表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄で信長に会いに来た明智光秀 ~お前は なぜ俺を殺した?~  作者: スグル【戦国時代好きの40代】


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/5

【5】信長を殺すな

 地獄安土城にて 明智光秀と織田信長


「今の私なら、信長様を殺しに行くか…ですか」


「そうだよ。ここまで互いの考えを話した。それでお前はどうするのか聞きたい」


「つまり、信長様が覇者になったら、王になり国を支配するという考えに同意できるか、ということで良いのですね?」


「それも含めて、お前が決めることだ」


「分かりました。では結論から先に言います。覇者は朝廷から征夷大将軍等に任命され、朝廷の権威の下で国を治めるべきだと思います。王は、必要ありません」


「お前が出した結論は、変わらなかったってことだな」


「そうです。しかし信長様の、先を見通したお考えには感服しました。確かに、抗いようもない武力が現れる前に国を刷新させるには、大改革を推し進められる王が必要だというのは、よく 分かります」


「それでも、同意できない理由は何だ?」


「国の統治には、〈権威と権力〉が必要だからです。その二つを一人が独占してしまうえば、おそらく権威が失われるでしょう」


「権威と権力か。いかにもお前らしい考えだな」


「一見 同じようなものに見えますが、権威と権力は違います。ざっくりと言ってしまえば、権威は強制力を持たず、権力は強制力を持ちます。強制しなくても人から敬われるのが権威、強制して人を従わせるのが権力です。

 この二つに、あえて序列をつけるならば、強制力を持たない権威が上です。権力だけで国の舵取りはできません。権威と権力が互いに補完し合う関係でなければならないのです」


「つまり朝廷が権威、覇者が権力を司るんだな」


「そうです。朝廷は、天皇と言い換えることもできます。天皇の権威に委ねられた権力を、覇者が行使すれば良いのです。そうすれば民は権力に安心して従い、権威が常に権力を監視し、誤りを防ぎ、正すことができます。国の改革を進めるにも、この体制が最も危険が少ないのではないでしょうか」


「権力には、権威という裏付けが必要なのは分かった。では天皇には、どうして権威があるんだ?」


「それは、信長様が先ほど言った通りです。天皇は代々この国の唯一無二の存在を担わされてきたのです。そしてそれは、これからも延々と変わらない宿命でもあります。過去においても未来においても、不変かつ唯一無二の存在なのは天皇だけです。その、時の重みが権威の源なの です。

 繰り返しますが、これは理屈ではありません。強制などされなくても、誰もが自然に畏れ敬う存在になっているのです」


「確かにそうだな。天皇の権威も分かった。じゃあ権力は、どうやって代々受け継いでいくんだ?」


「次代の権力者は、世襲制でも指名制でも構いません。それを決めるのも権力の一部です。しかし権力者は、それに値しなければ、別の者にその座を明け渡さなければなりません。権力の裏付けとなる権威が不変であるからこそ、権力者は、その時代に最も相応しい者に変えていけるのです」


「なるほど。よく理解できた」


「理解ですか」


「そうだ。納得まではできていない」


「やはり、そうですか。私の考えは、机上の空論だと思いますか?」


「理路整然と話しながら、お前自身もそれを感じていただろう。俺が最初に言ったよな?」


「はい、言っていましたね。世界はファンタジーじゃないと」


「そうだ。そこに繋がったのは半分は偶然だが、初めからなんとなく、直感のようなものはあった」


「ファンタジーは、ゲームのように完璧にプログラムされた世界にしかない。この世は完璧とはほど遠いですよね。むしろバグだらけです」


「そうだな。だから、バグをバグと思わず受け入れれば良いんだ。完璧を求めるな。もっと鈍く雑になれれば、バグなんか気にもならなくなる。お前は筋金入りの完璧主義者なんだよ。

 俺の計画は、お前には受け入れ難いものだったのは分かったが、はい明日から俺が王です、なんてことに なるはずがねえだろ。どこかに、妥協できるところがあったはずだよ」


「すべてが最初から計画通りに行くはずがない。そこに妥協できるところを探せば良かったのですね。…それ、私がアレを起こす前に言って欲しかったです」


「ああ悪かったな。いや謝るのは俺じゃねえ気がするが…。まあいいか」


「すみません」


「お前もあっさり謝るんだな」


「その約束でしたからね」


「お前が自分でも言ったように、今のガチガチの考えは机上の空論だ。お前くらい頭が良いやつにしか分からん話じゃダメだ。それだったら、俺が王になるから黙って言うことを聞けって言うほうが、まだマシだ。理解なんかさせなくて良い。国中のやつがほぼ納得すれば、大体その通りになっていくんだよ」


「そうですね。今まで、国中が物事を武力で解決すると納得していたから、その通りになっていたのですからね」


「そうだろう。お前だって俺を止める手段として、武力を選んだんだ」


「何も言い返せません」


「まあ、俺の計画もお前の行動も、柔軟さには欠けたし、急ぎ過ぎてもいた。でも、お前の言うことは、基本的に正しいと思う。お前は、他の国を侵攻せず、この国の権威を絶やさず、なおかつ民が安心して暮らせる豊かな国を作りたかったんだろう?」


「はい」


「お前は、来世でそれをやれ」


「来世?地獄に来世があるのですか?」


「……あれば良いな」


「知らないんですね。でも、あって欲しいです」


「俺たちは悪人認定されて地獄にいるが、何の意味もなく、死後にこんな話をしているのだとしたら滑稽すぎる」


「…………」


「お前がもっと柔軟だったら、俺を殺さずに、日本をお前の理想に近づけられたかも知れねえだろ。だから次は、俺みたいなやつを殺さなくても済む方法まで考えろ。それが、俺が望むことだ」


「承知しました。しかし信長様がいたからこそ、日本の未来があるのは間違いありません」


「それ、殺す前に言え」


「多分、来世ではそうします」


「まあ、ホントに来世があったとしても、先に現世(あっち)に戻れるのはお前だろうから、俺には関係ねえけどな」


「残念です。また信長様と同じ時代を生きてみたかったです」


「俺はどっちでも良いけどな。まあ、地獄(ここ)には時間はいくらでもあるから、ゆっくり考えろよ。

 とりあえず現世のほうは、お前と同じく意志を持っていた ただ一人のやつが、鈍く雑にやってくれそうだからな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ