番外02 ゴルダさんといっしょ1
2話あたりの日常話です。
コミカライズ記念に、久々の新作です。
ゴルダさんの家で寝起きするようになってすぐのこと。
図太い子供と世話焼きな大人の間で、まだ遠慮があったときの話だ。
ゴルダさんは私に家の用事をさせようとはしなかった。
「保護した子供なんだから、気を遣わずに世話されとけ!」
掃除や水汲み、食事の用意も全部ゴルダさんがしてくれる。
私は森の浅い場所で薬草採取をして、ポーションを作って売る。
そうして得たお金で、きちんとした服を買ったり、身のまわりの品々を整えた。
初期装備は最初に調えたとはいえ、着替えは必要だ。
他にも細々とした欲しいもの、必要なものはたくさんある。
ポーションは怪我を治すものと、状態異常から回復させるものがある。
いちばん簡単な怪我を治すポーションだけ、私は作り方を知っていた。
大怪我は治せないけれど、それなりに役立つ。
薬草採取をして、基本のポーションを作って売るのが今の私の日常だ。
採取に行くと、他の薬草も手に入る。
家から持ち出した本で何の薬草かを知り、ポーションの作り方の本で活用方法を調べてみた。
うむ。今の私でも、この材料で解毒薬が作れそうだ。
いつまでもひとつのポーションを作るより、挑戦すべきか。
よし、やろう!
早々に決意して、ゴルダさんの家のキッチンでひとり、解毒薬に挑戦した。
基本のポーションより、少しだけ難しい工程が入る。
少量ずつ挑戦し、何度か失敗しながらの作成だ。
そうして今、私は完成したポーション瓶を掴んだ手を振り上げて叫んだ。
「解毒薬完成!」
もう片方の手は腰に、胸を張っての主張だ。
私にとってのセレモニーは、実は意味がある。
アリスティナちゃんがとても喜んでいるのだ。
新たに解毒ポーションが作れるようになった喜び。
新たに学べる喜び。
どうやらアリスティナちゃんは知識欲が旺盛で、勤勉らしい。
解毒薬を作り始めた当初、アリスティナちゃんの心が動くのを感じた。
新しい学びにわくわくする気持ち。
失敗しての試行錯誤中も、興味深そうだった。
私にとっては単に金策の幅を広げようとしてのことだったけれど、アリスティナちゃんの心がこんなふうに動くなら、やらねばならぬ。うむ。
ようやく完成した今、アリスティナちゃんの心がキラキラ輝いている。
そして次の学びへの期待に、ソワソワしている。
おおう、これは麻痺解除薬への挑戦が決定か。
まあいい。幅は広げておいた方がいい。
よし、次の採取では解毒ポーションの材料とともに、麻痺解除薬の材料も調達しようではないか。
まるで薬師のような生活だけど、今はアリスティナちゃんの心の回復が優先だ。
失敗した解毒ポーションは捨てた。
通常のポーションは、材料が薬草なので失敗作も多少は元気になる。
でも解毒ポーションの失敗作では、何も解毒できない。
上級の解毒ポーションであれば、失敗作でも多少の効果はあるんだけどね。
ちなみに採取はいろんな種類を採取して、まだ作れない材料は保存している。
麻痺解除薬の材料は少し特殊なものがあるので、次は水辺で採取かな。
家から持ち出した本は、薬草の絵と特性などの説明以外に、生えている場所も書かれていた。
麻痺解除薬の材料のひとつは水辺に生えている。
ポーションは1度成功しても、続けて作らないと作成スキルは定着しない。
そのため解毒薬も作りつつ、麻痺解除薬に挑戦するのだ。
「帰ったぞー」
解毒薬をもう一度成功させたところで、玄関からゴルダさんの声がした。
「おお、ここにいたか。今から飯を作ってやるからな」
帰ってすぐ上着を脱いだだけで、食事の支度を始めようとする。
仕事帰りで疲れているだろうに、買い物をして家に帰り、そのまま料理。
私にも少しは任せてくれてもいいのにと、このところ考えている。
「お仕事は大丈夫なんですか?」
「子供がそんな心配すんな。あー、いや、実は明日が少し遅くなるんだがな。食堂に頼んでおくから、そこで夕食は食って来い」
以前ゴルダさんが連れて行ってくれた食堂のことだろう。
今日は作るのが面倒だからと、二人で食堂へ行くことがある。
安くて美味しいのだと言われ、実際にとても美味しかった。
「出来れば夕方早い時間に食いに行ってくれ。夜は冒険者たちが酒を飲むから、遅い時間に子供ひとりで行かせるわけにはいかん」
そんな気遣いまでされる。
「昼過ぎには開店しているんだ。採取帰りに寄ればいい。金はあとで払うと言ってある」
拾った面倒な子供に対して、ゴルダさんは頑張って保護者をしてくれている。
申し訳なさと、くすぐったさを感じる。
「ゴルダさんの晩ご飯は?」
「オレは大人だから、どうとでもするさ」
そう言われ、私は少し眉根を寄せた。
料理を作り始めたゴルダさんはこちらを見ていない。
私がいる分、家事の手間が増えたようだ。
たぶん自分だけなら手抜きをする家事を、懸命にしてくれている。
お休みの日の丁寧なお掃除、お洗濯、布団干し。
一緒にお買い物に行き、お休みならではの手の込んだ食事を作ってくれる。
自分の時間はとれていないはずだ。
ゴルダさんに変な下心は感じられない。
単に危なっかしい子供が来て放っておけない、そんな感じだ。
精神的には大人だった私には、ゴルダさんが無理をしていないか心配になる。
少しは頼ってくれていいのにと思ってしまう。
うん。これは勝手に動くべきか。
ゴルダさんのご飯ももらって帰ろう。
あの言い方だと、食べずに帰ってきそうな気がする。
食べないなら食べないで、私の空間魔法で保管すればいい。
うん、そうしよう。
翌日の採取の帰り、お昼過ぎに食堂へ寄ると、少し驚かれた。
「ゴルダからは夕方に食べに来ると聞いたんだが」
「今食べちゃうと、夜にお腹空かない? 夜にも来るの?」
ご夫婦そろって心配そうな顔になる。
「あの、持ち帰りは出来ますか? 二人分!」
私の言葉に、食堂のご夫婦は顔を見合わせて。
なるほどとゆっくり微笑んだ。
「わかった。ちょっと待ってくれ。あ、スープはどうするか」
「お鍋は持っています」
私はポーション作成のお鍋を取り出す。
いつもはポーションを作っているけれど、綺麗に洗ってある。
食べ物を入れても問題ないだろう。
食堂のご夫婦は鍋にスープを入れ、おかずは大きな葉に包んでくれた。
「この葉で包むと、食べ物が腐りにくいんだ。市で売る肉なんかもこれで包まれているだろう」
私がじっと葉っぱを見ていると、食堂のおじさんが教えてくれた。
ゴルダさんが買ってくる食材が包まれているのは見ていた。
単なる包装材料かと思っていたけど、なるほど防腐作用のある葉か。
色々と使えそうな情報だ。
これはいずれ、お弁当も包んでオッケーかな。
お昼は買った保存食を食べるけど、いまいちマズイんだよね。
そのうち自分でビスケットとか焼きたいと思っていたんだ。
うん。これでお弁当を作った方が絶対にいい!
葉だけでも市で売っていると聞いたので、今度買いに行こうと思う。
お鍋の蓋の上におかずの包みとパンを乗せ、ご夫婦に見送られて店を出た。
すぐに道を曲がり、人目がないのを確認して空間収納。
家に帰ると、スープは自分の鍋から家の鍋に移す。
自分の鍋は洗って、本日のポーション作りだ。
午前中に水辺で採取した薬草を使い、麻痺解除薬に挑戦だ。
残念ながら失敗続きでめげそうになりながら、なんとか一回成功。
アリスティナちゃんは失敗すると、むしろ意欲的になるので、それに救われた。
私一人だったら「今日はヤメ!」と言って途中で放り出していたところだ。
暗くなってきたところで、先に夕食をひとり分食べた。
久しぶりのひとりの食事は、少し味気ない。
食堂のご夫婦の、美味しい食事なのに。
本当はゴルダさんを待ちたかった。
でも子供が待っていて寝るのが遅くなると、ゴルダさんは気にするだろう。
ここは我慢だ。
寝る準備を始める前に、テーブルに料理を置く。
もしかすると食べてきているかも知れないけれど、そのときはそのときだ。
部屋に戻り、さて寝ようかとしたところでゴルダさんが帰ってきた。
「おかえりなさい、ゴルダさん!」
「ただいま。お、なんだコレ」
ゴルダさんはすぐに料理に気づき、私を見る。
「食堂から持ち帰りました。私は食べたから、これはゴルダさんのです」
「持って帰るの大変だったんじゃないか?」
「お鍋も持っていたから大丈夫!」
ゴルダさんは私を侮りすぎだと思う。
図太い子供だと呆れるくせに、子供として世話を焼こうとする。
「ちょっと大きくなった子供はね、お使いを頼まれるのは大好きなの!」
そう主張するとゴルダさんはきょとんとした顔になり。
肩を震わせると、大きな声で笑った。
続きは夜か明日、投稿予定です。
コミカライズ連載開始のリンクを作品下に貼りました。
素敵な漫画にしてくださってます。
よろしければお付き合いくださいませ!




