1:不可知塔の最後の間
大きな鳥となったアグは、リゼリアを載せて一気に塔を上がった。頂上に着いたのも、あっという間である。
「エレベーターみたいだなあ」
感心して言ったのだが、何故かアグに睨まれた。
そこにあるは、最後の扉。螺旋階段を上りきった者だけが入れる(はず)の場所。
「……飛んできたがな」
「……途中まで歩いたから、いいんじゃないかな」
リゼリアは辺りを見回して、アグに尋ねた。
「世界神が来たりとか、しないの?」
「あいつは既に、油断しきっている。成功を確信しているんだろう」
世界神には、リゼリアを助けた事はばれていないはずだ。とアグは言った。
「ふむ、自信過剰だな世界神。それだから駄目なのだよ」
「何故偉そうなんだ」
アグが疲れた様に突っ込んだ。
もう、軽口を叩くのもこれまでか。リゼリアは気を引き締めて、取っ手を引く。
扉は、躊躇無く開いた。中の景色が見えてくる。
「……何、これ」
円形に並んだ五つの柱。間では、珠が浮いていた――翠、蒼、紅、茶。珠がくるくると動く度、柱の間から洩れる光が増してくる。
アグが、珠から目を離さずに言った。
「属性のカミ……『龍』の命だ」
蒼はユウで、紅は占い師の物だろう。
「ここに、リゼリア、お前の雷神の珠を入れれば、完成する」
アグは淡々と続けた。
「世界神が、この珠自体の持つエネルギーを、第二位世界を取り込む力へと変えるだろう。だがそれは……」
リゼリアが続きを言う。
「私が止めるんだよね」
「……ああ。取り込む方ではなく、第二位世界と第一位世界を切り離すのに使う様、エネルギーの方向を変える」
アグの歯切れの悪い調子に、リゼリアは何かが引っ掛かった。
「……この珠を取り返すだけじゃ、駄目なの?」
「……もう、この珠のエネルギーは、世界神にとって後押しでしか無い。この珠があろうとなかろうと、世界融合は成功する」
――そして、世界は滅びる。
アグが求めているのは、エネルギーの方向の変換だった――この世界を延命させる為の。カミを助ける為ではない。
分かっては、いたが。
「……待って、じゃあこの『龍』は……」
「……ああ、龍達は死なせることになる」
リゼリアの顔が固まった。
この龍達は、最近まで話したり、喜んだりしていた命なのに。ユウとアウナの命もあるのに……それを使わなければ、世界が滅びるなんて。
「仕方がない犠牲だ」
そう言うアグも、苦しい表情だった。彼は冷酷ではない、だからこそこんな表情をしているんだろう。
そんなのは、聞いていない。本当に龍達は望んでいるのか、こんな事を。自分を犠牲にして、世界が助かるなんて……。
そのままぐるぐると考え続けたリゼリアは、アグの肩を引っ掴み、
「ねえ――」




