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26話 200地点のお仕事どころじゃない その3

 これだこれ。黄金色に輝くなめらかな表面の濃厚プリン。上品に生クリームが添えられている。壺型の陶器がまた特別感を演出している。


 見ているだけでよだれがたれそうだ。


「レオさん、食事の前にプリン食べるんですか?」


 蓮夏はお盆を持って私の隣に座った。ふむ、彼女も良いチョイスをする。希少なウナギのひつまぶし、白いふわふわに膨らんだとろろに、ネギやわさびなどの薬味に、ほんのりと香る出汁が添えられている。それだけで100Feはするだろう。それに加えて小皿の天婦羅。東方の食事が趣味なのだろうか?


「いっただっきまーす」


 可愛い声で手を合わすと、手際よくひつまぶしを茶碗に小分けする。コヤツ、知っているな。


 むむむ。私もひつまぶしにしようか。


「プリン食べないんですか?」


「ん?あ、あぁ。ゆっくり優雅に食べるのが良いのだよ」


「そんなことより、いきなりデザートなんて変わってますね」


「だろう?レオは甘いものには目がなくてな、好きなデザートがあれば食前に一つ、食後に二つさ」


 おい、勝手に威厳に関わるような個人情報をもらすなユウナよ。


「君たちが分かってないのだよ。まだ何も食べていない空腹で、そしてこの舌で、口で、鼻で、純粋なプリン樣を味わってこそなのだよ」


 一口スプーンですくって、口へと運ぶ。


 んーーーー。これ!これよ!絶妙な甘さとほんのりと鼻を抜ける優しい香り。プリンという名にそぐわぬとろりとした舌触り。舌の上で転がすとゆったりと溶けて消えて風味が口に残る。


「おいしい」


「あはは、レオさん販売元からコマーシャル依頼もらえそうですよ」


「本当においしいんだよ、蓮夏も後で食べてみなよ」


「はい、ぜひたべます」


 ユウナは炭火焼鳥丼だろうか?香ばしい匂いにお腹が鳴りそうになる。無言で手を合わせるユウナも食べ始めた。


「蓮夏はひつまぶし食べたことあるんだな」


「あ、はい。雪先生、ってあの私の施設の先生なんですけど、東方出身で何度か振る舞ってくれたことがあるんです」


 人口が7割も失われた世界。人種や国という概念そのものが弱くなったのだときいた。住める場所も限られ復興するにも人手が必要で、互いに手を取り合ったという。


 東方に元の国は残っていない。出身者らが大陸の東側に移り住み多くの人がそこで暮らしていると聞く。ひつまぶしもその際に大陸へと渡ってきた。でも肝心のウナギがココラでは取れないため希少なのだ。


「雪先生ね、そうか蓮夏あそこの施設だったっけ」


「レオさんご存知なんですか?」


「まぁ親しいって程のものではないけどね。私とユウナも身寄りが無い人間だからさ、リデルで暮らすことになる前に少しお世話になったんだよ」


「へぇー、意外と繋がるものですね。雪先生ホントに顔広いなー」


 ひつまぶしを新たに茶碗へ取り分けて今度はとろろをかけて食べている。あぁ、うまそうだ。


 私はプリンを綺麗に食べ終わった。さて、何を食べようか。


「ご飯取ってくる」


 そう言いながら席を立った。食堂には作られた料理が並んでいて好きなものを取っていく形式になっている。サラダやご飯、おかずコーナーと分かれている。ひつまぶし何かの特殊なものは注文式だ。今日はこれから動く事になるわけだし・・・んー。悩ましい。


 お盆を持って元の席に戻った。


「おお、ビーフシチューですか?美味しそう」


 少女はキラキラと目を輝かせている。


「そう、ここのはパンと合うのだよ」


「しばらくココで過ごすことになるんですかね?次はシチュー食べたいです」


 こういうところは肝が座っているなと感じる。休息時間だとしても、もうすぐ危険な戦闘に挑もうという中でこんなふうにキラキラと笑顔を咲かせられる。レイダーといえナーバスになるのが普通だ。


「どーだろうかね」


「まあ、そうだな。1日で片付くことでは無いからな。明日もまた来れると思うぜ」


「明日もタダにしてくれないかなークヴェル」


「無料なら最高ですが、お金払っても来てみようと思いますっ」


 両手を握る仕草は当然だけど18歳の少女だ。頑張ろう、私が何としてもキミ達を死なせたりはしない。


「そういえば、ラウルさんというのはどういう方なんですか?名前は存じ上げてますけど・・・」


 落ち着いて食べ始めると疑問を投げかけてきた。


「知っての通り、リデルのナンバー2の男で年は35だったかな?調査団BrainFxxx【ブレインエフ】の団長だね。珍しく武器は持たないタイプの格闘家で、筋力強化がメイン。あの人の速度についていけるのはリデルなら薪七くらいじゃないかと言われている」


「確か、ブレインエフって2年前に当時の団長を失ったんですよね」


「そう、888の事件。数万のレイダーと何人もの団長級が失われた。アレのせいで500に構えていた駐屯地は一時破棄。ラウルはその時、単騎でヒトガタ――――エルナトを足止めさせた。その代償に彼は脳を一部失った」


「脳の一部って・・・無事なんですか?」


「失った機能を有機デバイスで補完してるって聞いたけど、本来の戦闘力からすれば下がるんだろうね。とりあえず、今から共闘できるくらいには無事らしいみたいね」


 ビーフシチューを食べ終えて、2つ目のプリンに手を伸ばす。蓮夏はプリンを取ってきた。ユウナは食べ終わってゆったりお茶をすすっている。


「澪【みお】も来るのか・・・面倒だな」


 ユウナが珍しく女の名前を出した。キーっ!


 澪はブレインエフの副団長。元々ラウルと二人で副団長を務めていた。今は新しく耶麻【やま】という男と一緒に副団長についている。


 澪はユウナの能力に近い。感覚神経系の強化能力者だからこそ、ユウナの力を怪しんでいるらしい。何度か本人から声をかけられたこともあるらしいが、誤魔化しているらしい。私にも声をかけてきたことがある。私がユウナへの接触に手を貸す訳も無いが。


「まぁ、作戦範囲が広域だからね。君が適任なら彼女も適任だよ」


「・・・」


 心底面倒くさそうに溜息を漏らす。


「澪さんはどういう方ですか?」


 これから背中を預けるのだから、蓮夏も知っておきたいのだろう。


「ブレインエフの副団長だよ。話した通りユウナに近い能力者で、銃剣を扱う。単純に強いよ、聡明だし抜け目が無い。敵にすると面倒なやつだね」


「あとは耶麻。こっちは男で同じく副団長。ユニークスキル持ちらしい。私も見たことないのだけど。情報が秘匿されてるみたいでね、調査協会から制限されているんだろうよ」


 我々の能力にはまだまだ解明されていないものもある。得体が知れないものへの恐怖もあるが、研究者にとっても喉から手が出るほど欲しい研究人体でもある。危険なのだ、ユニークというだけで。一つの命で多数の命が助けられるかも知れない、それは簡単に人の人権を奪ってしまう。


「君達か、クヴェルが言っていた協力者というのは」


 少し低く落ち着いた声。ラウルだった。澪と、そして耶麻が連れ添っている。






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