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90話 旅の必需品は暇つぶしの道具である

今回はちょっとしたフラグ回です。

いつか回収しま~す(*´▽`*)

それと最後に事故ります。

 出された食事は感想が言えないほどおいしかった。

 出されたのは日本の食卓で出されるような料理を異世界風にアレンジしたものだ。

 まず米は普通にルシフェル大帝国産の白米、鮭の塩焼きの代わりにスカイフィッシュの塩焼き、マンドラゴラの漬け物、あさりの味噌汁の代わりに幻想貝の味噌汁だ。

 まさしくザ・ファンタジーだな。

 何でも料理長がやりたかったらしい。

 そんで三日経過して朝食を食べた後、五両目で皆と集まってダウトをしている。

 アヴェルも入れて八人でやっており、四人一組でわかれている。 俺はアヴェル、エイジ、シエラとやっている。

 なお、シエラの読心(テレパシー)は魔眼で封じている。

 回る順はアヴェル、エイジ、俺、シエラだ。

 今はアヴェルの番だ。


「七」


「八」


「九」


「十」


 やっべ、次の俺の番に十三、キングを出さないといけないがないな。

 嘘をつくしかないか。


「十一」


「十二」


「十三」


 龍は四を出した。

 そしてエイジが、


「ダウト」


 と言った。

 要するにバレてしまった。


「何でわかった!?まだ二巡目だぞ!」


「俺がキングを一枚、持ってるから賭けてみたんだよ」


「マジか~」


 レイにエイジはテーブルゲーム部だと聞いていたがスゴい実力だな。

 そして俺は結局、ビリだった。

 アヴェルは二位でエイジが一位、シエラは三位でショックですねている。

 すねたいのは俺だぞ。

 賭けが苦手な皇帝って大丈夫か?


「こちとらガキの頃からカジノに通ってるからな!」


 ガキの頃から?

 それって法律違反では?


「法律違反と思っている所、悪いけどエイジは誘惑と娯楽の都ベガス出身だから仕方がないのよ」


「ベガス?」


「旅の途中で聞いたことあります。確か都市全体が賭博場になっている街らしいです」


「そういえばあったなそんな事。というか二人の方が詳しいのでは?年齢的に」


 ヘイスはアヴェルとキースの方を見てそう言った。

 確かに二人はキースとウルミナよりも年上である。

 そのため有している情報も多い筈だ。

 しかし、キースは冷や汗を垂らし目を反らした。

 それを不振に思ったのか龍は問いただした。


「正直に言えキース。ベガスで何があった?」


 だが頑なに口を開けようとしない。

 いや、開けたくても自身の過去を漏らすまいと堪えているのだ。

 当然だがキースは誰よりも龍に忠誠を誓っている。

 そのためか自己防衛と忠誠の狭間を行き来しているのは言われなくてもわかってしまう。

 そんな彼を不憫に思ったのか代わりにアヴェルが説明した。


「キースさんはベガスで十五万フェルも落としてきました」


「何でそれを!?」


「泥酔した時に愚痴ってたので。一度、味わった勝利を再び求めて湯水のように溶かしたそうです」


 要するに最初は好調で進んでいたが調子のって負けたと。

 …この場合は運営の掌の上で踊らされていたのか?

 しかし、十五万も消し炭にしてくるかぁ。


「賭博禁止なキース」


「そんな!!」


 お前を思ってのことだ。

 別に人の趣味についてどうこう言うつもりはない。

 けど、それを趣味にしたらこの仕事できなくなるぞお前。


「落胆したキースの代わりに私が説明します。ベガスはどの国にも属さない都市です。一応、王のような立場の者が統治しているので国として機能していると言ってもよいでしょう」


「他国に属さないのか?」


「それはゼロに近しいですね」


「街がより発展するのに?」


 古来より存在する都市ならわかるが賭博場だろ?

 だったら他国に属して物流の流れに乗るとか。

 賭博以外の産業で繁栄できるだろうし。


「龍、先ほどヘイスさんが言った通り、ベガスは巨大な賭博場みたいなの。もちろん、各国要人がやってきて賭事をする。そして掛け金の代わりに情報を取れる」


「要するに他国の重要な情報を握っていると」


「そう。属すれば情報もその国に渡るからね」


 相変わらずエレノアの説明はわかりやすい。

 もしかしてルシフェル大帝国も例外ではないのか?


「こっちは大丈夫なのか?」


「お恥ずかしいことに極一部の情報が漏れています」


 誰だよ負けてきた要人は。

 そいつもキースと同様に今後一切の賭博を禁止だ。

 それが仮にクラウスさんなら説教してやる。


「その対策は?」


「抜かりありません」


「ならいい」


 誘惑と娯楽の都ベガス、注意した方がいいな。

 自国の情報を盗られるっていう点もそうだが何かある。

 上手くは言えないが属さない理由が他にもある筈だ。


「それでエイジがガキの頃からカジノをする理由と何か関係があるのか?」


「そこの出身の奴はたいてい食い扶持がそれになっちまうんだよ。だからやってた」


「両親は?お前の親って騎士団長じゃ…」


 龍がエイジの両親の話を訊こうとした

 だがそれと同時に列車は跳上がるように大きく振動する

 そして鈍いブレーキ音を上げて止まった。

 言うまでもなくこれは緊急停止である。


「キース、ヘイス、ウルミナは外に出て確認と警戒をしろ!他の者は何かあれば龍様と御学友の方々を避難させろ!私は状況の確認をしに先頭車両に向かう!」


「おう!」

「了解!」

「了解です!」


 間を開けずに行動に移すとはさすがは王の護剣だ。

 何かの故障か前にもあったゴブリンか?

 ゴブリンはトラウマ級になってるから勘弁してくれ。


「いった~。机に顔ぶつけた~」


「大丈夫か?フィアナ」


 龍は外の様子を伺うために窓辺に近寄る。

 更にエイジも龍と同様に窓辺に近づいた。

 しかし、その表情は何にも染まっていない。

 いつもの笑顔すら出さずに無表情で龍の傍らに立つ。

 そして普段のエイジからは想像もできない言葉が飛び出してきた。


「両親の話は今度からすんじゃねぇぞ。次したら王の護剣ごと殺すからな」


「…エイジ」


「冗談だって!それよりもう一回、ダウトやろうぜ!」


「ああ」


 エイジ、俺はお前のことをほんとうに友達だと思っていてもいいのか?

 悪いけど今のを冗談だと思うことができない。

 殺意が込められた言葉をどうやって嘘と思えばいい。

 …時が来たら教えてくれよ、その言葉の本当の意味を。

 

次回!まあ、事故と事前に教えているので列車を修理している間に近くの村で暇つぶしをします!

それではまた次の話で!

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