閑話:単純改名
トコトコ。ダクダク。ヒョコヒョコ。
三人の足がアスファルトを踏みしめる。
ここは、<科学都市>から<武国>へと向かう道。<楽園サラダ>から<科学都市>へ向かうところは、「道」が無く毒草の平原だったのだが、こちらはきちんと舗装されている。
アスファルトはあるし、たいして変な生き物は見ていないし、あまり異世界に来たという気がしない。
勿論魔法はあるが、あまりこの世界で使われないようだ。仕事の時に役立つ魔法を使うくらい。
店で売っている食べ物の原材料は、バケモノばかりなのだから、国と国の移動中に何回か見てもおかしくないのだが。
と、ムーシャが思っていると、何やら前の二人が話している。
「……いや、今更……」
リゼリアが渋っていて、
「でも、嫌だし……」
リュウが食い下がる。
「何の話?」
ムーシャが聞くと、リゼリアが困ったような顔をして振りかえった。
「それがさ、リュウが名前変えたいって」
「『リュウ』は記号だもの。嫌なんだよ」
「リュウって呼びなれたしさ……」
ムーシャはポンと浮かんだ名前を言う。
「ユウ、じゃダメ?」
「リ」を取って、「ュ」を大きくしただけだが。
リゼリアも単純さに気付いているようで、
「呼び間違えるよ……」
苦い顔だ。
しかしリュウは満更でもなさそうで……。
「ってこれでいいのかよ」
「『リュウ』でなければいいの。ムー姉、ありがとう」
たいして真剣に考えていなかったので、お礼を言われても気まずい。
「本当にいいのかなぁ、ユウで。他に無いの、リゼ?」
「本人がいいって言ってるんだからいんじゃね?」
リゼに振っても、あっさりかわされた。
そんな適当なノリで、リュウの名前はユウになりました。
本当にいいのでしょうか。
とりあえず、<武国>にたどり着く前に、呼び慣れようと思います。
―――(5月22日、ムーシャの日記より)
次回更新、9月14日




