chapter23 近づく異変
数日が経っても、森の様子は変わらなかった。
――いや、正確には“分からないまま”だった。
村の警戒は続いている。
兵士の巡回も増え、森へ近づく人間はほとんどいなくなった。
それでも、表立った被害は出ていない。
だからこそ、落ち着かない空気だけが残っていた。
オレは庭に出て、水人形の制御を続けている。
いつも通り、水を集め、形を整え、動かす。
「……もう少しか」
ゆっくりと腕を持ち上げる。
ぎこちなさは残るが、昨日よりは確実にましだった。
そのとき、門の外から声が聞こえた。
「昼間に出たって、本当か?」
一瞬だけ、手が止まる。
「見たやつがいる。しかも奥じゃねぇ、手前だ」
「……それは、増えてるな」
低く押さえた声。
だが、内容ははっきりと耳に入った。
(……手前か)
それだけ意識に引っかかる。
すぐに、水へと意識を戻した。
水人形が再び動き出す。
ゆっくりと、形を保ったまま腕を持ち上げる。
だが――
「……?」
わずかに、引っかかる。
動きが一瞬だけ鈍った。
意識の流れが、ほんの少しだけ乱れる。
すぐに元に戻る。
水は何事もなかったかのように形を維持している。
(数が増えて、外に出てきた……か)
思考が、静かにまとまる。
奥にいたものが、手前まで出てくる。
それ自体は、不自然じゃない。
(……こういうの、大体ろくなことにならないんだよな)
小さく息を吐く。
それでも、意識は水へと戻した。
今はそれよりも、制御の方が重要だ。
水人形の腕が、ゆっくりと動き出す。
ぎこちなさは残るが、確実に精度は上がっている。
門の外では、まだ兵士たちの声が続いていた。
だが、それを気にすることはなかった。
ただ静かに、いつも通りの時間が流れていく。
読んでくれた方ありがとうございます
誤字、脱字などの不自然な文章があれば、指摘お願いします
他の作品も読んでくれたら、嬉しいです
面白いと感じたら、評価やブックマークお願いします




