↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
change  作者: 虚虎 冬
終章
97/98

エピローグ:金色の鳥

 大陸中央部に位置するサラトゥル帝国。国の更に中央に、形ばかりの城が建っている。周りの家々よりは少しは立派、という程度。

 その城にある一室で、少し年老いた女性が、ゆっくりと絵本を朗読している。

「……そうして、世界は救われたのです。おしまい」

 彼女がパタンと本を閉じると、周りにいた子供達がわあわあと騒ぎだす。

「ねえ、じゃあおばあちゃんは冒険したの? 他の国に行ったの?」

「そうねえ」

「すっげー」

「私も、いつか、外に行ってみたいな」

 そうやって、国の外へと夢を膨らませる中、一人の男の子が聞いた。

「おばあ様。リゼリアさんと、ユウさんはどうなったのですか」

 瞬間、女性の体が固まった。彼女の異変に気付いて、周りの子供達もしいんとなる。

「リゼ――リゼリアは、今もどこかを歩いているわよ。散歩が好きなんだって」

 そうして女性は次に、しわの入った指を、部屋のある方へと指差した。そこには、蒼い綺麗な卵。

「……? おばあ様、あれは触ってはいけないリュウの卵、ですよね?」

「ええ。ひねくれ屋だから、子供に突かれると出たくなくなるそうよ。それと、あの卵は『龍』の卵」

 そっと強調して、そのさかしい男の子に教えてあげた。男の子の目はまあるく広がる。

 そのまま男の子は、ひそひそ声で女性に尋ねる。

「じゃあ、あの卵はユウさんなのですか?」

「ええ。生まれ変わりよ」

 他の子には秘密よ、と言って、女性は人差し指を口に当てた。

「ええ、言いません」

 男の子はにっこり笑って、既に騒ぎ始めた子供達に混じっていく。


――あの子は、賢いけれど、ませてると言った方がいいかもしれないわね……

 女性は椅子に座り直し、マフラーを編みながらぼんやりと考える。

 ふっと思い立ち、卵を見やる。全く生まれる気配がない。

――いつ生まれるのかしら

 自分が生きている内だと、いい。女性はそれだけ願った。

 もう一つ、願いはあるが、それはきっと叶わないだろう。先程子供に「散歩している」等と言ったが、本当はどうなのか分からないのだから。

 女性――ムーシャは、子供(まご)達にばれないよう、小さな小さなため息をついた。

 騒ぎ始めた孫達は、部屋に茶を届けに来てくれたアネルにじゃれついている。初めこそ子供の扱いに困っていたアネルだが、彼女もだんだん、穏やかな顔で子供達と接する様になってきた。

 もう、彼女が剣を握らなくなって、何年経ったろうか……。既にこの国では、争いが起きる事はない。第二の<楽園サラダ>とも呼ばれる様になった。

――良かった、けど。やっぱり、リゼとユウ君が、この場にいたら良かったのにな……。

 と、視界の隅に金の何かがよぎる。

 はっとして、窓の外を見た。

 窓枠には、小さな金色こんじきの鳥。首を傾げたりも、羽を毛繕いしたりもせず、その小さな目をこちらへと向けている。

 ムーシャは一度、部屋の中を見渡した。孫が走り回っている。先程読んだ絵本が、綺麗に本棚に納められていた。隅には、やはり動かない卵。

 もう一度窓を見ると、まだ小鳥は停まっていた。

 その小鳥に笑いかけると、小鳥は何度か首を前後に揺らし、やがて窓枠から飛び立っていった。

 そのまま、小鳥が飛んでいくのを見送る。すると、後ろの方でピシリ、と小さな音が立った。卵の殻に、少しだけ割れ目が入っている。


――リゼ、だったよね?

――ユウ君の事、起こしに来てくれたの?

――それとも、私の事を見に来てくれたのかな。

――どっちでもいいや。リゼ、元気ですか?

――私は今、幸せです――


fin.

今まで読んで下さり、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。