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change  作者: 虚虎 冬
白騎士編
52/98

11:手紙

 ノートを手にしたアルトは、それをピラピラとめくりつつ、口を開いた。

「……えーと、『まずは謝罪いたします。詳しい説明も無しに貴女方を向かわせてしまいました。あの時は私も疲れていたのです……』」


 雷神(トーラ)が何とか、道を指し示していたかもしれませんね。リゼリアさんは雷を出せるようになりましたか?

 雷神ももう辛いでしょうから、これからはこの地図の通りに行ってください。この先は砂漠です。砂漠の真ん中に建つ、灰色の塔が目的地。ここでは儀式が行われます。……ここに我が同胞はいるでしょう。すでに消されたカミ達が。

 カミには凄まじい力が潜んでいます――それは単なる「暴力」ではなく、存在そのものが、です。本当なら私達は第一位世界にいられない者なのです。第一位世界があまりに巨大で、人々の願いがあまりにも膨大であったが故に、私達はここにいられます。世界の住人が全て死ねば、私達カミも死にます――何故なら、人々の願いこそが私達の母であるからです。

 一つ、知っておいて欲しいことは、カミの力を手に入れる為に、世界神が虐殺をしたということ。管理する世界に、殺人という形で干渉することは、絶対の禁忌であるはずでした……。

 世界神はカミの力を回収すると、一つの場に全て収めました――先程述べた灰色の搭です。世界神はその力を、第二位世界を吸収する時に利用しようとしています。リゼリアさんにお願いしたいのは、この力を逆方向にするということ。世界神が描く陣を、下の様に書き換えて欲しい。ただそれだけです。

 それだけなら、誰にでもできると思うでしょう。しかし、砂漠にはカミと世界神以外入れません。世界神がそのように設定してしまったからです。リゼリアさんに頼むことは、正直罠に入っていく事と同義です。


「『……嫌かもしれませんが、お願いします。それでは』……ここまで書いて、アウラさんは消えちゃったんだ……」

 アルトが肩を落として言った言葉に、リゼリアが目を見開いた。

「え、でも……。アルはどうやってここに来たのさ。アウラさんがいないなら……」

「予約魔法、って言ってたけど……。暫くしたら、勝手にこっちに来てたんだ。何故か<武国>に来ちゃったけど」

 ムーシャが首を捻って尋ねる。

「何故か<武国>にって……。本当は何処に行く予定だったの?」

「<楽園サラダ>って所。他の国は、初めに行くには衝撃が強すぎるからって。でもまあ、<武国>に来ちゃって。……そう言えば、第一位世界来る途中で、声が聞こえたな……甲高い女の人の声」

 アルトがそう言うので、四人で女の人について考えてみたが、思いつかなかった。アウラという人でもないらしい。

 暫く黙りこんでいると、妙な音が聞こえた。

「……腹減った」

 リゼリアの腹の虫だった。

「じゃあ、食べようか」

 ユウは背中に背負っていたリュックから、ケルベロス饅頭を取り出した。リゼリアも腰のポーチから、蛙鳥を取り出す。二人共、大きな袋にもっと詰めていたのだが、先ほどの騒ぎのせいで持ってこれなかったのだ。

 ムーシャとアルトが、げんなりとした顔。

「けるべろすと、かわずちょう?」

「どっちも嫌な思い出があるなあ……」

 アルトは初めて戦ったのが蛙鳥で、その大きな鉤爪で空高く持ち上げられ、落とされたことがあったらしい。

「あれから高所恐怖症だよ……」

 真っ青な顔で呟くアルトに、ユウは尋ねた。

「クラーケンの上も、かなり高いけど」

「うん、正直、超怖かった」

 真顔で答えられて、何も言えない。リゼリアが気を取り直したように聞いた。

「ケルベロスは何かあったの?」

「…………」

 暫くアルトは黙りこみ、顔がまた真っ青になってから、「女の人コワい」と呻き始めた。

「……えーと、これは聞かない方がいいのかね」

 リゼリアとユウは顔を見合わせて頷いた。

次回投稿10月9日

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