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change  作者: 虚虎 冬
白騎士編
53/98

12:アネル

 そのまま過ごすこと一時間――ムーシャも渋々ながら蛙鳥を食べた。ケルベロスは絶対に口に入れなかった――。騒がしくなってきた外の様子にびくりとしながら、リゼリアが尋ねた。

「このままいて平気? あの人達、アルがいなくなったら困るんでしょ。何か妨害しかけてくるんじゃ?」

「……多分ね。でも、今逃げようとしても無駄だと思うよ」

「何で?」

「何回か逃げようとしたことはある。けど、その度に死に物狂いで捕まえにかかってこられるし、死にそうになるしで諦めたんだ」

「まして今は、国を出る宣言を何処かの馬鹿がしてしまったと」

 アルトがひくっと肩を震わせ、リゼリアにひそひそと尋ねた。

「……ねえ、ユウ君は俺に恨みでもあるのかな」

「知らん。ユウはいっつもこうだから、気にしなくていいよ」

 そうかな、と不安げにこちらを見てくる。失敬な、いつもこんな口答えだと思われるのは心外だ。ユウはアルトに向かって肩をすくませて見せた。

 ばたり。

 そんなとき、重いドアが音を立てた。入口には若い女の兵士が立っている。

「……白騎士もとい勇者、アルト。反逆罪で国を追放する」

「アネルか。なら国の外まで案内してくれないか。……安全に」

 その固い口調は、城に初めて入った時の兵士のものだった。アネルは、追放してくれと言わんばかりのアルトの言葉に、かすかに苛立ったようだ。

「……反省の色も見せぬなら、この場で死刑にしてもいい」

 得意の得物なのか、かつての物より小振りな槍を、アルトの首に突き付ける。しかし彼は、そんな状態で笑って見せた。

「殺せるなら、どうぞ?」

「……本当にるぞ」

「それで君の『人殺しができない』弱点は、克服されるんじゃないかな。それならそれで、嬉しいね。そのままこの3人を連れて行ってくれ」

 ユウ達は、彼らの後ろで唖然としていた。先程までメッキが剥がれていたはずなのに、アネルと相対する彼の顔は、かつての「ラフマシーン」の様だ。アネルはほんの僅かな間の葛藤の後、槍をすっと腰に下ろした。

「……<武国>国法第四条……恩師は殺すべからず。その為だけに、私は貴方を殺さない」

 彼女の言葉に、リゼリアもムーシャも胸を撫で下ろした。ユウは、どうせ殺されなかっただろうなあと楽観的だったが。当の白騎士はにこにこと笑うばかり。

「それが賢明だよ」

「……やはりか」

 アネルの視線の先には、アルトが隠し持つ小型ナイフ。彼はアネルだけに向けていた殺気を発散させた。何故あのヘタレた男が、このようになるのだろうか。この国がそれ程歪んでいるということか。誰もが、戦いに身を慣らせてしまう国。

 アルトは、アネルにそのナイフを渡した。

「それ、君のお父さんの物らしいよ? 俺はいらないから、あげる」

「……感謝する」

 そんなとき、アネルの次にこの部屋を訪れたのは、大勢の騎士達。彼らは鬼の形相で部屋を散らかしながらずんずんと進み、ふてぶてしい表情でアルトを睨んだ。最後に大柄の男がゆっくりと部屋を見回しながら、果てには鼻を大きくフンと鳴らし、やおら和紙の様なものを広げた。

「王よりの勅命である!」

 ずざり、と一斉に騎士達がひれ伏した。アネルも同様。その場に立つのは、状況を理解していないユウ達と、笑顔のままの白騎士のみだ。

今度こたび、<武国>専属騎士、白騎士アルト、また、世界を正すべく呼ばれた勇者でもあるアルトは、反逆の意思があると見えた! 王に敬意を払わず、王主催の晩餐会を潰したのも反逆者アルトである。世界を正す義務のある者が、自らの国を捨て、義務を背負わないという! これは明確な反逆行為である!」

 リゼリアが頭を押さえて呟いた。

「……分っかりにく……。国語習った方がいいよ、この国」

 ついそれに吹き出しそうになり、ユウは必死に抑えた。

「本来反逆者は国の追放であるが、勇者をその刑に処しても意味はないであろう! よってここに、永続的な国への盲従を指令する!」

 ムーシャも耳を塞いで聞いていない。曰く、「聞いていたら自分の頭も悪くなる」だそうだ。ユウは二度にわたる笑いの発作を、ひたすら我慢しなくてはいけなかった。

「しかし、ここは<武国>である! 強き者が弱き者への捕縛のみ許す為、これを実行するためには反逆者アルトに勝利せねばならない。いいか、騎士達よ、日頃の成果を発揮するのだ。――反逆者アルト、及び彼を籠絡したと思われる女二名、その付き人の子供二名を、武闘大会に参加させる。これは王からの、撤回の法も無き勅命である!」

 言葉も出ない。ドライアイスよりも冷たい目線で、ユウ達は騎士を見ていた。

次回投稿10月11日

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