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小咄其の弐拾 『なんだか着信あり?』

 香ばしい炭火とタレの香りが広がる。


「どうもね、出るらしいっスよ、○○○養鶏場に」

夜道、焼き鳥を頬張りながら話しを続ける男が二人。

「何が?」

胡散臭そうに鶏冠とさかは後輩の牛尾うしおのひそひそ話しを聞いた。

「鶏が…」

「馬鹿だねお前は。前から馬鹿だ馬鹿だと思っていたがますます馬鹿だ。鶏が養鶏場にいるなんて常識だろが」

「じゃなくて、出るんっスよ! ウィルスをうつされ、不当に処分された鶏の霊が。」

焼き鳥の串を振りつつ牛尾くんが叫んだ。

「なこと言ったらそこ等中動物霊ばかりだろ。天をも貫く馬鹿だねお前は」

今食べている櫛を置き、鶏冠は毒づいた。

「どうもそこ、卵の賞味期限や出荷場所の誤魔化しまでしてたそうで。食われちゃーイヤんなるでしょうけど、死んだ後さえ扱いが悪ケりゃ、そりゃ家畜だってグレるってなもんです。」

「そんなもんかなぁ?」

「悪徳商人の携帯に、誰だかわからん着信が入って、何だかわからんうちにメッセージを聞くと…」

「聞くと?」

その時、いきなり鶏冠の携帯が鳴った。『着信あり』の通知。さすがにタイミングが悪すぎて取らずにいる。


「元気な声で『コケコッコー』と鶏の声が聞こえるんですと。すると背後の闇から、羽毛をざわめかせ、逆さになって天井をすーっと迫って…人とも思えぬ顔の霊が!」

再び着信ありの表示が光り、いきなり雄鶏の甲高い声が夜だというのに響き渡った!

「ぅわぎゃーっ!!」


 * * * * *


「…というような都市伝説を聞いたんスよー。怖いっス鶏冠先輩」

「馬鹿だねお前は。鶏が人とは思えぬ顔をしてるのは当然だろーが。人面鳥の方がよほど怖い。前から馬鹿だ馬鹿だと思っていたが天高く馬肥ゆる馬鹿だ。馬鹿はゾンビになっても治らない」

鶏冠先輩は後輩の牛尾くんを罵倒するのに余念がない。

「おおかた鶏を解体用に吊るした物でも見てビビったヤツのほら話だろ。いいから早く退散するぞ、折角牛丼のレトルトパック、ぶん盗ったんだからな」

「へい、ずいぶんみみっちい泥棒っスね俺たち」


 その時。

鶏冠の着信が鳴った。ゆっくり携帯を取り出し、耳をあてると


「モー」


と鳴き声が聞こえた。



                                   <おしまい。>

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