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作られた悪役令嬢  作者: 白羽鳥(扇つくも)
学園祭準備編
95/111

僕の大切な女性

「大丈夫か、リジー!?」

「リジーさま、ここで休んで……」


 顔色の悪いあたしを部室の隅の椅子に座らせてくれた二人は、あたしがショックを受けた理由の全貌は分からない。アステル様は陛下の想い人がお義母様である事、ラク様はそもそもあたしがエリザベスである事を知らないのだ。


「犯人は……エリザベスさまでは、なかったんですね」


 ぽつりと呟いたラク様に、アステル様はハッとして口止めする。


「ラク様、この事は口外せぬよう」

「なぜ? テセウスはエリザベスさまだと思った。だから」


 ラク様は青い顔をして俯く。自分をそばに置くために、殿下があたしにした仕打ちをどこまで聞いているのか知らないが、きっと自分を襲撃したのだからと言い聞かせてきたのだろう。それが、揺らいできている。

 殿下としては真犯人が明らかになったとして、家族なのだから何も変わらないだろう。あの御方が復讐したいのは、この国の神託なのだから……あたし個人の所業がデミコ ロナル公爵家の差し金になるだけ。


「殿下にはこちらが何も知らないと思わせておいた方がいい。下手に刺激するのは危険だ」

「でも、アステルさまはエリザベスさまの、婚約者、で」

「無論、ずっとこのままにしておくわけがない。エリザベスは僕の大切な女性(ひと)……必ず守ってみせる。そのためにラク様はリジーと調べてきて欲しいんだ。次のドワーフの曜日に、神殿で」


 あたしたちは社会活動を、神殿での奉仕に変更していた。これもアステル様の指示で、主な内容は神殿内の清掃や目の不自由な神官長のお世話だ。神託を受けたという神官長は、個人的に直接言葉を交わした事はないけれど……折を見て話を聞きたいと思っていた。

 頷くあたしの横で、目をキラキラさせたラク様が興奮した様子でそっと耳打ちしてくる。


「僕の大切な女性、だって。エリザベスさま、婚約者に愛されてる」


 その言い回しで一瞬、あたしが揶揄されているのかと錯覚してしまい、ボッと頬が紅潮した。


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ 


 その日見た夢は、昨日の続きだった。


 ドアの向こう側は、アステル様の部屋――実際に中に入った事は一度もなかった。ドアの向かい側には大きな姿見が置かれていて、斜め奥の椅子が映し出されている。

 あたしは()()光景を、直接見たわけじゃなかったんだ……と、どうでもいい発見をしつつ、部屋に足を踏み入れる。


 家具は豪華な金細工を施されてはいるが、ごちゃごちゃした下品な印象はなく、物があまり置かれていないのもあって落ち着いた感じだ。それを台無しにしているのは、天蓋付きベッドから漏れ聞こえてくる男女の睦み合いだった。

 女の嬉しそうな嬌声と、男の苦しげな吐息……物凄く、居たたまれない。何故こんなものを聞かされるのか。そう思うのに、足は勝手にずんずんベッドへ向かってしまう。


 薄いカーテン越しに、二人の姿が浮かび上がった。そっと隙間から窺うと、男の方は予想通りテセウス殿下……実際に見たとは言え、どういう事なのか意味不明だ。

 アステル様の部屋なのに? ラク様は? 何故テセウス殿下の方が組み敷かれているの?

 そして殿下の上で腰を振る、アステル様のような髪と目の色をした、あなたは誰……?


 息を飲みながら見守っていると、苦行のようにぎゅっと目を瞑って耐えていた殿下の瞼が、カッと開いてこちらを見た。


 バレた!


 咄嗟にカーテンから離れる直前、殿下の唇が言葉を紡いだ。



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