5:客人
ナイフを突き出してくる男達を前にして、リゼリアとムーシャは困惑しているようだ。
「ユウ君、この人たち魔法受けて平気なものなの?」
「ねえ、本当に雷撃ってもいいの?」
相手が殺す気で襲ってきているというのに、彼女達は本当に甘い。科学都市でアリにも言われただろうに。
かといって、彼女らは「殺してもいい」と言っても、やらないだろう。だからユウは、笑って言うのだ。
「平気。絶対死なない」
その結果死んだ場合は、またどうするか考えよう。この男達は、そんなヤワではないだろうが。
「wsly nmu rrnshhka,jmh ritpk,nmu to nak!」
ムーシャが唱えると同時、リゼリアは雷を撃ち出す。
男達は、網に捕えられて動けず。そのまま雷に直撃。感電したらしく、白眼を剥いて次々に倒れた。
「うわ、これ、本当に平気?」
リゼリアが彼らの顔を覗き込んで言った。
ユウはあちこち見渡しながら、
「大丈夫、息してるし。それよりも、さっさとここを出よう……」
その矢先、またどこかからたくさんの人が走り寄ってくる。
遅かった。きっと、この人達も……。
新しく来た人達が、男達が倒れているところを見て、
「なあっ!? よくもお前ら……敵討ちだっ!」
「この方達は、<武国>を守る騎士達なのよ!? 何してくれるのよこの逆賊が!」
一般人ではなく、国の主要人物だったらしい。当たり前か、城に普通に入れる者なのだから。
「そちらから戦いを挑んできたのですが」
ユウが口を挟んでも、
「殺すまでしなくてもいいだろう!? まあいい、俺がこいつらを殺してやる!」
理不尽な。あんなに殺気を放っていたのはそちらだというのに。それに、よく見てほしい、死んでいない。
ユウはため息しかつけなかった。
「……っていうか、私達客人じゃあなかったっけ?」
リゼリアが呆然として呟いた。
「ア……白騎士さんがそう言ってたよね?」
ムーシャも頷く。
確かに、白騎士が「客人」だと主張していたのは、こうなることを避ける為だったろう。大事な勇者の「客人」なら、下手に手を出すと不味い。そう、思うはずだったが。
ユウは、心の中で白騎士に舌打ちした。この人達、そこまで頭が回ってないよ。
きっと、彼らの頭にあるのは、嫉妬だけなのだ。国最強の者が客人だと言って守るのが、力が無さそうな3人の子供。弱者に、白騎士が時間を割いているのが気に食わない。
案の定、彼らはムーシャの言葉を聞いて、叫ぶ。
「白騎士様……そうだ! お前らのせいでな、昨日は白騎士様と手合わせしてねえんだよ!」
「昨日、久しぶりに晩餐会においでなさったのに……素性も知れぬ子供を城に泊めたいだなんて! 許せないわ!」
ただの当てこすりだった。そういうことは、白騎士本人に言ってほしい。
じりじりと寄ってくる彼らを前に、ユウ達3人は後ずさるしかなかった。
何というか、この人達、怖い。
そんなときに、颯爽と現れた。
「……リゼ達に何をしているのですか」
白騎士が、低い声で囁く。その声は、小さいにも関わらず、廊下に響いた。
白騎士の姿を認めたうちの一人――女性が、慄いたように叫ぶ。
「だって……この方達は、騎士様を殺したのですよ!? 極刑です、いくら白騎士様の客人と言えど……」
「生きていますが」
白騎士の声は冷たく、また顔も同じようだった。
「変ですね、息もしているではありませんか? ナイフも持っていますね、このような状態で、この3人に殺されたとでも? むしろリゼ達を殺しにかかったのでは?」
白眼を剥いたままの男達を指し、この3人、というところでユウ達を見やり、最後に、その場に立つ者を睥睨した。
「さっさといなくなれ。この3人は客人だ」




