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change  作者: 虚虎 冬
白騎士編
47/98

6:散歩

 白騎士が強調して言ったこと、そして彼のとても不機嫌な様子を見て、ようやく自分達が行ったことの意味に気付いたらしい。

「あ……これは、その……」

「違うんです、白騎士様ぁ……」

 白騎士は何やら言いわけをしかける彼らを遮って、

「目障りだ。……さっさと仕事に戻れ」

 そう言われて、委縮した彼らは小走りで逃げていく。

 その場に、白騎士とユウ達だけになったとき。

「助けてくれて感謝します、勇者様(・・・)

 ユウがそう言うと、彼の顔がぴくりと引き攣った。やはり勇者と呼ばれるのは苦手か。

「……すみませんね、こちらの者が」

「別に。ちょおっと殺されそうになっただけですから? ご多忙な勇者様こそお仕事に戻られてはどうでしょうか?」

「……気遣い感謝しますよ、ユウさん」

 苦虫を噛み潰したような顔で、白騎士は言った。


 彼は、城から出る時はこれをお持ち下さい、と言って、ユウに小さな白い石を渡す。そのまま立ち去った。

「お言葉通り、ちょっと街を見てみようか? どうせなら観光しようよ」

「……あ、うん」

 ぼうっとしていたリゼリアが、曖昧に頷く。ああ、駄目だこりゃ。

 ユウは、彼女と、同じくぼんやりしているムーシャの頬をつねった。

「いだだだ! 酷いってユウ!」

「ほれ行くぞー」

 ユウはかつての餓死しかけの少女二人を引きずったように、今の二人を引っ張って行った。

 ……それにしても、白騎士。「リゼ(・・)達」って言ってたけど、自分で気付いているだろうか。

 気付いていなくても、教えてやらない。ユウは口元に笑みを浮かべる。

「ユウの顔が邪悪なんだけど」

「え? 笑ってるのに」

 問い返すと、リゼリアは深いため息をついた。

「邪悪な笑みってことだよ」


 街は賑やかだった。……流血沙汰の方向で。

 売っている物は肉ばかり、飛び交う者は怒号ばかり。少しばかり、一人だった孤児院のころが懐かしい。

「昼、食べようか」

 ユウがそう提案すると、

「朝食べてないけどな」

「……バケモノ肉以外を所望します」

 リゼリアとムーシャの返答は酷いものだった。どうしてくれようこの空気。

「ぇーと……あ、あそこに木彫りの熊が」

 土産屋の置物を指させば、

「美味そうな鮭咥えてるなー……」

「鮭……魚こそ、正義……」

 リゼリアは身も蓋もないことを口にし。ムーシャは訳が分からない。

「あれって、コロシアム? 妙な音しか聞こえてこないね」

 黒いドームを見やれば、

「また殺し合いしてんのか……」

「懐かしき平和な時代……。はあ」

 リゼリアは冷たい目でドームを睨み、ムーシャは遠い目をしてため息。

 どうしてくれようこの空気。

「……あのさあ、白騎士のことが気になってるのはいいんだけどさ。こっちまで暗くなるから止めてくれない?」

 少しきつい口調で言ってしまった。言われた二人はぐっと喉を詰まらせるようにして、

「ごめん」

 とだけ一言。

「第二位世界とか、僕は知らないし。僕にとっては、ここは充分幸せだし」

 言葉を続けると、リゼリアとムーシャの肩がみるみる縮んでいく。

 ここまでしぼんでしまわれると、こちらが困る。

「リゼ姉とムー姉がそうしてると、寂しいから。いつもみたいに元気にしていてよ」

 その言葉を聞いて、リゼリアはほっとしたように顔を緩ませ。ムーシャは目を丸くしている。

 リゼリアはへにゃり、と笑って言う。

「ユウってときどき嬉しいこと言うよねえ」

 そう言われて、自分の言葉を思い返す。少し恥ずかしくなった。

「……もういいでしょ。早く行こうよ、あの黒いドームに」

 リゼリアがげんなりとする。

「ええー……。あそこは行きたくない」

「この国を知るために必要だよ~。ほれ行くぞ」

 また二人を引きずって歩いた。

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