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地獄で信長に会いに来た明智光秀「私は信長を、殺すしかなかったのか?」  作者: スグル【戦国時代好きの40代】
織田信長と明智光秀 ~本能寺の変 動機~

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【6】巡る運

【地獄安土城にて 明智光秀と織田信長】


「そういえば信長様に、もう一つ聞きたかったことがあります」


「なんだ。もうこれ以上 小難しい話は無理だぞ」


「いえ、難しい話ではありませんよ。何と言うか…。アレのことです」

 

「アレか」


「アレです」


「…アレって…何だ?」


「え~と…。信長様に、憑(つ)いていましたよね、何か」


「ああ、アレのことか。実は俺もよく分からん。だが何か、謎の強運が俺の身に宿っていたとは思う。って、そもそもお前にはアレが見えていたのか?」


「見えてはいませんが、何かがいるのは感じていました。アレに気づいた当初は、幻覚かと思い、私もついに精神に異常をきたしたのかと自嘲(じちょう)しました。しかし、日に日にはっきり感じるようになり、幻覚ではないと確信しました。

 私が、信長様とあの計画について話している余裕などなく、早々に討つしかないと焦ったのも、武田滅亡後にアレがさらに存在感を増したせいでもあります」


「俺も、アレがいつから自分に憑いていたのか、はっきりしねえんだ。何かがいるのは感じていたが、自分でも見えていたわけじゃねえし」


「信長様が不吉な…ああこれは当時 私がそう感じたことという意味ですが、そういうことを信長様が考えているとき、私は必ずアレの存在を感じました」


「ああ、そうなのか。俺は、集中していたり重要な会話をしたりしているときに、アレの存在を強く感じていた。あとは、際どい戦の最中とかにもな。アレが出てくると、妙に頭が冴えて、やたらと強運を引き寄せる気がしていたが、今 改めて考えてみると、本当は違っていたのかな」


「違うと思います。信長様は確かに強運でしたが、それは借り物の力によるものではなかったでしょう」


「なぜ、そう思う?」


「例えば、サイコロを振ったとします。偶の目が出る確率と、奇の目が出る確率は違いますか?」


「違わない」


「信長様は、丁半博打(ばくち)は得意ですか?」


「得意ではない。感覚的に、勝率は四割くらいだ。運が悪いのかな」


「仮に信長様の勝率が四割だとしたら、運が悪いほうだと言えますよね。しかし運とは、そういう偶然を味方にするだけの要素なのでしょうか」


「それだけではないな」


「丁半博打では負け越していても、信長様は強運です。本当の運とは、人が力と智恵を最大まで費やしたときに湧き出すもの…上手く言えませんが、そういう気がします」


「それが、運も実力のうちってことなんだろうな。運は降ってくるんじゃない。引き寄せて、掴み取るもんなんだろう。お前が俺を殺したとき、お前の運は俺を上回ったんだ」


「同じような意味のことを、家康殿にも言われました」


「あいつも分かっているんだろうな。じゃなければ、三河の小せえ領主ごときが天下なんか取れねえはずだ。

 一言に〈運〉って言っても、本当は色々あるよな。運勢、運命、宿運、天運、奇運……家康(あいつ)こそ、最も運を引き寄せ、あらゆる運に愛された男なんだよ」


「そうなのでしょうね」


「ああいう、一見して真っ先に死にそうなやつが、意外に持っているもんなんだ」


「それは同感です。しかしそれでは、信長様に憑いていたアレは、何だったのでしょうね」


「知らん。ただ…。運ってやつは人から人へ巡ることもあるようだ。俺の運は、死ぬ前に去って行った。誰のところへ行ったか、予想がつくよな?」


「秀吉」


「そうだ。だがあの謎の運は、憑いたやつに、強運をもたらすだけじゃない。気まぐれにとんでもない凶運を運んでも来る」


「運のプラスとマイナスは、結局 どこかで釣り合うようになっているのですかね」


「そうかもな。少なくとも、アレはそうだったと思う」


「秀吉にも、聞いてみたいですね」


「行ってこいよ。あいつも、もう地獄に来ているはずだ」


「探してみます。まあ、どちらかと言えば秀吉にとって、アレはマイナスのほうが大きかったような気がしますがね」



「あいつは あまり、運に愛されそうもないか」



第二章「地獄でまた会った秀吉と光秀」に続く


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