そうとするものの可能性は2つある、って言いましたよね。もう1つ、考えられる可能性があります」

 そういえば、そう言っていた。可能性は2つ。1つ目は、誰かをかばっているという可能性。ではもう1つは。

「2つ目は、もっと大きな罪を隠している可能性です」

「大きな罪? しかし、明人は…」

 既に殺人を認めている。これ以上に大きな罪とは、なんだ。

 余談だが、2010年現在の日本の刑法で最も重い罪は、外患誘致である。外国が日本を攻めてくるのを手助けする罪で、外患誘致には死刑以外の刑罰が存在しない。次いで重い罪は内乱罪であり、放火、殺人などが続く。

 しかし、別にいま日本が諸外国に攻められている様子はないし、内乱や放火が明人の周りで起こった形跡も無い。

「確かに、明人さんは殺人を認めています。でも、冷静に考えてみてください。明人さんの証言通りだとしたら、本当に罪名は『殺人』ですか?」

「ん?」

 兜は少し考えた。その間に、メイが言う。

「運がよければ、明人さんの罪は殺人ではなく、『傷害致死』になるかもしれません。殺人だとしても、正当防衛が認められたり、ストーカーである点が考慮されて情状酌量があるかもしれません」

「む……確かに」

「となると、こんな可能性もあります。明人さんは、もっとハッキリとした『殺人』を犯した。そして、その罪を少しでも軽くするために、ウソの自白をした」

「だが、明人は何をしたんだ? 石黒を殺した、と言うことは確かのようだが」

「殺人でも、いまメイが言ったように、場合によっては正当防衛で罪がなくなったり、軽くなったりします。では逆に、殺人の中でも罪が重くなるものは?」

「……計画殺人、か」

「そうです。明人さんは、この事件が突発的な物であると証言した。でも真相は逆で、これは計画殺人なんです」

 明人は石黒の行動を調べていたのだろう。その上で、殺人の計画を立てた。いわば、娘のストーカーを、自分がストーキングしていたのである。

「だが計画となると、いったいいつどこで殺したのかわからなくなるな。見当がついているのか?」

「おそらく、川岸じゃないでしょうか?」

「川岸? あの、被害者が投げ込まれた川の?」

「はい。そもそも兜警部。確か被害者は、毎週金曜の午後10時ごろ、その川岸で目撃されているんですよね?」

「………あ」

 確かに、そのような証言が上がっていた。しかも、事件の日は目撃されていなかったのだ。すっかり忘れていた。

「石黒さんの行動を調べていた明人さんは、そのことを知っていた。もちろん、別の曜日の別の時間でも構わなかったと思いますが、まあ、都合が良かったんでしょう。夜10時ごろ、明人さんはあの川に徒歩で行き、石黒さんを殺して川に捨てた。そしてそのまま、徒歩で帰ってきた」

「何故徒歩だとわかる?」

「車を出したら、千波さんにバレる恐れがあるからです。徒歩だと川まで10分以上、殺人と往復で30分以上かかると思いますが、千波さんが1時間以上お風呂に入っているのなら、千波さんに気付かれずに完遂できます。犯行が先週の金曜日に行なわれたのは、たまたま千波さんが夜9時50分ごろにお風呂に入ったから、かもしれません」

 つまり、千波が都合の良いタイミングで風呂に入りさえすれば、明人は犯行を実行するつもりだったのだ。あるいは、千波が都合の良いタイミングで風呂に入るよう、明人が誘導したのかもしれない。

「これなら、千波さんや近所の人が殺人に気付かなかった理由が説明できます」

「死体遺棄の時間を誤魔化した理由は?」

「明人さんの証言通り自宅の近くで殺したのなら、死体を運ぶには車を使う必要がありますが、もし警察の調べで、午後10時ごろに川岸に車なんてなかった、という証言が出たら、ウソだとバレてしまいますよね」

「そうか……いや、待て。すると今度は、午後8時ごろに川岸に車なんてなかった、という証言が出たらどうする?」

「出ないんじゃないでしょうか。むしろ、車があった、と言う証言が出ると思います」

「何故だ?」

「これは計画殺人です。家に帰る前に、一度川まで行ってから帰れば、車の目撃証言を作ることが出来ます。徒歩なら往復20分以上かかっても、車なら10分とかかりませんよね? そのぐらいの遅れなら、千波さんは不審に思わなかったでしょう」

「なるほど……」

 千波の入浴の時刻で、明人が殺害を実行するかどうかが決まる。だから、明人は毎週(あるいは毎日)川に寄っていたはずである。

 1人うなずいている兜に、真解が逆に質問した。

「ところで兜警部」

「なんだ?」

「どうして石黒さんは、そんな夜中に川岸にいたんですか? ボクまだ、聞いてませんが」

「え? あ…」

 兜は猫山を見た。猫山は慌てて手帳をめくる。

「それはわかっていない。もしかしたら、ストーカーの帰りなのかも…」

 真解はうなずいた。

「そうですね。ボクもストーカーの帰りだと思います」

「え、どうして?」

「ケータイが家に置いてあったからです。バイトに行くなら、ケータイぐらい持って行きそうじゃないですか?」

 ストーカーに行くときにケータイを持っていかない理由もよくわからないが、ケータイの呼び出しに応じずに千波に集中したい、という考えからかもしれない。

 少なくとも、現代人ならその多くがケータイを持って外出する。敢えて持たずに外に出るのは、特殊な事情がある場合だけであろう。ストーカーは、特殊な事情と言うに十分な事情だ。

「まあとにかく、可能性はいま言った通り2つ。千波さんをかばっているか、計画殺人であることを隠しているか」

 問題は、どちらなのか、である。容疑者と言い、ウソの理由と言い、2つの可能性が目立つ事件だ。そういえば、おかしな点も「千波や近所の人が何も聞かなかったこと」「明人の証言と川の流れの速さが一致しないこと」の2つだった。

「ではここで、3つ目のおかしな点」

「3つ目?」

「兜警部が自信満々に見つけたボタンですよ」

「ボタン? だが、ボタンからは何も出てこなかったぞ」

「何も出てこなかった、と言うことがおかしいんです。明人さんや、少なくとも石黒さんの指紋は検出されてハズですよね?」

「あ」確かにその通りだ。シャツのボタンに指紋がついていないなんて、そんなバカなことが起こるはずがない。

「だが、何故ないんだ?」

「明人さんが拭いたんじゃないでしょうか?」

「拭いた? 何故?」

「ボクもすっかり騙されてました。でも兜警部、考えてみてください。ボクは昨日、こんなことを言いました。『ガレージにボタンが落ちていたのだから、死体は一度はガレージに入ったハズだ』と。でもボクが挙げた2つの可能性を、よく検討してください。千波さん犯人説では死体はガレージに入っています。でも、計画殺人説ではガレージに入る必要がない」

 兜は、真解が言わんとすることを考えた。明人の証言通りなら、死体はガレージに入っている。真解の考えた千波犯人説でも然り。だが計画殺人説でのみ、ガレージに死体が入っていない。そして、ガレージにボタンが落ちていたことから、死体は一度ガレージに入った。なら、計画殺人説は誤りであり、最初の2つのどちらかが正しい、と考えられる。

 いや、違う。

 考え“させられる”。

「明人は、自分の証言が正しいと思わせるために、ガレージにボタンを置いたのか!」

「はい。石黒さんのシャツのボタンは2つなくなっていました。おそらく、1つは2人が争ったときに本当に取れ、もう1つは明人さんがウソの証拠として取ったのでしょう。でも、それをうっかり素手でもぎ取ってしまった。だから仕方なく、指紋を拭いてガレージに置いたんです」

 筋は通っている。そして、そうだとすれば、2つの可能性のうち、正しいのは。

「ガレージにボタンが落ちない方……つまり、計画犯罪の方か!」

「はい。もちろん、明人さんとしては自分の証言の裏付けとしてボタンを置いたんでしょうが、どのみち『死体は一度ガレージに入った』とする証拠と相反する真相を隠そうとしてるわけです」

「なるほど、な」と兜はふやけたタバコを携帯灰皿に捨てると、新しいタバコを出して口にくわえた。

「だがなにか、直接的な証拠はないのか?」

 真解はちょっと考え込んだ。

「そうなんですよね。例えば、夜な夜な車が午後8時ごろに川に来ている、なんて証言が上がれば良いんですが」

「今のところ、そんな証言はない」

 もっとも、調べようとしていなかったので得られなかっただけ、かもしれないが。

「でも、明人さんは他にも自分の証言を裏付ける証拠を作っているハズです。明人さんの言う現場からは、血痕も見つかるでしょう」

「すると、ますます明人の証言が強固になるが?」

「でも……まあこれは、都合の良い予測ですが……そんなに色々、証拠を偽造したら、絶対どこかにボロが出るはずです。兜警部、明人さんの証言の裏付けを徹底的に行なってください。おそらく、どこかに偽造の証拠が出てくるはずです」

 つまりここから先は、自分たちではなく警察の仕事だと、暗に訴える。

「そうか、わかった。行くぞ、猫山」

 2人は礼を言うと、部屋を出て行った。


「今朝また兜警部から電話がありまして、真解の推理どおり、明人さんの偽造の証拠が出たそうです。それを明人さんに突きつけたら、諦めて真相を話したそうです」

 次の月曜日。メイが真解たちに報告した。

「どうして兜警部は、メイちゃんに電話してるんだろうね?」

 と真実は首を傾げた。お兄ちゃんに電話すればいいのに。

「そうか……」

 と真解はつぶやいたきり、黙り込んでしまった。

「どうしたの、お兄ちゃん」

「いや、別に」

 なんとなく真解は、複雑な気分だった。

 石黒はストーカーだった。千波と明人が警察に訴えていたくらいだから、精神的な被害を受ける激しいものだったのだろう。でも警察が何もしなかったから、明人が石黒を私刑に処した。明人はその上で、千波を1人にさせないために、捕まってもすぐに戻って来れる軽い罪を偽装しようとした。

 自分はその計画を潰した。

 悪いのは誰だったのか、と考えると、もちろん人を殺した明人だが、石黒だって十分に悪人だったのだ。

 果たして今回の自分の行動は、正しかったのかどうか。

 真解は、明人にも千波にも会ったことがない。顔も見たことがない。

 それでもなんだか、悪いことをしたような、後ろめたいような気持ちになった。

〔でも、殺人だけはやってはダメだ。その罪は裁かれるべきだ〕

 そう考えて、落ち着くことに決めた。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


今回の話、実は書き始めた当初は「千波が犯人」という設定だったのは内緒。

真相編を書き始めたところで、

「ほとんどの読者が、『千波が犯人だな』と思うだろうなぁ」

と思い、最初から書き直したという。

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