ジーニア・クローバ・フラワー篇
ここは何処なんだろう?ふわふわとした不思議な感覚に少しの酔いを覚えた。
さっきまで自分の大好きな世界で優雅にモブとして人生を楽しんでいたのに…
体が光ったかと思ったら、何もない真っ白な部屋。
違うのはこの深海を彷彿とさせる床だけ。
たまらなく不安になった私は声を上げた。
「だ、誰かいないの?」私はたまらずに避けんでした。
すると突然、さっきまで何もなかった空間が揺らめいた。
「初めまして。初めてここに来たのにもうそんな声が出るとは。僕はとても驚いたよ。」
少年…だろうか。中世的な顔立の子供がそこにいた。私は驚くのもそこそこにあまりの可愛さに矢継ぎ早に質問を投げかけた。
「貴方、だれ?男の子?女の子?きぁー可愛い!!
ねねっ貴方はアニメ観る?最近の子はどんなアニメ見てるのかしら?
私とお話ししましょう!
そうだ、貴方は何処から来たの?
私はね…」
ここで言葉を止める。
私が乙女ゲームの世界にいたなんて夢みたいな話、この子が信用してくれるかしら、変な奴って思われて何処かへ行ってしまうかもしれない…
悶々と考え込む様子にそれまで、梨花の雰囲気に飲み込まれていたが、急に我に返った梨花の様子に彼は普段の調子を取り戻した。
我に返ったように彼は自己紹介をした。
「改めて、はじめまして。僕の話し相手になってよ。」
そういうと彼は私に手を差し出す。
私は笑顔でその手を握り返す話を始めた。
暫く他愛のないはなしで盛り上がっていたがふと梨花の声に曇りがかかる。
「私ねとっても大切な人がいたの。」
それまで笑顔で聞いていた彼も表情を曇らせる。
「その子とはね、中学からの親友でね、
大人になってどんなに忙しくなってもご飯を食べに行ったり、
休日が合えばショッピングに行ったりしていたの。
でもね、ある日突然、私の前からいなくなっちゃたの。
私はね、彼女の両親とも仲がよかったから、私にもお葬式の連絡が来てね
でもまだ受け入れられなくてはじめは行きたくなかったの…
でもね、『娘は絶対に梨花ちゃんに会いたいと思うから、娘の最後のお願いだと思って来てあげて』ってお母さんに泣きながら言われちゃってね。
結局、行ったんだ。
あぁ本当なんだって、嘘じゃないんだって、事実なんだって実感しちゃってね。
飾られてる写真みたらね、
あの子写真が苦手でほとんど撮らせてくれないのに、
私と最後に会った日に何気なくとった写真でね。
あぁ、なんでだろう、目から汗が..」
私は言葉を詰まらせてしまった。
彼はただ黙って俯いた。
さっきまで画面から二人の笑い声が響いていた。
画面の中の彼は本当に楽しそうで、今の彼とはとても違う。
いや、違うか…、変わったのは彼ではなく、私の方だ、私が彼を変えてしまったのか…。
「これを見せたら変わるかもと思ったけど僕の勘違いか…
まだたくさんの映像を用意しておいたのにこれじゃあ…」
それはまるで自身に向けたように弱々しい声に私は小さくピクリと反応を示した。
「ち…がう、違うの。」
久しぶり発する声は言う事を聞かず、それでも必死に言葉を紡むごうとする。
「うまく..伝えられないけれど、梨花も…梨花もここに来てたんだって。
一言でいい、梨花と話したい…。
言ってしまって慌てて口を噤んだ。
重たい沈黙のあと彼が申し訳なさそうに口を開く。
「…ごめん。梨花をここに連れて来るのは…
そういう"ルール"だから。」
…なんとなく分かってはいた、私は彼にそんな顔させたい訳じゃなかった、でも言う事をやめられなかった。
画面の向こうではまさに梨花が床に沈んでゆく瞬間だった。
私は意味なんて無いと知りながら梨花に向かって手を伸ばした。
そして、私の体も梨花の様に暗い暗い闇の床の中へ沈んでゆく。
「り…か…、次は、あ…なたの…事も…」
静かになった床を眺めて僕はまた静かに涙を流した。
お久しぶりですの方
お久しぶりです、愛羽真琴です。
初めましての方
初めまして、愛羽真琴です。
気づけば約2年も間が空いてしまいました。
時間が過ぎるのはあっという間ですね。
またまた作者の変化期に投稿を再開させたわけですが…今度こそしっかり続けていく所存です。
優しい目で見ていただけますと幸いです。
さて、次回のお話です。
次回の投稿は2026.04.01です。
それではお楽しみに〜。




