49話 本当の気持ち
アリスが主人公の回です!
龍は最後に出てきます!
なぜボクだけこんな目に遭わないといけないの?
ある日、目を覚ましたら知らない場所、知らない体、知らない名前、知らないで埋め尽くされていた。
「見つけたぜ!子ウサギちゃん!…また瞬間移動か。でも無駄なんだよな!」
訳もわからないまま、作り笑いで演じて悲しみを埋めていく。
知らぬ間に埋もれていた悲しみと恐怖の感情、ここから逃げ出したい本当の自分を知りたいボクは誰?
居るかもわからない親や親戚、居たとしても生きているの?
もし、見つからなかったら彼らはボクにどんな態度を取るだろう。
行く宛のないボクはきっと養子に出される。
そうなったらボクの存在価値はどうなるの?
また別の自分を演じればいいの?
それだけはもう嫌だ。
死んだらどの墓にいられるの?
一人は嫌だ。
行く宛もなく彷迷い朝起きて知らぬ顔、動く違和感のある体、いったいボクは誰なんだろう。
「また追ってきた!」
「…また瞬間移動かよ。こっちは魔法で移動してるんだから個力は使うなよ。フェアで行こうぜ!」
目覚めた時から毎日、考えている。
ボクはどこの誰でどうしてこの学園にいるのかボクは本当にアリス・フラメルなのか。
ボクは何か悪いことをしたからこうなったの?
別にこの神器は嫌いじゃないむしろ感謝している。
この神器はボクといるかもわからない家族、そして命を繋げている大事な物だから。
もし、これが神様からの試練というヤツならボクは神様を嫌う。
なのでボクは神様を信じていない神様が存在するのならボクを、そしてスラム街に住んでいる優しいお爺さん、病気のおばちゃん、今日も妹のために働いている小さな男の子だって救ってくれる。
神様なんていやしないだって世界にはこんなに不幸な人がたくさんいるから。
居るなら今すぐボクを救って!
家族との繋がりを奪おうとしている悪い奴を倒して。
もう、こんな生活は嫌だ!
誰か助けて…。
「テメェ、自分が何者かどうか悩んでるだろ?こっちはいろんな情報が入ってくるからわかるんだよなぁ。テメェが記憶喪失なのも」
「それが何!今、始まったことじゃない!」
「それって気持ち悪くね?その体、本当にテメェの体か?学園の奴らがその神器に頼んで創ったかもしれないんだぜ。そうだったら辻褄があうよな!記憶喪失のフリをさせてデーターを取る。いいモルモットだな!おい!」
リュカのその言葉がアリスの心に刺さったのかアリスは逃げるのを止めてその場に崩れた。
「だからさその神器、俺に渡して死んじまえよ。そしたら天国に居るかもしれないテメェの父ちゃん母ちゃんに会えるかもな!でも、居ねぇかもな!それに創られたのなら死んでも天国に行けねぇか!」
「確かにそうだね。死んじゃえばこの苦しみから解放されるし自分が何者かわかるよね」
ユルグレイト王国に雨が降り始めた。
まるでアリスの代わりに泣いてるかのように。
「その通りだ」
リュカはアリスの左腕を掴む。
「確か神器を掴んで呪文を言えばいいんだよな」
だがリュカが呪文を言おうとしたその時、上空から一人の少年が刀を持って降ってきた。
もちろん、リュカは気づいて避ける。
「…龍っち」
降ってきたのは龍だ。
浮遊で宙に浮き創造で強力な風を創って上空からアリスを探していたのだ。
「アリスから離れろ」
「あぁ!?」
「俺の仲間から離れろって言ってんだよ!ワン公!」
そして着地した龍はリュカに剣先を向ける。
「ワン公ってテメェ!」
「それとアリス!話は全部、上空から聞いた!自分が誰だかわからなくて勝手に死ぬなバカ!お前はアリス・フラメル!世界にたった一人しかいない女の子だ!俺は神様なんてそんな大した存在じゃないけど!お前の居場所を守るためなら自称神にでも魔王にでもなってやる!だから勝手にくたばるんじゃねぇ!そして、それを壊そうとする奴は誰だろうと絶対に赦さん!」
「ガキが調子こいてんじゃねぇよ!ぶち殺されるのはテメェの方だ!」
雨が槍の如く降り続けるスラム街の路地裏で一人の少女を守ろうとする魔王の孫とそれを脅かす狼が激突した。
次回、リュカVS龍!
貪狼騎士団、副団長のリュカに龍は勝てるのか!?
それではまた次の話で!




