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転生してスローライフ  作者: 火川蓮
第三章

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27/31

chapter20 茂みの中から

水人形の実験を始めてから、一月が経った。

毎日、朝から夕方まで約十時間。

ウォータードールを弄り続けているが――目に見える成果は出ていない。

動かせるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。


……いや、本来なら、もう少し形になっていてもいいはずなんだが。

思いつきで作った魔法とはいえ、難易度は想像以上かもしれない。

もっとも、水を人型にするだけなら簡単なんだけどな。


そんなことを考えながら、今日も意識を投影して検証を続けていると――

近くの茂みから、「ガサガサ」と音がした。

反射的に意識を引き戻し、そちらへ視線を向ける。


次の瞬間、現れたのは――緑色の肌をした小柄な化物。

ゴブリンだった。

そいつはオレの姿を捉えるなり、迷いなく飛びかかってくる。

――速い。


咄嗟に、水人形を起動。

ウォーターボールを発動させる。

水人形から放たれた水球が、ゴブリンの顔面に直撃した。

体勢が崩れ、わずかに動きが止まる。

その一瞬で十分だった。

意識投影を解除し、間髪入れずに――風魔法を展開。


「ウィンドカッター」


不可視の刃が走り、ゴブリンの首を切断した。


■ ■ ■


「……なんで、こんなところにゴブリンがいるんだ?」


思わず、そんな言葉が漏れる。

転生して三年。

モンスターと遭遇したのは、これが初めてだった。


「まぁ、魔物なんだし……どこにいてもおかしくはないか」


深く考えるのはやめた。

ゴブリンの死体から魔石を取り出し、土魔法で穴を掘る。

風魔法で部位ごとに切断し、そのまま埋めた。

処理を終えると、何事もなかったかのように実験を再開する。


やがて夕方になり、家へ戻った。

その日の出来事は、夕食の席で軽く話した。


「ってことがあったんだ」

姉と兄は、きょとんとした顔をしている。

だが――


「……は?」


父上の手が止まった。

母上の顔から、みるみる血の気が引いていく。


「ちょっと待ちなさい……どういうことなの?」


声が、わずかに震えていた。


「裏庭近くの森だけど?」


「……っ」


母上が息を呑む。

父上はゆっくりと立ち上がった。


「……ただ事じゃないな」


短くそう言うと、すぐに支度を始める。


「村長と領主様に連絡する。森の調査が必要だ」


そのまま慌ただしく家を出ていった。

残された食卓に、重い沈黙が落ちる。

――どうやら、思っていたよりも面倒なことになりそうだ。

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