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change  作者: 虚虎 冬
白騎士編
71/98

30:リゼリア対ベイス

「レゼリアぁあああ! 待てェ!」

「リゼリアだこの筋肉(ベイス)が! ついでに止まってやるもんかよ!」

 リゼリアは、ベイスの必死の形相に驚き、ついバックステップで逃げてしまった。そうして追いかけっこをしてみると分かる、ベイスの足の遅さ。

「てっめェ! 待てっつってんだよ!」

 どすどすと、重い足音が聞こえてきそうだ。リゼリアは軽快にステップを踏みながら、ベイスから逃げる。

 彼らはだんだん、旗のある陣地に近づいてきた。


「あやや、あれ、ベイスじゃない?」

「何でアイツ、ここまで敵を寄せてくるんだ……! だから筋肉馬鹿は!」

「あやややや、これは殺すしかないね」

「ベイス殺しちゃ駄目だからあああ!」

 リゼリア達の敵の陣地では、近づいてくる二つの影を見て慌てた。ここまで近距離だと、魔法で追い返すのも難しい。しかも、ベイスが近くにいる。

 更に言えば、彼らにとっての敵――ムーシャとユウが撃ってくる魔法で手いっぱいに近いのだ。

「あややや、じゃあ私が全部(ムーシャとユウの魔法を)撃ち落とすから、あんたらが(リゼリアとベイスを)撃退してね」

「お願いだから、目的語をちゃんと入れてくれ……!」

「ベイス撃退しないからあああ!」

 彼らは、何度も口論しながら魔法を構築した。始めに唱えたのは、「あややや」と何度も言っていた、赤褐色の髪の女性。

「wsly nmu rrnshhka! ttdh ritpk, kooda in pic! kooda,kooda……!」

 幾重にも、岩の壁が聳え立った。そして、弱気な狐――妖孤、だろうか。その狐が、甲高い声で唱える。

「wsly nmu rrnshhka! jmh ritpk, meu in pic!」

 リゼリアとベイスを、水の網が一網打尽にする。最後に、男が叫んだ。

「wsly nmu rrnshhka! jmh ritpk, kooda to nak!」

 水の壁が、ザザザと音を立てながら、リゼリアとベイスに迫る。

「え、この状態で水ですか。マジで?」

「てめェら、俺がいるのに!? 後でぶち殺すぞこらァ!」

 網に捕えられている為に、避ける事も出来ず、津波の様なそれに二人は呑みこまれた。


「この……バッキャローめ」

 床に転がりながら、呆然と呟くベイス。そんなに仲間から攻撃されたのがショックだったのだろうか。リゼリアは、わざとらしく慈悲深い笑みを浮かべて、言った。

「大変だったね、筋肉(ベイス)。まあ、君は仲間に大事にされてないんだね」

「くおおおおう……」

 顔を押さえて転げまわるベイス。それを見、少し可哀想だとは思いつつ、リゼリアは無表情で氷をすっと構えた。

 リゼリアが黙ったことに気付いたらしい、ベイスが訝しげにこちらを見――驚愕の眼差し。

「そうか、てめェ、敵だったな」

「水で流されたのは、お互いドンマイ。でも、仲間じゃないし」

「……俺を殺す気だったな」

「それは違う」

 リゼリアの返答を、疑わしいとばかりに睨むベイス。しかし、それも納得の顔となる。

「ああ、てめェ、もっぱらの噂だぜ。戦い方が温いってな」

「それは、アネルにも言われた――けど、温いだけじゃないから!」

 氷を一撫で、一瞬で雷竹刀の完成だ。今度は氷の核がある。

 竹刀をヒョウとベイスに向けて、はっきりと口にした。

「殺さないで、あんたを倒す」

 他と比べ普通な感じもするベイスだが、やはり<武国>の人間。リゼリアの挑発をしっかと受け取り、口の端をぎっと上げた。

「やれるもんなら、やってみやがれ……ぜってェ無理だがな!

 wsly nmu rrnshhka! dakh ritpk, onm to kob!」

 また、剣に竜巻。大きく剣を一回転させ、ベイスはリゼリアの方へと駆け出した。


 氷という、実体のある物を核にした雷竹刀はタフだった。竜巻は雷が散り散りに飛ばし、剣と氷がぶつかり合う。

 しかしそれでも、雷竹刀の持久力はベイスも驚くほどだ。

「それ……氷だろ!? なんで壊れねェんだよ!」

「教えてやんない!」

 ベイスの問いも、笑って受け流すリゼリア。彼女の剣捌きは、やはり第二位世界の剣道のもの。真っ正面から打ち合うのではなく、剣筋を逸らす。隙を見て突く。

 疲れからか、ベイスの動きが一瞬止まった。

 すかさず、リゼリアは彼の手首に雷竹刀を打ち込む。手首のスナップを利かせて、鋭く。

「ぐっ……」

 ベイスは、腐っても騎士であった。咄嗟に剣を持ち代え、打ち込んだばかりのリゼリアの頭に振り下ろす。

「……たぶん、効き腕だったら、私は避けられなかったね。遅いよ」

 切り返された竹刀によって、ベイスの剣は弾かれる。

「チェックメイト!」

 びっとベイスを指す竹刀を見、彼は弱弱しく両手を上げた。

「……降参だ」

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